【無料公開】札幌市長選の自民党候補選考に今洋佑衆院議員、伴良隆・藤田稔人市議が応じるも、懸念される“出来レース”
左から今洋佑氏(自民党ホームページより)、伴良隆氏、藤田稔人氏
自民党札幌市支部連合会(札連)の次期市長選候補について、自民衆院議員・今洋佑氏(43歳)、札幌市議の伴良隆氏(48歳)と同じく藤田稔人氏(48歳)の3人が届け出た。現状は今氏の選出が濃厚で“出来レース”との声が上がる一方、今氏が実際に出馬可能かまだ決まっておらず、混迷の度合いも増している。
札連が7月23日から受け付けていた応募は8月6日午後5時で締め切られ、選考は今氏、伴氏、藤田氏の3人で行われることになった。
今氏は1983年札幌市生まれ、岩見沢市育ち。岩見沢東高校から東京大学工学部大学院修了後、内閣府官僚に。2016年から2年間、福井県大野市に副市長として出向した後、19年に退官。民間企業へ転身し、ソフトバンクグループ総帥・孫正義氏直属の部署に身を置いた。その後は地方活性化を手がけるコンサル会社を起業するかたわら、金沢大学特任准教授などを経て、今年2月の衆院選で自民の比例北陸信越ブロック名簿に下位で登載、当選を果たした。
伴氏は1978年東京都生まれ。中央大学法学部卒業後、国会議員秘書や会社員を経て11年市議選に北区から出馬し初陣を飾ると以降4期連続で当選。現在、札連幹事長として市長選選考の行事役を務めているが、かねて自身の周囲から市長選挑戦への期待が持ち上がっており、応募の意向を示していた。
藤田氏は1977年札幌市生まれ。中央大学法学部卒業後、全国市議会議長会事務局や民間企業での勤務を経て2011年に中央区、15年は白石区から札幌市議選に挑戦。19年、3度目の市議選に白石区から再度出馬して初当選を果たし、現在2期目だ。
さて、今氏については本サイトで既報の通り、道4区衆院議員の中村裕之氏をはじめ、複数の国会議員が擁立に関わってきた。応募の際は中村氏に加え、道1区衆院議員の加藤貴弘氏が推薦人となった。
今氏は福井県連所属の衆院議員のため、中村氏らは今氏と並行して県連の承諾を得るために調整を続けてきた。札連関係者によれば、今氏の後見人とされるのが、同県選出で参院議員6期を重ね参院議長も経験した重鎮の山崎正昭氏だという。
「今氏が出向で赴任した大野市は山崎氏の地元。山崎氏がクビをタテに振るかが重要だ」
そのため、擁立を検討してきた国会議員らは同じ参院議員の橋本聖子氏を通じ、山崎氏の了解を得るため調整を続けてきた。
「現在84歳で2年後に改選を迎える山崎氏の後継、あるいは大野市議会議長も務めた山崎氏の長男・利昭氏の後釜などさまざまな可能性があり、今氏自身も逡巡したと聞く。7月半ばには一度、話が流れたとの話もあった。だが17日に党選対委員長の西村康稔氏が今氏と面会するなど、本人への説得も並行しながら承諾を得るために動いてきた」(前出札連関係者)
その中で7月24日には、北海道建設業協会会長で札幌商工会議所名誉会頭の岩田圭剛氏も今氏と面会。そして8月4日には札連会長の三上洋右氏らも今氏と会談した。
こうした動きと並行して、札連は市長選候補の選考委員会を設置。札連役員や経済団体の推薦者からなる総勢29人の大所帯で組織され、前出の通り7月23日から書類選考が始まった。
だが、この選考委の内部から異論の声が出ている。
