<配信限定・現地ルポ>スチャダラパー&STUTSらが花添えた、野外音楽フェス「しゃけ音楽会2025」のラストダンス

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 愛知県の「森、道、市場」、福岡県の「CIRCLE」、静岡県の「頂―ITADAKI―」(昨年で終了)……くつろぎながらゆったりとした音楽を楽しめる野外フェスは全国各地で開催されている。
 北海道にもそんなフェスがあったらいいのに――そう思う音楽ファンのニーズに応えてくれたのが「しゃけ音楽会」(主催・OTO TO TABIではないだろうか。

 このイベントは“ただの音楽好き”が集まって運営している。2011年に前身となる「OTO TO TABI」をスタート。コロナ禍による休止を経て、22年から現名称・体制で再始動。
 道内では、「RISING SUN ROCK FESTIVAL」や「JOIN ALIVE」といったロックフェスが有名だが、「しゃけ音楽会」はリラックスできるような〝チルミュージック〟がメインとなる。規模感も異なるため、大型フェスとは違う楽しみ方ができる。
 今年は6月21日に開催。当ニュースサイトでも
ライジングサン、ジョインアライブに続け・赤字でも踏ん張る“独立系フェス”の光と影】でも報じた通り、今回が最後の開催になった。記者は会場の「札幌芸術の森・野外ステージ」に足を運んだ。
 以下、当日の現地ルポをお届けする。

フェス飯に思わずゆるんでしまった財布のヒモ

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 現地には多くの来場者が車で向かっていたのだが、まず感じたことがある。駐車券の安さだ。一概には比較できないが、ほかのフェスだと会場最寄りの区画を取る場合、5000円~8000円あたりが相場だ。それに対し、「しゃけ音楽会」は、芸術の森の駐車場を利用するための500円のみで、お財布に優しい。

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 駐車した後、入り口ゲートへ向かう。すると、その前には「鮭の市」と題した、雑貨や古着などの物販ブースが設置されていた。まるで市場を散策しているような気分だ。

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一通り、眺めてから入場すると、野外ステージまでの道のりにはかわいいシャケたちが〝泳いでいる〟。北翔大学の芸術学科彫刻ゼミが制作しているというが、子どもたちはそれを見てうれしそうにしていたのが印象的だった。

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 その道を抜けた先に野外ステージと芝生が広がっている。開演時間の11時30分まで時間に余裕があったので、まずは腹ごしらえ。

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 ステージ後方に出店がずらり。私は「しゃけ節うどん」や台湾料理「胡椒餅」、「唐揚げ」を購入。自然に囲まれて食べるフェス飯はうまい。思わず財布のひもがゆるみ、その後、スパイスカレーも注文してしまったのが不覚だった。

主宰者が今年の開催を決めた理由

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 カレーを食べている合間に、トップバッター・蓮沼執太&ユザーンの演奏がスタート。キーボードを弾く蓮沼とタブラ奏者のユザーンによるユニットだ。自然があふれる環境でごはんを食べながら音楽を聞く、なんて贅沢な時間だろうか。これがフェスの醍醐味でもあると感じた。
個人的に特に楽しみだったのは、次に出演したソウルバンド・思い出野郎Aチーム。所属レーベル「カクバリズム」のファンでもある、私は札幌で見ることができる機会を心待ちにしていた。「夜」をテーマにした曲が多いバンドだが、それを真っ昼間から聞くのも心地のいい〝違和感〟だった。

 その後は、SNSで話題となり、今年のフジロックにも出演が決まった札幌の女子大生音楽ユニット・LAUSBUB、音楽家の北里彰久、ラッパー・KMCがパフォーマンス。世間的な知名度はまだ低いかもしれないが、音楽ファンの中では名の知れたメンツだ。
 トリを務めたのは、スチャダラパー&STUTS。日本語ラップ界のレジェンド・スチャダラパーとMPCプレイヤーとして初の武道館公演を成功させた売れっ子トラックメイカー・STUTSによるユニットだ。

 本来であれば「しゃけ音楽会」は経営的な問題もあり、昨年で終わるはずだった。しかし、主宰者・川畑拓也氏が「ヘッドライナーとして、(彼らを)呼ぶことができれば、今年もう1回だけ頑張ろうと思った」と熱望していたアーティストでもある。
登場早々、スチャダラパーのメンバー・Boseもそのエピソードに触れ、主催者側への感謝の言葉を述べた。その後は、STUTSのソロ曲やスチャダラパーの代表曲「サマージャム’95」、「今夜はブギー・バック」などを披露。観客は踊り跳ね、一番の盛り上がりを見せた。

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 この日を振り返ると、多くのアーティストたちが口をそろえて、こう発言していた。
「来年も開催してほしい!」
「今後も何かしらの形でイベントを開催していくでしょう!」
 それに対し、観客たちも大きな拍手で賛同していた。運営側はイベント収支と向き合わなければいけない現実もあるが、川畑氏は前回の記事で今後のイベント展開について「模索中です」と話していた。来年以降に〝カムバックサーモン〟してくれることをあの場にいた人たちは願っているだろう。

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