影の市長、市議会のドンは窮地?次期市長選、荒井優(立憲民主衆院議員)擁立への〝蠢動〟

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荒井優氏

 3期目も残り1年あまりの札幌市長・秋元克広氏は、賛否ある課題の解決へ意欲的に取り組んでいる。そのことが3期勇退説につながっており、後継には立憲民主党衆院議員の荒井優氏が挙がっているという。水面下の声を集めた。

秋元氏のパーティーに荒井氏が来場

 11月21日、札幌市長・秋元克広氏の連合後援会「さっぽろの未来をつなぐ市民の会」が政治資金パーティーを開催した。

 冒頭、後援会共同代表の横山清氏(アークス会長)が主催者を代表して登壇。「あっという間に10回目のセミナー。世界に通じる札幌市と秋元氏に対する期待は非常に高い。もう1期やっていいんじゃないかなと私は思っています」と挨拶した。

 昨年も4選への期待を口にしていた横山氏。だが秋元氏に近い経済人は「横山さん一流の〝リップサービス〟だろう」と話す。

 2023年市長選で危なげなく3選を果たした秋元氏はその後、市の人口減少が本格化したことを機に、長らくの市政課題へ着手。敬老パスの見直しでは利用額上限の引き下げと自己負担率の引き上げを断行、除雪政策では排雪制度の見直しを議論の俎上にのせた。

 賛否両論が起こる政策の見直しは支持率の低下を招き、4選を目指すなら選挙に響く。地元紙が今春に行った調査では、不支持率が過去最悪の50%に上昇したという。

 前出の経済人は「(横山さんも後援会も)本人にやる気があるなら最後まで支えると言うだろう。ただ4選を〝無理強い〟するようなものでもない」とする。

 さて、この日のパーティーに参加した700人(主催者発表)の中に姿を見せていたのが、立憲民主党衆院議員・荒井優氏だ。

 市議会の立憲会派は筆頭与党であり、荒井氏がその場にいること自体は、何ら不思議なことではない。

 ただ荒井氏には、かねて27年4月の次期市長選挙出馬を期待する声が挙がっている。臨時国会の会期中で多忙な中、荒井氏のほかに出席する国会議員がいなかったことも手伝い、その存在は〝際立って〟見えた。

 秋元氏後援会関係者の話。

「現時点で、秋元さんが荒井さんに直接的な話をしたわけではないだろう。ただ、秋元さんを支える関係者内で、荒井さんに対する評価が高いことは事実だ」

 荒井氏は1975年札幌市生まれ。中学時代から横浜市で育ち、一浪を経て早稲田大学政治経済学部入学。卒業後の99年にリクルートへ入社。その後、留学やベンチャー企業での勤務を経て、08年にソフトバンクへ入社。社長室へ配属され、11年の東日本大震災発生後は震災復興支援財団の専務理事を兼務した。

 16年に、父で立憲元衆院議員の聰氏が理事長を務める学校法人「慈恵学園」が運営する札幌新陽高校の校長に就任。19年には佐賀県の学校法人理事長も務めるなど教育現場で汗をかいた後、21年衆院選で父の後継として北海道3区に立憲公認で出馬。このときは自民党の高木宏壽氏に惜敗したが、比例で復活当選を果たした。昨年10月の衆院選では高木氏にリベンジを果たし、現在2期目。

「現職国会議員唯一の校長経験者」として教育行政に明るい一方、大手企業での勤務経験から道内外の経営者との深い交流関係があり、立憲の議員としては異色の人脈を持つ。

 永田町では超党派の「ライドシェア勉強会」事務局長として会長の小泉進次郎氏とタッグを組み、法整備を提言。自ら愛好するサウナの超党派議員連盟でも事務局長を務める。保守・リベラル、政党間の垣根にとらわれない政治活動に取り組んでいる。

 荒井氏本人は「12月3日に連合北海道から次期衆院選の推薦をいただいたところ。年内か年明け早々に解散総選挙があるのではと言われており、選挙といえば、衆院選の想定をしているところです」として、市長選には言及していない。

