【無料公開】北海道は過去3回計100億円配布、その3割弱が経費!?官僚も呆れるおこめ券バラマキ「先駆者」の鈴木直道知事
鈴木直道知事
国民1人あたり3000円の補助→おこめ券?
12月16日、国の今年度補正予算案が参議院予算委員会を経て本会議で可決、成立した。難産の末生まれた自民党・高市早苗政権による初の予算審議では、目下の物価高対策が焦点に。子ども1人につき一律2万円を給付する事業や電気・ガス料金の補助など、約18兆3000億円に上る大型対策となった。
その中で耳目を集めてきたのが、地方自治体が地域の実情に応じて使える「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金(重点支援交付金)」の拡充。2兆円が措置されたが、このうち食料品価格高騰対策のために特別枠として4000億円が設けられた。その使い道の1つとして国が推奨したのが「おこめ券」の配布だ。
特別枠はもともと、国民一人あたり3000円程度の補助を念頭にしたものという。だが高市政権で農林水産大臣に就任したいわゆる農水族の鈴木憲和氏は、使い道の一例としておこめ券の配布に言及。高市首相もこれに同調した一方、自治体の首長などから単なるバラマキである、などとして否定的な声が挙がった。
さて、本誌や当サイト読者であればおこめ券、と聞くだけでピンと来る方も多いだろう。北海道では鈴木直道知事のもとで、ここ2年間で3度も、道内在住の子育て世代を対象としたおこめ券と牛乳券の配布が行われていた。
鈴木知事が選挙対策でバラまいた初回
1度目は2023年の北海道議会第1回定例会にて、22年度の最終補正予算として上程された「物価高騰等対策特別支援事業」。「食料費などの物価高騰の影響を受けている子育て世帯への支援や道産品の振興を図るため」として44億5160万円が計上された。道内の子育て世代、約39万世帯におこめ券と牛乳の贈答券、合わせて8000円分を支給するというものだ。
当時はコロナ禍の最終盤。農産物需要の減少が続く一方、生産資材高騰で牛乳やコメの生産農家が困窮しているため、物価高に対する子育て支援と農産物消費拡大の一挙両得を狙って行われた、というのがオモテ向きの話。
だが議案が議会に出されると、これが集中砲火を浴びた。なぜか。鈴木知事の2期目の選挙直前に「先議」で予算を通すなど「ツッコミどころ」が満載だったからだ。
第1回定例会はどこの自治体でも翌年度の本予算を審議する重要な議会で、道の場合、会期も1カ月以上に及ぶ。通常は本会議初日に翌年度の予算案を上程し、項目ごとに委員会へ割り振って充分な議論を重ねる。当年度に余った財源などを使ったり、翌年度に繰り越ししたりする場合に行う最終補正も同じく委員会などで審議するのが当然。これを「委員会中心主義」というが、先議はそれを省略し、本会議の質問と答弁のみで議決することを言う。
さらに言えば、先議を強行した割に、実際に券の支給を受け付けるのはその年の5月から。先議する理由がそもそもなかったのだ。
「5月からなら本予算に組み込めばいいだけ。まぁ100歩譲って補正予算を組むまででもいいが、なぜ委員会で議論せず先議なのか。野党会派からそれを委員会でじっくり追及されたくなかったからに決まっている。誰が見ても選挙対策だ」(立憲民主会派のベテラン道議)
前出の通り、このバラマキには44億円強が費やされた。財源として、節電に協力した世帯に2000円相当のポイントを配る事業の残り31億円を充当。コロナ対応の臨時交付金を使った各事業の残り13億円もつぎ込んだ。
当時を知る道政関係者はこう振り返る。
「節電ポイント事業を仕切る道経済部内では、余った交付金を財源に公共交通利用や飲食の補助など、国費が出ない事業の延長を検討していた。だが突然、知事がおこめ券と牛乳券を配ると言い出した。当時のある副知事が言い出しっぺだったとも聞く。経済部はその後、農産品ということで農政部へ仕切りを押しつけようとしたが反発され、結局は経済部の所管になった」
先議での質疑では、そもそも「なぜ子育て世帯だけなのか」といった疑問も各会派から噴出した。
「節電ポイントは失敗だったとはいえ、事業の対象範囲は広かった。物価高は高齢者や低所得者世帯への影響も大きいのに、そちらへの支援は不要なのか」(ある野党道議)
