【無料公開】大作誕生のきっかけは「探偵はBARにいる」・ 映画「レジェンド&バタフライ」プロデューサー須藤泰司さん(札幌出身)が語る制作秘話

©財界さっぽろ

東映・映画企画部ヘッドプロデューサーの須藤泰司さん

映画「レジェンド&バタフライ」(1月27日公開)の累計興行収入は20億円、観客動員数150万人を突破。現在も上映中だ。東映創立70周年を記念して製作された大作の裏側には、企画プロデューサーを務めた須藤泰司さん(札幌市出身)の存在があった。制作秘話などについて聞いた。

斜陽化が進む時代劇で

 当作は戦国時代を舞台にストーリーが繰り広げられる時代劇映画。主人公の織田信長が、正室(本妻)・濃姫と出会い、本能寺の変が起きるまでの33年間が描かれている。信長役は木村拓哉さん、濃姫役を綾瀬はるかさんが演じる。ほかにも、宮沢氷魚さんや市川染五郎さん、音尾琢真さん、伊藤英明さん、中谷美紀さんらが脇を固める。
 脚本を手がけたのは「ALWAYS 三丁目の夕日」「探偵はBARにいる」などで知られる古沢良太さん。監督は、「るろうに剣心」シリーズや大河ドラマ「龍馬伝」などが代表作の大友啓史さんが務めた。
 企画プロデューサーは須藤泰司さん。札幌出身で、現在は東映の映画企画部ヘッドプロデューサーを務める。その須藤さんに話を聞いた。

――レジェンド&バタフライ(レジェバタ)が大ヒット上映中です。

須藤 : 本作は原作がありません。完全オリジナル時代劇映画です。今、思い返してみると、同ジャンルのオリジナル映画で興行収入20億円を超えた作品は、過去に例がないと思います。
「清洲会議」(2013年)という作品が29.6億円を記録していますが、三谷幸喜さんの小説が原作となっています。
 そういう意味で、レジェバタは画期的な作品だと思っています。

――本作誕生のきっかけは札幌・ススキノを舞台に描かれた映画「探偵はBarにいる3」を制作中のときだと聞きしました。

須藤 : 2016年ごろでしょうか。この作品の脚本を古沢(良太)さんに書いていただきました。その作業中に私がこう声をかけたんです。
「京都でオリジナル時代劇を作りませんか?」と。
 斜陽化が進むジャンルで、さらにオリジナルで人を魅了する作品が書けるのは古沢さんしかいないと思いました。
 当時、興味を持っていただきましたが、国内でも有数の売れっ子脚本家です。お忙しいのは承知の上で、声をかけた感じでした。
 すると、そこから3年後、古沢さんからこんな提案がありました。
「時代劇で、ロマンチックコメディをやったら面白いんじゃないですか」
「それ面白いな」と思っていたら、別ルートからは、こんな話を聞きました。
「木村拓哉さんが、どうやら織田信長の役を演じたいと言っている。しかも、それを東映の京都撮影所でやりたいと」
 この2つの件を一緒にしたらどうかと古沢さんに相談しました。
「やりましょう」という流れになりました。

――古沢さんからの脚本を受け取ったとき、どう感じましたか。

須藤 : プロデューサーとして、映画だけでなくドラマなど計300本以上の作品を手掛けてきましたが、今まで見てきた脚本の中で直すところがないと思った作品が2本あります。そのうちの1つがレジェバタです。
 もう一つは人気ドラマ「相棒」正月スペシャルの脚本でした。これも古沢さんが書いたものです。基本的に完成度の高さが、ずばぬけています。
 大友監督も同じようなことを言っていました。いい意味で“異常”ですね(笑)

――そもそも、なぜ時代劇を?

須藤 : 最近では、民放でも時代劇ドラマを見ることが少なくなりました。映画作品数も減少しています。このままほっとけば、時代劇という無形文化財が1つ消えてしまうと思いました。
 エキストラさん1人つくるにしても、日焼けやメイク、カツラ、着物を着せるなどの工程があります。すべて専門の技術で、人の手によって行われています。その方々がいなくなれば、作品がすべてつくることができなくなります。
 このことを誰よりも憂いていたのが、2月11日に亡くなった当社の代表、手塚治でした。
レジェバタは、時代劇という無形文化財を未来につなげていくといった思いも込めています。その中で、総製作費20億円超の超大作を完成させることができたのは、手塚の存在が大きいです。僕らもその思いを感じながら、総力を上げて制作に取りかかりました。

――作品には豪華俳優陣が登場します。

須藤 : 僕が70周年映画だなと実感したシーンがあります。織田信長の父・信秀の葬式で、濃姫が座っている後ろに、伊藤英明と中谷美紀が座っています。どちらも大主役を張れるようなビッグネームが普通に控えているんです。これは豪華だなと思いました(笑)

――TEAM NACSの音尾琢真さんは、木下藤吉郎(のちの豊臣秀吉)役を演じました。

須藤 : 現場に北海道出身の方がいると落ち着きました。地元同士の安心感がありましたね。
作中でもしっかりと存在感を発揮しています。後半、話は過酷になっていきますが、音尾さんの演技は雰囲気を少し明るくしてくれます。お客さまは少し息を抜ける。そんな瞬間をつくってくれています。

――大友監督の魅力は。

須藤 : 映像の細かいところまですべて見えている点です。この部分が少し影になっているとかエキストラのメイクがちょっと弱いとか、映像を1枚の絵として完璧にスキャンし、見ている感じ。それをずっとやり続けているのがすごい。だからこそ、スタッフは全員手を抜けませんね。
 今作は、ハイスペックな6Kカメラを使用しています。その分よくも悪くもいろんなところがハッキリと見えます。しかし、監督はあらゆる手法を使い、どこを切り取ってもいい加減な画が出てこないようになっています。
 エンターテイメント作品の中にものすごい美意識をぶち込む。お客さまを楽しませるために絶対に手を抜くかないのが大友監督です。
 映画が公開されて以降、多くの女性のお客さまから「画がキレイ」と言っていただきます。
 実際に劇場内で、このこだわりを体感して欲しいです。そして戦国時代に没入してください。お金を払っていただいた分は、必ず楽しめると思います。ぜひ、臨場感を映画館で味わってほしいです。

須藤泰司
1968年、北海道・札幌市生まれ。同志社大学を卒業後、92年東映入社。その後、「相棒」シリーズや「ゴンゾウ 伝説の刑事」など、テレビドラマのプロデューサーを務める。
2011年、映画「探偵はBARにいる」の脚本を古沢良太さんと共同執筆。現在は同社の映画企画部ヘッドプロデューサーを務める。

こちらもおすすめ

関連キーワード