【独自】2/8投開票・第51回衆院選 北海道内“深層”レポート〈1〉1区・2区・3区【財界さっぽろ編集部総力取材】
雪の道庁赤れんが庁舎
通常国会冒頭解散からわずか4日。戦後最短の超短期決戦となった第51回衆議院総選挙について、財さつJPでは本日から4回に分けて北海道内12の小選挙区と比例道ブロックの情勢をお届けする。初回は北海道1区・2区・3区について。以下は文中すべて敬称略。
顔写真や各候補の訴えは公式WebサイトやSNSなどのリンクを用意したのでそちらを参照のこと。現在行われている期日前投票、2月8日の投票日に向けて参考にしてほしい。
(文中の政党略称=自民→自由民主党、中道→中道改革連合、立憲→立憲民主党、維新→日本維新の会、公明→公明党、共産→日本共産党、国民→国民民主党、社民→社民党、れいわ→れいわ新選組、参政→参政党、保守→日本保守党、大地→新党大地)
〈1区〉=札幌市中央区・南区・北区および西区の一部
道下 大樹(みちした・だいき)1975年12月24日 前職(3期) 中道公認
立憲国対副委員長、元道議会議員、元衆院議員秘書
https://michishita-daiki.com/
臼木 秀剛(うすき・ひでたけ)1981年3月28日 前職(1期) 国民公認
元衆院議員秘書
https://h-usuki.net/
加藤 貴弘(かとう・たかひろ)1983年1月22日 新人 自民公認、維新推薦
元道議会議員
https://takahirokato.jp/
森 英士(もり・つねと)1978年1月20日 新人 共産公認
党北海道国政相談室長、道常任委員
https://moritsuneto.com/
加納 千津子(かのう・ちづこ)1975年10月22日 新人 参政公認
元会社員・医療事務職員
https://x.com/chizuko_kanou
「旧民主系で2人の候補が出馬するのは初めて。票の割れ方も想像がつかない」と不安を口にするのは中道関係者だ。
北海道1区では5人が出馬。その中でも中道・道下大樹と国民・臼木秀剛は支持母体が一部重なり、組織票の削り合いとなる。
国民は1月17日、旧民主党系の幹部らが出席した会合で、1区に擁立の方針を示した。これに対し、支持母体の連合北海道が強い言葉で非難。後日、会長の須間等は記者団の前でも、「受け入れがたい」と声明を出した。
ただ、国民関係者は「一部報道では、対立構図をあおるような報道をしているが、われわれは連合に推薦依頼をしたわけではない。本部からの指示で擁立しなければならない立場ということも理解はいただいているはずですが……」と話す。
4選を目指す道下は前回の選挙で10万8394票を獲得。2位の自民・加藤貴弘(8万133票)に3万弱の差をつけて当選したが、今回は状況が異なる。
もともと、道下は元衆院議長で元知事の横路孝弘の秘書を務め、道議を経て、2017年に初当選。横路の後継として1区の議席を守り続けてきた。後援会長は横路の右腕だった西本美嗣が就き、支援者もそのまま引き継いできた。2023年には新たな後援会長に前札幌市長の上田文雄が就任。盤石の体制を築き上げてきたが、ここ数年で後ろ盾となってきた人物が相次いで鬼籍に入った。
立憲関係者は「道下は人当たりがよく敵を作らないタイプですが、本人の〝色〟が見えない。何をしたいのか、明確なものを示してほしい。独り立ちが求められています」と述べる。
今回は立憲と公明で結成した「中道」からの出馬だ。公明の支持母体・創価学会の組織票でどれだけ積み増しできるかは未知数だ。公明党関係者の話。
「ベテラン議員であれば、公明党や民社党、日本新党などが結集した『新進党』の時代を知っているため、今回の件も切り替えて応援できる。政治では〝昨日の敵は明日の友〟という言葉がよく使われますが、複雑な心境の議員が多いのも事実。これは学会員の皆さまも共通していることだと思います。頭の中の整理をしてもらいながら、選挙期間の後半からは党としてもエンジンを掛けて支援に回るはずです」
