【独自・無料公開】「やりすぎ」が復活?名古屋市内視察後の懇親会取材をめぐり、長谷川岳がHBCに“猛抗議”【追記あり】
「“HG”がHBCと揉めているようだ」――本誌記者の耳にそんな話が漏れ聞こえてきたのは、12月半ばのこと。HGとは、北海道選挙区選出の自民党参院議員・長谷川岳氏を指す隠語である。その長谷川氏がなにゆえ、TBS系列の道内テレビ局・HBC北海道放送と揉めているのか。道内の関係者に探りを入れるとすぐにアタリがあった。
12月13日、長谷川氏を筆頭に総務省や経済産業省、道や札幌市の幹部級、札幌証券取引所、道経済連合会など経済団体首脳や民間企業の関係者約30人が、名古屋市にある起業家の支援施設「ステーションAi(エーアイ)」を視察した。
本誌が入手した資料によれば、同日の午後4時に施設内の見学、午後5時半から8時まで同市内の和食店で意見交換会と懇親会を開催。その会場に、HBCがテレビカメラを携えて取材に訪れたのだという。この取材に対して長谷川氏が後日、HBCに取材姿勢や手法について抗議したというのだ。
参加者のひとりは、懇親会についてこう話す。
「懇親会に参加したのは20人くらい。用意されていたバスに乗り合わせて、会場の店へ移動すると店の入り口そばに、確かにテレビカメラが来ていました。こちらにもカメラが向けられたけど、記者に呼び止められて取材を受けるとか、そういうことはありませんでした。懇親会は伊勢エビやひつまぶしなど、地元の名物を含む豪華な料理が出されて、楽しい時間でした。それが終わった後、帰る時にはカメラはいませんでしたね。ああ、食事はもちろん会費制ですよ」
聞く限りは懇親会についても、またHBCの取材についても、どちらも特段の問題はなさそうに思える。なぜ長谷川氏が抗議を行ったのかについては、後述の通り氏の回答を待つこととして、HBCはなぜ懇親会の取材のためだけに、わざわざ名古屋までカメラを出したのか。
その背景の一端が、視察前日の12日に開かれた鈴木直道知事の記者会見に現れていた。会見に出席した全国紙記者が、視察の行程表や参加者リストを手に、知事へかみついたのだ(会見全文は道Webサイトへ)。
道からは副知事の三橋剛氏を筆頭に、総合政策部次世代社会戦略監の大矢邦博氏、経済部スタートアップ推進室長の安彦史朗氏など5人が視察に参加。この記者は、2023年度の道幹部の出張について、長谷川氏関連が相当数に上ったことを念頭に(当サイト参考記事)、三橋氏らが今回の視察に参加したことについて、鈴木知事の認識を質した。
だが鈴木知事は、視察前日の夕方というこの会見のタイミングでも出張を「把握していない」と説明。この記者は道の広報担当者を通じ、事前に視察についての質問を通告していたとして「(三橋氏ら5人が)翌日に出張する上で、航空券や宿泊先の予約をしているはずなのになぜ把握していないのか」などと食い下がったものの、鈴木知事は回答しなかった。
会見に出ていた別の記者は「不都合な質問に対して知事がゼロ回答なのは今に始まったことではない。知事は長谷川氏が炎上して以降、記者会見で氏への対応を問われた際、出張自体は適正であると確認したと説明する一方、出張時に職員が受けた威圧的な言動など、把握できていなかったこともあることを認め、情報を共有すると発言していた。そこから半年あまり、年度も変わらぬうちにもう、情報共有できていなかったことをさらけ出した」と切って捨てる。
その上で「長谷川氏も4月下旬に『初心に帰り、信頼回復に努める』として謝罪した上で、自治体関係者を始め関係先には『しばらく喪に服す』として、総裁選や衆院選ではほとんど表に出てこなかった。今回の視察は長谷川氏の炎上後それなりの時間が経過した上に、各局が今年の出来事を振り返る年末特番の時期。今年の十大ニュースには当然入るであろう大炎上ぶりだったことは疑いないわけで、HBCもその1社なのだろう。だからこそ、名古屋で取材を行ったのではないか」と推測する。
視察と長谷川氏によるHBCへの抗議から少し経った12月23日、長谷川氏とHBCの報道幹部が面会した、との情報が流れてきた。
「映画にもなった道警のヤジ排除問題など、骨太の報道に定評のあるHBCが、まさか抗議に屈することはないだろう。23日も恐らくは『抗議に対する抗議』といった意味合いで面会したのでは」(道政担当記者)
その件を含め、本サイトは12月24日午前、本稿を掲載するとともに、長谷川氏とHBCそれぞれに質問を送付した。回答についてはそれぞれ届き次第追記する。
なお本誌月刊財界さっぽろと当サイトでは、長谷川氏による自治体職員への行きすぎた指示、出張強要を始めとする「やりすぎ事案」について子細に報じてきた(2024年5月「炎上!長谷川岳研究」/過去記事をまとめた「長谷川岳〝やりすぎ事案〟ヒストリー」)。こちらもどうぞご覧ください。
※2024/12/24 12:30追記
長谷川氏から以下の通りコメントがあった。
「今回の視察の前段として、HBCさんから私に取材の依頼がありました。ただ、国会会期中はさまざまな公務があり、難しいと事前にお断りしていたものです。これはHBCさんだけではなく、ほかの報道全社にそうお伝えしていました。そうしたら、名古屋視察後の懇親会会場にいきなり、カメラを構えて来られていた。視察団にはスタートアップAiの方を始め、民間企業の方も来られていた。私だけならまだしも、懇親会の参加者一人ひとりをカメラで撮影しておられたのです。(数々の炎上があって以降)ハラスメントについては私も深く勉強していますから、その行為は『メディアハラスメントではないか』と私は感じました。それで翌週、HBCさんにはその旨をお伝えしました」
※2024/12/28 10:45追記
HBCから回答があった。本誌の質問に対する回答を要約すると以下の通り。
「視察の懇親会会場前で取材を行ったことは事実だが、現場で長谷川氏に(取材を)とがめられた認識はない。(後日、長谷川氏から抗議を受けたことや、その後報道幹部が長谷川氏と面会したことについて)取材過程および内容の詳細につきましては、控えさせていただきます。(HBCが掲げる)『コンプライアンス憲章』の通り、私たちは言論、表現の自由を守り、国民の知る権利に応えるために、事実を客観的かつ正確、公平に報道することを基本理念として、法令順守のもと取材活動を行っております」