【インタビュー】3eee社長 田中 紀雄
3eee社長 田中 紀雄 氏
「Dr.ZNOO(ドクターズノー)」で離職阻止。人材難を乗り越える
介護・障がい福祉事業を展開する「3eee」(本社・札幌市)が開発した「Dr.ZNOO」が、店舗管理の生産性を向上するツールとして注目を集めている。人材育成・教育にも応用でき、離職防止にも有効なこの独自システムの強みを語ってもらった。
人間関係での離職を防止 人材教育はシステムが担う
――「Dr.ZNOO(ズノー)」の特徴は。
田中 : 介護・障がい福祉事業を多数FC展開する中で、FC本部が蓄積した成功事例や運営ノウハウを加盟会員と共有するクラウドシステムとして考案したのが、ナレッジ共有プラットホーム「Dr.ZNOO」です。
加盟会員からの問い合わせに24時間対応するAI自動対応システムを搭載し、業務上必要なさまざまな情報をいつでも得ることができます。昨年開発したシステムですが、現状でAI対応の回答到達率が90%以上です。今後さらにデータを蓄積して改良を加えることで、100%に近づいていきます。
――開発の経緯は。
田中 : 当社は、今年3月に一般社団法人「日本デイサービス協会」が選ぶ「2023年デイサービス5選」に選出されたほか、デイサービス利用者の介護度の維持・改善率を示す指標となる「事業所評価加算」の適合事業所数は10年連続で道内1位を達成するなど、おかげさまで業界内において高い評価をいただいております。その中で、これまで蓄積してきた成功事例を加盟会員に共有し、グループでサービスの底上げを図ることがFC本部として重要です。
これまでは当社のスーパーバイザーが全国の事業所を訪れ、運営管理や教育・指導を行ってきましたが、属人的な指導に陥りがちで、情報共有の〝ムラ〟やタイムラグも生じていました。そこでスーパーバイザーの役割を担う機能を備えた「Dr.ZNOO」の開発にたどり着きました。
――このシステムは人材の育成や教育にも応用できるのでしょうか。
田中 : 当社では、eラーニングの機能を活用し、介護や障がい福祉業界の専門家による研修動画などを随時配信しています。受講履歴など利用者のアクション管理機能もあるので、何をどこまで習得しているのか、技術・知識の進度と深度を可視化できます。つまり、「Dr.ZNOO」を活用すれば、個々のレベルに応じた人材教育も可能と言えます。教える側の教え方や双方の感情・相性に左右されることなく、システムの応用で必要な知識やスキルの均質的な習得を目指します。
――そこをシステムに置き換えると。
田中 : そうですね、「Dr.ZNOO」は業務上のあらゆる成功事例の共有が可能であり、あとは前例に〝乗っかる〟だけ。この成功事例の再現性を高めることに専念することで、おのずと社員のスキルや提供するサービスレベルの底上げにつながり、それも人材教育の一環となります。
――人材育成の上で、社員のやる気も大きなポイントですね。
田中 : 米国のギャラップ社が実施した、社員が会社に対する「愛着心」や「思い入れ」を示す〝エンゲージメント〟を測る調査によると、日本企業にはエンゲージメントの高い「熱意あふれる社員」が6%しかいないというデータが出ています。これは調査国139カ国中132位という結果です。意識の低い人にやる気を強要しても意味は無く、むしろパフォーマンスのさらなる悪化につながりかねません。〝代わりがいくらでもいる時代〟ではないわけですから、今いる社員にどのように働きがいを持ってもらうか。そこに着手することが本当の意味での働き方改革だと考えます。
― 〝良い職場〟の定義も変化しつつありますね。
田中 : 近年、職場の〝心理的安全性〟について重要視されつつあり、安心して発言できるか、自分の居場所はあるか、広く社員の安全が担保されているのかが企業に問われるようになりました。直属の先輩や上司、あるいは同僚との相性によって離職率が変わるというこれまでの職場環境では、安定した企業経営は立ち行かなくなるでしょう。