一方、民主系候補が角逐する中で虎視眈々とトップを狙っているのが自民・加藤だ。道議(西区)を務め、3期目途中で辞職。24年の衆院選で初出馬した。前回は〝政治とカネ〟問題のあおりも受け、得票数を伸ばせなかった。
「1区は浮動票の動きが特に大きいエリア。今は高市早苗首相の人気も利用しながら立ち回るしかない。応援演説に来てくれたとき、札幌グランドホテルにはアイドルの出待ちかと思うほどの市民が押しかけた。あの効果がどれだけ反映されるのか……」と自民関係者。
加藤は以前から、豊富な人脈をアピールしてきた。特にファイターズをはじめとしたスポーツ選手やススキノの飲食店などとのつながりが深い。
しかし、ベテラン自民関係者は冷静に分析する。
「前回の結果を見たときに、ススキノ関係者などがどれだけ投票に行ったのかと言われると、なかなか難しいところです。ただ、前回の落選から本人は積極的に街頭に立ってきた。握手してくれる人も増えてきたという話も聞いているので、自信を持ってほしい」
自民はこれまで「花の1区」で、あまり議席を獲得できていない。12年に船橋利実(現・参議)が初出馬した際に、横路に黒星をつけたことはあるものの、近年はリベラル系に明け渡している形だ。
「今回の自民の情勢調査でも〝劣勢〟という結果が出ています。すでに落選後の、1区の体制をどうしていくべきか……と考えている人もいるようです。加藤には、それを見返すくらい必死でくらいついてほしいです」(道議会関係者)
1区はそのほかに、昨年の参院選で知名度を上げた参政が加納千津子を擁立。共産からは森英士が出馬する。
札幌市内中心部では2月4日から「さっぽろ雪まつり」が開催。交通規制などの関係もあり、大通・ススキノエリアでは、通常通りの形で街頭演説を行うのが難しい。各候補者がいつもとは違う冬の選挙で知恵を絞っている。
〈2区〉=札幌市北区の一部・東区
松木 謙公(まつき・けんこう)1959年2月22日 前職(7期) 中道公認
立憲幹事長代理(国対担当)、元農林水産政務官、元衆院議員秘書
https://kenko-matsuki.com/
髙橋 祐介(たかはし・ゆうすけ)1980年9月12日 元職(1期) 自民公認
元衆院議員秘書、元マーケティング会社社員
https://www.2ku-takahashi.net/
山崎 泉(やまざき・いずみ)1973年04月18日 新人 維新公認
元道議会議員、元帯広市議会議員
https://www.yamazaki-izumi.com/
平岡 大介(ひらおか・だいすけ)1989年2月8日 新人 共産公認
党道2区政策委員長、元札幌市議
https://x.com/hiraoka_daisuke
中田 綾子(なかだ・あやこ)1976年12月18日 新人 参政公認
党道第2区国政改革委員
https://x.com/pinpikochan
「政権選択選挙と言われていますが、われわれは政界再編選挙と位置付けて戦って参りたい。最後の最後まで、松木謙公さん、勝利のため全力で頑張りましょう!」
1月27日午前9時30分。イオン麻生店前に集まった中道・松木謙公の支持者や労組関係者らを前に、公明北海道本部幹事長を務める阿知良寛美は松木の第一声を前に、こう気勢を上げた。
その気合いの入りようは「阿知良さん、どちらかというとお静かな感じだと思っていたので、びっくりしました」と、松木が目を丸くしたほどだ。
2024年の前回衆院選は立憲から松木、自民から髙橋祐介、維新から山崎泉、共産からは宮内史織が出馬。松木が9万4000票あまりを獲得し、次点の髙橋に完勝。7選を果たした。
今回は共産が宮内から元札幌市議の平岡大介に交代して出馬。加えて参政から中田綾子が出馬し、5人での乱戦となった。
松木は自由連合を経て旧民主党、新党大地、維新、希望の党、国民、立憲を経て中道に入党。所属政党だけを見れば〝政界渡り鳥〟と揶揄されてもおかしくないが、その分、与野党問わず築いてきた政界人脈が何よりの強み。これまで公明とも与野党に分かれて戦ってきたが、松木本人は公明の各級議員らと交流を持ってきた。