先議の際、鈴木知事は「国の調査で子育て世帯が物価高騰の影響を大きく受けている」とした上で、道産品の主力であるコメと牛乳の消費拡大につなげる、と理屈を付けた。
しかし、それだけでは「子育て世帯のみを優遇する理由になっていない」と追及され、答弁に窮して質疑がたびたび中断。副知事以下、幹部があわてて即席で答弁を作成した。その間、知事は待ちぼうけするのみ。「日本一の八百長議会」と呼ばれ、句読点の位置まで決める道議会名物の「答弁調整」すら間に合っていなかったことを露呈した。
かように突貫工事の事業は、再選を果たした鈴木知事のもとで2度、3度と「おかわり」された。同じ23年の11月末、道議会第4回定例会で国の物価高対策に合わせた補正予算が組まれ、まったく同じ事業を上程。この時は配布金額が1世帯5160円に減り事業費は約29億5000万円に圧縮され、先議ではなく予算特別委員会で審議されたが、1度目の際と同じ疑問が集中。もちろん鈴木知事の答弁も「壊れたレコード」(前出野党道議)のごとく、同じ話がリピートされた。
3度目の配布は今年1月の臨時道議会で提案されたもの。「物価高対策特別支援事業」と多少名前は変わったものの、約28億6000万円の予算がつきコメと牛乳で合わせて5240円相当分を配布するとした。臨時会では、与党を含む各会派もまた同じ疑問を指摘したが、壊れたレコードぶりは変わらなかった。
かかる事務経費の分、道民への恩恵は減る
さて、今回のおこめ券が批判を浴びている理由の1つが、発行に際してかかる一連の事務経費や手数料が高額になる、ということ。独自に発行すれば券面のデザインや印刷経費、配布にかかる経費、さらには申し込みや周知のためのチラシ・リーフレットなども必要となり、当然コストがかかる。
券面を独自に印刷せず、たとえばJAグループの全農などが発行する券を購入・配布する場合も、500円の券の場合60円が手数料などとして全農に徴収され、利用できる金額が440円になってしまう。こうした批判はすでに周知の通りだ。
本稿執筆に際し、この事業を所管する経済部経済企画局経済企画課に対し、過去3回の事業においてそれぞれの事業費の中で何にいくらの経費がかかったのかの内訳を問い合わせた。だが同課の担当者は「内訳は一般に公開していない。事業終了後の道議会決算特別委員会でも内訳については委員(道議)に公開していない」とゼロ回答。誤解を恐れずに言えば、血税を投じている意識がバラまいている側にゼロということだ。
当然ながら道議会でも過去3度、配布案が上程されるたびに事務経費や手数料について指摘を受けてきた。事業規模、予算を決めるには前提となる経費の算定がある。3度目の配布を議決した今年1月の臨時議会ではその一端が鈴木知事の答弁で明かされており「事業費総額の約28億6000万円のうち、商品券などの支給品分として約20億4000万円、商品券発行元への手数料などとして約1億4000万円、委託業務に係る受託者事務経費として約6億8000万円と算定した」という。経費率でいえば28.6%もの高額。物価高騰の折で一概に当てはめられるかはわからないが、3度のバラマキで合計約102億6200万円を投じ、そのうち29億円が経費ということになる。
地方自治体の政策にくわしい官僚は「そもそも商品券を配るだけの事業。換金されることも当然ある。言い訳として北海道の農産品の消費拡大につながるというのはこじつけ。全世帯に送る『プッシュ型』ではなく支給を申請する形のため、そのPRコストもかかり政策効果もその経費分小さくなる。まさに無駄づかいの先駆者と言っていい」と呆れる。
国の物価高騰対策を裏付ける予算案が成立したことで今後、道を始めとする自治体もその使い道を新たに国へ申請した上で事業を立てることになる。道議会関係者によれば「今回の交付金は新たなメニューも加わっており、最速で来年2月下旬の第1回定例会に先議として上程される見込み」という。「おこめ券の先駆者」として、4度目のバラマキが行われるかどうかを注視したい。
なお当社では12月16日、これまで述べた過去3度の道のおこめ・牛乳券配布事業について、その事務経費の精細な内訳を情報公開制度により提供するよう道に申請した。開示された際は本稿あるいは当サイト別稿にてすべてを公開する。