 他方、市内の有力経済人は「具体的な動きはまだない」と前置きした上で、こう語る。

「秋元市長は経済政策重視の姿勢を貫いている。再開発事業など進めるべきことを進めており評価している。もし市長が勇退するなら、次の市長もこの路線を継承してくれる市長が望ましいが、その可能性が高い保守系候補の顔は見えない。昨年の衆院選は札幌市が含まれる5つの小選挙区で、自民衆院議員が全敗した。自民色の濃い候補が単独で出馬して勝てる見込みは薄い。一方の荒井氏は父親の代から保守系支持層が多いことで知られているし、自身と同年代の若手経済人とも懇意だ。現状を見渡すなら、荒井氏を市長に、という声が出るのは当然だ」

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秋元克広市長

荒井氏には相乗りできない三上氏

 12年前の2013年末、自民札幌市支部連合会(札連)は、15年4月の市長選に向けた対応で揺れていた。11年市長選で上田氏に敗れた元総務省官僚の本間奈々氏を再び擁立するか、しないのか、である。

 この当時、経済界首脳が本間氏ではなく別の候補擁立を画策。その本命が、誰あろう副市長を務めていた秋元氏であった。

 札連会長の橋本聖子氏ら執行部もその案に乗り気だったが、最終的に本間氏擁立を主導した町村信孝氏が豪腕をふるい、自民は単独で本間氏を擁立した。

 翌年から、上田氏の後継として秋元氏擁立の準備が進められ、8月末に上田氏が勇退を表明。翌週に秋元氏が副市長を辞任し出馬表明へと進んだ。冒頭の横山氏ら秋元氏の連合後援会には有力者が顔を並べ、経済界は分裂選挙に。その後の市長選は周知の通り、秋元氏が完勝した。

 現在と状況が異なる点は2つ。上田氏は自身に近い関係者へ、3期12年での勇退を事前に伝えていたこと。

 もう1つは秋元氏の2期目の選挙から、立憲に加え自民・公明が推薦を出す相乗り体制になったことだ。

 札連は昨年、前出の高木氏が落選して会長を退任。9期を重ねる重鎮市議・三上洋右氏が後任を受けた。

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長谷川岳氏
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三上洋右氏

 三上氏は市議会自民会派の最大派閥「大功会」領袖として〝市議会のドン〟の異名を取る。市政への関与を深める〝影の市長〟こと参院議員・長谷川岳氏とのパイプも力の源泉だ。

「秋元氏への相乗り体制は、市議会を仕切る三上氏にとっても、自身の実績につながる長谷川氏にとっても都合がいい。実際、三上氏は秋元氏に4選を促していた。しかし、三上氏や長谷川氏の話を聞いて秋元氏が進退を決めることにはならない」(秋元氏の後援会関係者)

 相乗りだと都合がいいもう1つの理由はカネだ。札連は自民党本部と直結した組織ではなく、党本部からの交付金がない。必要経費で最低3000万円とも言われる市長選に自前で候補を擁立するなら、カネの手当が必要となる。

 地元政界関係者は「過去の市長選では、自民候補のために巨額を拠出した経済人もいた。それでも上田さんには勝てなかったし秋元さんにも一度負けた。でも相乗り、それも労働組合が支援する候補に〝抱きつく〟なら、選挙の実務は労組が行い、実利を得られる」とタネ明かしをする。

 だが荒井氏に限って言えば、三上氏が〝抱きつく〟のは難しい。高木氏の選対幹事長として、荒井父子と真っ向戦ってきたのが三上氏その人だからだ。

 三上氏は「少なくともわれわれと経済界が一体でなければ勝てない。これは12月頭の札連の会合でもそう話しました」とだけ語る。

 ただ札連が三上氏のもとで一枚岩、というわけでもない。ある自民市議の話。

「首長の交代に最初から及び腰では、市議選や道議選などの地方選にはマイナスだ。国政でも首長でも、選挙で手足を動かすのは地方組織と地方議員。地方支部の役員からは主戦論が起こりつつある。トップが初めから勝てないと諦めるのは敵前逃亡だ」

 自民系候補として、前市議会議長で西区選出5期の飯島弘之氏、札連幹事長で北区選出4期の伴良隆氏の名前が挙がる。また40代の地元出身経済人が出馬に意欲を示しているほか、若手経済人の集う団体が首長選挙への候補擁立を検討しているとの話も伝わっている。

 年が明ければ秋元氏の任期は残り1年あまり。次代のリーダーを選ぶ水面下の蠢きを、今後も詳報していく。

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