大宅壮一 評論家【1969年10月号】
〝インター都道府県〟の中から〝道民精神〟が生まれた
「大宅壮一ノンフィクション大賞」は毎年、気鋭のジャーナリストに贈られる文学賞だ。
大宅壮一は〝マスコミの帝王〟とも称され、昭和を代表する言論人だった。東京でマスコミ塾を開講し、メディア関係者を育成した。
大宅は1956年、「無思想人」宣言を発表。大衆の一人として、権力にたいして不偏不党の姿勢を鮮明に打ち出した。
また、大宅は〝造語の達人〟とも言われる。「一億総白痴化」「口コミ」「太陽族」という言葉は、大宅が生み出したもの。
大宅は69年10月号の誌面に登場している。
北海道を〝インターナショナル〟ならぬ〝インター都道府県〟と表現している。
大宅はその答えを解き明かしている。
「かつての北海道はいろんな野心的な人も、前科者も、ならず者もいた。とにかくひとくせふたくせもあるようなやつが集まってきた。こうした〝インター都道府県〟の中から、〝道民精神〟という新しい力が生まれたのだ」
その上で、大宅は北海道発展のカギとして「古い北海道人が自身を再開発すること」と指摘し、こう続けた。
「特に北海道開発では、新しい青写真を作って、やり直さなきゃいけない時期にきている。新しいクラーク博士が必要だ」と。
観光については「天然資源とか、名所旧跡とかを観光資源とし、それを売り物にしているような国は、だんだん乞食国家になる。つまり客引き根性はあっても、その地域全体が娼婦化する恐れがある。だから、観光も生きた生産力と結びついた産業として発展させなきゃならん」と叱咤激励している。
大宅は翌年11月、70歳でこの世を去っている。ある意味、この対談が北海道への遺言のような意味合いを持っていた。