労働人口減少が加速 人材確保がポイント
――介護や障がい福祉分野は人材確保が難しくなっています。
田中 : 介護・障がい福祉に関わらず、全国的に生産年齢人口が減少しています。2010年比で、40年には全国で26 ・2%減少、北海道では38・9%も減少すると予測するデータもあります。
また、札幌市への一極集中がさらに加速し、40年には道内人口の約4割が札幌市に集まると言われています。札幌市内も人材採用は大変ですが、地方都市は今後ますます難しくなるでしょう。当社では現在、年間700件以上の採用応募をいただいておりますが、遠くない未来に備え、数年前から海外人材の獲得に力を入れています。
――海外人材はどのように探していますか。
田中 : 私や当社スタッフが海外に直接出向き、現地の看護学校や日本語学校の学生にアプローチしています。こうした手法で現在はインドネシアなどから6人の外国人を雇用しており、今後さらに6人の入職が決定しています。当社で働いた海外人材が、帰国した後も日本で培ったスキルを母国で活用できるように、海外での事業展開も進めております。
さまざまな業界で機械化やAIなどを活用した省人化がトレンドですが、介護・障がい福祉の現場ではやはりマンパワーが必要です。いかに人を集められるかが経営戦略上で最も重要ポイントになると見ています。
そこで重要なのは、求職者に会社の社風や職場の雰囲気をどのように伝えるかです。当社は社員がSNSを活用して積極的に情報発信するほか、2月からはFMノースウェーブでラジオ番組「3eeeサツエキマエクラス」をスタートしました。さまざまな媒体を利用したクロスメディア戦略で当社を知るきっかけを増やし、採用につなげています。
新時代のシステムとして他業種からも注目が集まる
――「Dr.ZNOO」はFC加盟会員以外でも使えるのでしょうか。
田中 : このシステムをベースに、加盟会員以外にもご利用いただけるプラットホームを開発しております。今回の開発にあたって、現場からの質問や回答をテキストや音声ファイルで記録できる対応記録機能や全国の店舗に対しコンプライアンスチェックなどを実施できる臨店管理機能などを新たに実装し、より利便性の高いツールにブラッシュアップしました。
すでに販売に向けた動きが進んでおり、スーパーバイザーやマネージャーの工数削減や複数店舗の管理、ノウハウの共有、スタッフの育成・教育などにご活用いただけます。
――多店舗展開する企業にはとても魅力的ですね。
田中 : はい。さらに、データや事例の共有によって現場に「横のつながり」が生まれ、自走する組織を構築できるようになります。ボトムアップで組織が成熟することで、単なる作業効率化・生産性向上だけにとどまらず、組織としてのステップアップにもつながるでしょう。
――他業種からの問い合わせも増えているようですね。
田中 : ありがたいことに多方面から反響をいただいております。スーパーバイザーが不要になり、時間や経費のコストを削減できるこのシステムは、飲食やサービス、小売など多店舗展開しているビジネスとの親和性が非常に高いのも魅力の一つかもしれません。
他業種の企業からお話を聞いて感じたことは、どの業界においても人員は限られており、やはり属人的な教育に陥っているようです。人材教育は確かに大切ですが、人員や拠点が多ければ多いほど、トップの目が行き届きにくくなり、管理職に委ねるしかありません。前述した通り、人対人では必ず相性や好き嫌いがあり、そこから生じるストレスによって離職してしまう人も出てくるかもしれません。
まだ仮説の域を出ないものの、当社でシステムを運用しながらデータを収集していくと、このようなシステムが社員の定着率改善に効果をもたらす傾向も見られました。いずれ人材教育はシステムが担う時代が訪れるかもしれません。新時代の人材育成として、システムを効果的に活用してみるのも良いのではないでしょうか。