あるメンバーは「選考委員会自体はできたが、候補をどう選びどうやって決めるかの肝心な部分が不透明なまま、一度も選考委が開かれずに候補の募集だけが始まった。予定では8月中旬に書類選考や候補の面接とされているが、選考の基準は一体なんなのか。最後は投票なのか協議なのか。選考委自体、忙しい人たちを集めすぎて大所帯になりすぎ、2度ほどしか選考委の会合自体が開かれないと聞いている」と明かす。
選考委には「小委員会」という組織があり、会長の三上氏、札連総務会長の中川賢一氏、同政調会長の村山拓司氏の3人がメンバーとなっている(幹事長の伴氏もメンバーだが候補のため除外)。
このメンバーは、返す刀で選考自体をばっさりと切り捨てる。
「選考委の組織づくりと並行して、すでに今氏に対してさまざまなアプローチが行われてきた。とくに三上さん始め小委員会含め自民市議が東京まで今氏に会いに訪れた。まだ選考委が1度も開かれていないうちに。世間ではこれを『出来レース』と呼ぶのではないか」
この指摘には裏付けがある。たとえば6月以降、三上氏は市内の50代女性経営者を水面下で候補に挙げ、市内の経済界幹部と引き合わせるなど自身の“腹案”として準備してきた。だが7月に入り、選考委の概要が固まる中で「その経営者の名前はフェードアウトしていった」(自民市議)。別の自民関係者も「今氏が選考に出られるなら辞退の方向と聞いた」という。実際、応募が始まった7月23日以降、名前は“まな板の上”にのることはなかった。
さらに総務省官僚で札幌市前財政局長の笠松拓史氏(関連記事)は、推薦を検討していた自民市議複数人が“撤退”した。
「笠松氏本人は『(推薦されたら)重く受け止める』として、良い感触を得られていた。だが市議の側が実際に推薦するまでに至らなかった。当然、三上氏らが今氏へ傾斜していったこともその理由の1つだろう」(前出市議)
なお今氏については、6日の応募締め切り時点で「福井県連はまだ承諾していない」と札連幹部が明かす。この状態のまま選考だけが進む公算が高い。
別の札連関係者は「最悪の場合は候補に選ばれても県連が許可せず、辞退される可能性もある。むしろ選考で今氏に一本化した上で、再度県連を説得する方向になるだろう」と見通す。
伴氏を30人以上の道議が推薦
他方、伴氏を支援するのが地元の各級議員らだ。5日夕方、元市議会議長で東区市議の五十嵐徳美氏ら5人を中心とするグループが伴氏に推薦状を手渡した。北区の道見泰憲氏、東区の渡邊靖司氏の道議2人や両区を選挙区とする道2区衆院議員の髙橋祐介氏も加わった。五十嵐氏らは他薦で伴氏を候補に挙げた上で、この期間でさらに支持の拡大に努めてきた。とくに自民道議は30人以上が名を連ね、薬剤師連盟など各種の政治団体も推薦した。
その伴氏は、推薦者への挨拶で「選考プロセスの見える化」をすべきと主張。公開討論会や街頭演説などの実施も求めた。自身もメンバーとして選考委の組織に関わっていることからそれを念頭にしたものだが、その思いが伝わるかは不透明だ。
また応募期間最終盤に自薦で名乗りを挙げた藤田氏は、冬季五輪招致の再開などを訴えるという。
なお候補を正式表明しているIT企業「エコモット」社長の入澤拓也氏(46歳)は、自身のSNSで自民の選考に応募しないと表明。応募する際、選考に漏れた場合は出馬を断念する旨の誓約書が必要とされたことが背景にある。
今後、自民選考委は8月中旬から下旬に第1次の書類選考、8月下旬から9月上旬に第2次の面接を行い、9月上旬の候補発表を目指す。市長選には元衆院議員の荒井優氏(51歳)も立候補を表明している。
本稿に関連し、8月15日発売の本誌財界さっぽろ9月号から「荒井優に札幌市長選に負けても……自民党札連会長・三上洋右の“トホホな皮算用”」も先行公開している。