「松木さんはもともと野党は勢力を結集して〝大きな塊〟となり与党、自民党と対峙すべきと言ってきた。中道での戦いとなっても何ら違和感はない」(立憲地元関係者)
一方の髙橋は、落下傘候補として21年衆院選に初挑戦して以来、3度目の戦いとなる。前回衆院選を前にした24年9月、比例道ブロック選出だった堀井学が公職選挙法違反で議員辞職。3年越しの繰り上げ当選を果たした。だが翌10月9日に衆院は解散。初の代議士生活は約3週間、国会会期は9日だけだった。
24年衆院選で髙橋が得た票は約7万7000票。同じ衆院選で自民・公明両党が得た2区内の比例票は合計7万6000票だった。基礎票とほぼ同じだけの票は得たものの、そこからの上積みがほぼなかったということになる。
「『候補本人に松木との票差を埋める具体的な戦略がなければ、何度戦っても勝てない』と主張する者もいる」(自民2区支部関係者)
さらに今回は公明票が中道へと流れる。「公明と支持母体の創価学会は基礎票の最低6割は中道候補に〝保証〟した」(立憲関係者)との話がある。24年衆院選で2区内の公明の比例票は約2万5000票。その6割、1万5000票が松木に流れれば、松木との差は優に3万票へ広がる。
髙橋は公示日の第一声で、自身の陣営幹部らが見守る中「私がやりたいのは〝勝つ選挙〟です」と訴えた。まずは自身の、自民支持層を固めるところから始めなければ、スタートラインにすら立てない。
頼みの綱は首相・高市早苗人気への便乗だ。道内の各小選挙区では、党作成のポスターの写真を使った赤い「高市のぼり」が目を引いている。こののぼりの発案者は2区支部関係者だ。
「2区支部だけで100本以上作成した。高市人気に乗っかって、何とか押し上げていけたら」(2区内の市議)
21年の2区補欠選挙から数えて4度目の選挙となるのが、維新新人で元道議の山崎泉。ただ得票率は13~17%程度で推移しており、重複立候補している比例のイスも維新は獲得できていない。
山崎が頼みにするのは、昨年11月から与党となったことで得た政策実行力。社会保険料改革や食料品の消費税率ゼロなど、自民の腰が重い政策に与党として「政策のギアを上げていく」と訴えている。
共産の平岡大介はかつて15年札幌市議選に26歳で初当選。市政史上初の平成生まれ議員として1期を経験した。27日の第一声では真冬の解散を強行した高市早苗政権に対して「雪国の暮らしを分かっているのか」と批判。大企業への課税強化による消費税の5%引き下げや賃金引き上げの応援などを掲げた。
共産にとって2区は北海道委員会本部がある総本山。勤医協の基幹病院もあり、道内の小選挙区で基礎票はもっとも多い。
「旧統一教会と高市首相との関係を問題とする内容を政党の広報車で宣伝するなど、これまで以上に批判の度合いを強めている。立憲・公明が中道を結党して現実路線へ傾斜する中、リベラル票の受け皿として共産の存在感が増す可能性もある」(地元政界関係者)
参政の新人・中田綾子は当別町出身。町内で放課後児童支援員として働いていたが、22年に動画サイトを通じて参政党を知り、街頭演説を見たことをきっかけに入党したという。
1月10日に札幌市内で行った記者会見では「デジタル端末ではなく、昔ながらの紙に鉛筆で書く基礎教育を重視する政策を」と主張。また27日の第一声では息子2人の子育て経験をもとに「女性・母親目線で北海道と子どもたちの未来を守りたい」と話し、子育てや教育問題に力を入れるとした。
公示前に自民党が行った調査では、松木が先行し髙橋が追っている。ただ、髙橋が自民支持層の5割程度を固めたに過ぎないのに対し、松木は立憲支持層の8割を固めた。また公明の4割も取り込んでいるが、平岡も共産支持層だけでなく公明支持層に食い込んで健闘。中田は自民支持層をほとんど獲得できていないが、参政のほか、れいわ支持層からも一定の支持を得ている。山崎は維新支持層以外には浸透していない。
