【不定期コラム・編集長のつぶやき】第7回・退職金課税という仕打ち

コラムを始める時、あまり批判的な内容は避けようと思っていました。でも、今回はご容赦ください。昨日の参院予算委員会で、石破茂総理は退職金の課税見直しに言及しました。あわせて、猶予期間として10年から15年必要とのこと。つまり、私を含めた40代、50代がターゲットになります。いわゆる「就職氷河期世代」です。
学生時代の2000年代前半、就職活動は地獄でした。20、30社落ちるのは当たり前。いまは数百人規模で採用している道内の大手銀行も、採用数は10人前後だったと記憶しています。昨今の売り手市場のように、学生側が選んであげるような雰囲気はゼロ。いまではあり得ませんが、圧迫面接も横行していました。正社員採用ではなく、卒業後しても契約や派遣として働く友人も多くいました。
私も就活をしていましたが、なかなかうまくいかず、公務員試験も受けました。こちらもいまと異なり高倍率で狭き門です。結局、公務員浪人しましたが、2年目もすべて落ちました。何でもいいから働かないと生きていけない。23歳の冬です。
たまたま就職情報誌で見つけた弊社の記者職採用試験を受け、拾ってもらいました。仕事柄、よく入社の動機を聞かれますが、「働きたい」の一言です。マスコミ志望や高貴なジャーナリズム精神などみじんもありませんでした。どこでもよかったというのが偽ざる気持ちです。
私だけではないと思いますが、運良く採用されたら、企業にしがみつくしかありません。理由は一つ。辞めたら次がないからです。多少の理不尽なことにも耐え、ここまで勤め上げてきた同世代は多いはずです。そうした背景から、就職氷河期世代の耐性能力はどの世代よりもあるのかなと感じています。
今回の退職金課税の見直しは、そうした努力を踏み躙る改悪です。おそらく政府の魂胆はこうです。どの企業も上と下の世代の〝つなぎ役〟であるわれわれの世代の社員が足りません。私からすれば自業自得、身から出たさびです。採用しなかったわけですから。退職金課税を示すことで、早期退職を促し、そうした企業に転職してもらう。要は就職氷河期世代の労働の流動性を高めたいわけです。若い世代は黙っていても、簡単に会社を辞めますから、、
なぜこうした政策になるのか。すべて投票率と相関性があります。政治家は選挙の一票のためなら何でもします。年齢が上がれば上がるほど投票率は高い。その世代が優遇される政策を多く打ち出すのは自明の理です。
昨今の世論調査をみると、30代、40代の政党支持率で国民民主党が自民党を上回っています。自民党支持層の主力は高齢者という結果です。しかし、いくら若年層で自民党支持率が下がったところで、その世代は投票に行く絶対数が少ないので、痛くもかゆくありません。高齢者からの反発が一番恐ろしいのです。こうした政府の無慈悲な仕打ちを食い止めるには、投票に行くことが大切なのです。30代、40代の投票率がアップすれば、日本の政治、政策が大きく変わるチャンスとも言えます。