上野正三 北広島市長

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ボールパークを北海道の新しいシンボルへ

 ボールパークは、道民のみならず全国から注目を集める。誘致を表明してから6年。市長の上野正三氏は、「あっという間だった」と振り返る。新球場がもたらすものはなにか。また、来シーズンの日本ハムファイターズに何を期待するのか。開業まで半年を切った現状を聞いた。

ボールパーク誘致前から球団と縁

――10月2日、北海道日本ハムファイターズが2022年シーズン最終戦を迎えました。ファンを始め、早くも来季へ関心が向いているのではないでしょうか。新球場「ボールパーク(BP)」の完成が近づいています。どのような気持ちですか。

上野 : 最近、建物の外観部分が、ほぼ完成しました。その姿を一目見ようと、多くの市民の皆さま、道民の皆さまが、球場近くまで足を運んでいます。「待ち遠しい」「ワクワクしています」という声をいただくことが多いです。注目度がより上がってきていると感じています。
 われわれも、計画段階からすごいものができると分かってはいたのですが、いざ建物を目の前にすると、規模の大きさに圧倒されます。
 BPの誘致を表明したのが6年前。当時は、開業が23年と言われても、あまりピンと来ませんでした。まだ遠い先の話だなと思っていました。しかし、開業まで半年を切った現在は、あっという間に月日が経過したと感じています。

――BP誘致に関して、これまでの経緯を教えてください。

上野 : 市内には「きたひろしま総合運動公園予定地」という土地がありました。1970年に策定した第1次総合計画で、この地にスポーツ施設などを整備していくという方針を決めました。しかし、社会情勢の変化などもあり、事業化には至っていませんでした。
 そんな中、ファイターズの新球場構想の話が浮上し、あの土地に誘致するのはどうかという話になりました。
 北広島市はファイターズが札幌に移転した当初からお付き合いがありました。室内練習場の建設場所を探していた球団に、提案させていただいたんです。結果的に、その施設は札幌市、苗穂に決まりましたが、あの当時から関係性ができたのは、今思えば何かのご縁だったのではないかと。
 その後、15年に国が土地の有効活用を推進すべく行った官民連携事業の調査でも、話し合いの機会がありました。そのときは二軍の試合をやる際はどのような球場がいいのかなどを話しました。個人的には、これがBP誘致の原点だと感じています。

――18年、新球場が北広島市に決まったときはどのような気持ちでしたか。

上野 : うれしい気持ちと忙しくなるぞという2つの気持ちがありました。プレッシャーも大きかったですね。市民の期待も背負っていますから。誘致にあたっては、地元の誘致期成会が集めた約8000人のメッセージも届けました。短期間で、これだけの数が集まるのは、それだけ市民の期待が大きいからだと受け取りました。市民の理解なくして誘致はあり得ませんでした。

北広島だけではなく道全体で地域活性化

――BPの開業をまちづくりとどう結びつけていきますか。

上野 : 市は現在、第6次総合計画で希望都市・交流都市・成長都市へ向けた取り組みを行っています。BPの開業で、市内にはいろんな方に来ていただく機会が増えています。交流人口が増えると、定住人口の増加にもつながります。持続可能な行政運営に大きく貢献してくれるのではないかと考えています。
 北広島は札幌近郊ながら自然が豊かなまちです。国道、道道等の利便性が高く、高速道路の出入り口もあります。住むには魅力的な場所だと思います。
 また、「オール北海道BP連携協議会」では、圏域17市町村が一体となり、BPを通した各まちの活性化を目指しています。市だけでなく、道全体のまちづくりに生かしていきたいです。

――観光の側面はどうお考えですか。

上野 : 新球場には、アメリカの自転車ブランド「スペシャライズド」の直営店が入ります。同店ではレンタルサイクル事業も展開する予定です。われわれも自転車によるまちづくりで連携を図っていきます。市内は、自然が多く、サイクリングを楽しむには最高な場所です。
 国指定史跡の旧島松駅逓所という観光名所もあります。寒地稲作発祥の地であり、クラーク博士が帰国の際、「ボーイズ・ビー・アンビシャス」の名言を残した場所でもあります。そういったところもサイクリングで巡っていただきたいですね。

――BPの魅力を教えてください。

上野 : 子どもから年配の方、そして野球に興味がない人でも楽しめる施設だと思います。また、小学生以下は入場無料。気軽に足を運んでいただければと思います。球場内外に玩具メーカー「ボーネルンド」監修の遊具が設置されています。ほかには温泉・サウナ、ビール醸造所が併設されたレストランなどがあります。今までの球場とはまったく違う印象を受けますね。
 野球場という面から見ると、外野フェンスの形が左右非対称だったり、ファールゾーンが狭く、観客席とフィールドの距離感が近いのが特徴です。札幌ドームとは異なるタイプの球場という認識を持っています。過去に監督を務めたトレイ・ヒルマンさんにも、最近お会いしました。メジャーリーグの球場も知っている彼が視察で、「シンジラレナーイ!」と言っていました。これはとても誇らしいことです。

開業は箱根駅伝でいう〝往路のゴール〟

――一方で、一部からは交通の便を懸念する声もあがっています。どのようにお考えですか。

上野 : BPでは、約4000台の駐車場を設けています。試合前と終了後、道路が渋滞にならないよう道路工事も進めています。3月のオープン戦では、実際にシミュレーションを行い、さらなる対策を取ります。
 また、JRの利用についても、札幌市内から北広島へ行くのが遠いと、イメージを持つ方がいると聞きます。しかし快速エアポートでの所要時間は16分です。北広島駅からシャトルバスも運行します。一度足を運んでいただければ、こんなに近かったのかと実感いただけると思います。新千歳空港からだと、20分くらい。道外からもたくさんの方に足を運んで欲しいです。

――もともと、野球が好きだったと聞いています。注目している選手はいますか。

上野 : 道産子選手に目が行きます。わたしが子どものころは、道内出身の選手がプロ野球選手になることは少なかった。今川優馬選手や伊藤大海選手には、BPでは更なる活躍が見たいです。そして、将来的には、当市出身のファイターズ選手が誕生してくれるとうれしいですね。

――来季、チームへ期待することは。

上野 : 新庄剛志監督は、「来季は2位も最下位も同じ」と言っています。相当気合いが入っていると思いますので、優勝を期待しています。新たな歴史を刻んでいただく年に、ふさわしい成績を残して欲しいですね。
 また、監督とは何度かお会いしていますが、テレビに出ているときの雰囲気とはまったく違いましたね。1対1で話すと、とても真面目な方。野球に対する取り組み方や考え方をしっかり持っている印象を受けました。

――将来、BPはどうなっていて欲しいですか。

上野 : 北海道の新たなシンボルになって欲しいです。BPの最終形は20年後を目指しています。開業と同時に第1フェーズを迎え、いろいろな形で成長していきます。「世界がまだ見ぬボールパーク」を掲げ、突き進んでいくと思います。
 市の職員には、箱根駅伝に例え「開業は往路のゴール」と伝えています。まだ復路があるので安心したらダメだと。新しいJR駅の設置などの計画もこれから進めていきます。気を引き締めていきたいと思います。

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うえの・まさみ
1948年3月21日、恵庭市生まれ。北海学園大学卒。70年、広島町(現・北広島市)役場入庁。2004年、北広島市助役就任。05年、同市長選挙に出馬、初当選。現在5期目。

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