〈3区〉=札幌市白石区の一部・豊平区・清田区
荒井 優(あらい・ゆたか)1975年2月28日 前職(2期) 中道公認
立憲副幹事長、同人材局長、学校法人副理事長、元ソフトバンク社員
https://araiyutaka.jp/
高木 宏壽(たかぎ・ひろひさ)1960年4月9日 元職(3期) 自民公認、維新推薦
元復興副大臣、元内閣府政務官、元道議会議員
https://hirohisa-takagi.jp/
円子 裕子(まるこ・ゆうこ)1963年2月25日 新人 共産公認
党道3区国政相談室長
https://x.com/maruko_yukojcp3
中島 良樹(なかじま・よしき)1978年9月14日 新人 参政公認
党道第3区国政改革委員、半導体メーカー勤務
https://www.facebook.com/nakashima.yoshi
「高木さんは新NISAの制度設計をした本人ですよ。すごい人材がここに並んでいるんです」
総理・高市早苗は札幌市内のホテルで行った高木宏壽への応援演説でそう言い放った。関係者によれば、事前の打ち合わせでは一切触れてなかった内容だったという。
自民陣営からは「そもそも、高木さんがNISAを手掛けたことを知らなかった」と驚きの声が上がった。
「高木さんは銀行、警察、監査法人と、多様な経歴の持ち主で、引き出しはたくさんある。しかし、実績をアピールするのが下手すぎる。政治家としてはもっと前に出てほしい」と自民関係者は気をもむ。
自民・高木と中道・荒井優の対決は3度目となる。21年は高木が約4000票差で勝ち、荒井が比例当選。24年は荒井が約1万7000票差で勝ち、高木は比例でもすくわれなかった。2人の対戦成績は1勝1敗。互角だが、今回の衆院選は「どう考えても荒井が有利」とささやかれている。
理由の一つは公明との関係だ。昨年3月、自民党本部は、新たな〝自公連立の象徴区〟として3区を禅譲する方針を固めた。これに高木や札幌市議の三上洋右らが断固拒否。禅譲案は4区へと流れた。その後、自公連立が崩れたのは周知の通りだが、この時に生じた公明との亀裂は、今も根深い。
一方、荒井は自身のSNSで中道結成について次のようにつづった。
「野田代表、安住幹事長の執行部が、このような取り組みを水面下で調整してきて、最後の最後にカタチにしてきたことにただただ驚いた。全く知らなかったからだ。そして、同じ事を考えていたからだ。」
「両党にも様々な違いはあるだろう、しかし、その違いを対話によって乗り越えていくことこそが今、求められている。小異を捨てて大道につくことこそ、今の世界情勢で求められていることだ。それを日本でできなくてどうするのか。」
新党結成を歓迎する荒井と公明は急速に距離を縮めている。第一声では、創価学会の前身・創価教育学会に触れた。
荒井は札幌新陽高校の元校長であり、教育方面についての造詣が深い。立憲内では〝ネクスト文部科学大臣〟の座に就いていた。得意分野と絡めて、公明との親和性を示した格好だ。
さらに、1月28日の荒井の街頭演説では、公明選出の札幌市議・前川隆史がマイクを握った。
「公明さんとの仲は非常に良好です」と立憲関係者は胸を張る。
荒井には約1年後の札幌市長選出馬説も色濃い。公明と近くなることを市長選への布石と見る向きもある。
高木陣営は、前述の高市の演説についての動画や写真をSNSに繰り返し投稿。
また、1月下旬に札幌近郊を襲った大雪と絡めて、清田区への地下鉄延伸を訴えるなど、〝アピール下手〟の返上を目指している。
「今回は、本人の口から〝背水の陣〟という言葉が出るなど、かつてないほど危機感を持っている。〝高市人気〟効果を期待しつつも、ドブ板選挙のように地道にやるしかない」(自民関係者)
また、3区には参政から中島良樹と、共産の円子裕子も出馬。中島は半導体関連会社社員、円子は介護福祉士の経験を生かして支持を訴えている。


