【全4話】札幌市がひそかに温める、札幌ドーム生き残りウルトラシナリオ④「新アクセスサッポロ・新月寒体育館との“一体化”」

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 ファイターズが去った後の札幌ドームは悲惨というしかない。周辺では新アクセスサッポロと新月寒体育館の整備計画があるが、それぞれ課題を抱える。これら施設を巻き込んだ札幌ドーム生き残りの極秘シナリオがあるという。――全4話中の第4話。

民間のドーム活用策が第一段階か

 札幌ドームと新アクセスサッポロの運営一体化の大風呂敷は、一部関係者の間でくすぶる。しかも、それは新月寒体育館を加えた3施設によるものだ。
 しかし、繰り返しになるが、施設目的、運営組織などの違いを踏まえると、物理的なハードルは高い。新月寒体育館、新アクセスサッポロは異なる時間軸で整備が進められているため、そこも障壁になる。
 では、運営はそれぞれの施設で独立させて、別の組織体をつくり、統括するという仕組みはどうか。例えば、3施設を統括する特別目的会社(SPC)を設立することも選択肢の1つとして考えられる。
 外部にもそういうビジョンを描く団体があるとの話が流れる。その団体というのが某まちづくり会社だ。
 そのまちづくり会社は「札幌ドームや周辺エリアの活性化について、さまざまなアイデアはありますが、具体的なことがない状況ですので、そうした(3施設を統括する組織体をつくるという)ビジョンがあるとすれば、その時に検討をしていきたいと考えています」とビジョン自体は否定する。「まちづくり会社は特定のスポーツチームを中心としたアイデアを練っていると聞く。しかし、それでは公共性を担保することができない。そのため、市が主導権を握り、コンサ、レバンガなど、幅広いスポーツチームを巻き込めば、3施設の一体化は可能かもしれない。こうしたビジョンは当然、石川副市長の頭の片隅にあるだろう」(市役所関係者)

 これに対し、市の担当者は「3施設の一体化の可能性について、今のところありません」と否定する。
 具体的な構想は進んでいないが、「新たに設立させる新組織のトップに石川副市長が就く」(前出関係者)という話がまことしやかにささやかれる。
「札幌ドームの活性化策を練る責任者が陣頭指揮を執るということなら、まだ理解できるが、五輪開催は実現せず、またファイターズが札幌ドームを去った責任の一端は石川副市長にある。その人物がトップに就くというのはおかしくないか」(市に精通するイベント業界幹部)という声もなくはない。
 一方で、新アクセスサッポロ、新月寒体育館にメドがつけば、「札幌ドームを含めた3施設は近い場所にあるため、そもそも別々に運営する必要があるのか、経営を効率的に進めることはできないのか」(市役所関係者)といった声が上がってもおかしくはない。
「そのときのウルトラCとして、統括する新組織をつくるという案が浮上してくることは考えられる。今なら、赤字の札幌ドームを救うために、2施設を利用するのかという批判が高まるかもしれない。そのため、市幹部がひそかに温めているシナリオだろう。課題も多いので、そのシナリオに向けて進んでいくかは不透明だが、市としては急にかじを切るわけにはいかず、段階を踏まなくてはならない。その第一段階が、札幌ドームの活性策で民間の力に頼るということなのかもしれない」(前出市役所関係者)

 石川副市長に3施設の一体化、札幌ドームの民間連携などについて取材を申し込んだところ、秘書を通じて「年度末、年度初めのため取材時間を確保することが難しい。今、話せることはないので、(民間連携については)札幌ドームに尋ねてください」と回答。
 札幌ドームの担当者は「施設の一体化については把握していないので、質問を頂戴してもお答えできません。(札幌ドームの民間連携の可能性については)質問の意図にかかわらず、今後の在り方について、さまざまな方から、いろいろご意見を頂戴していくことになろうと思いますが、今の段階でお話しできることはありません」としている。

本稿は4部作となっています。ほかの記事もどうぞご覧ください。

第①話:札幌市がひそかに温める、札幌ドーム生き残りのウルトラシナリオ
第②話:アリーナ問題でレバンガが大人な対応
第③話:ドーム〝至上主義〟の石川敏也・札幌市副市長

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