【独占・無料公開】政府与党は「大きな政治をすべき」… #国民民主党 のキーマン #榛葉賀津也 幹事長が #財界さっぽろ に語った“宙づり国会”の舞台ウラ【4月号先出し】

国民民主党幹事長の榛葉賀津也氏
昨秋の衆院選で議席を4倍増に伸ばし、一躍スポットライトを浴びた国民民主党。代表の玉木雄一郎氏を先頭に、一貫して「手取りを増やす」政策が若者世代の支持を集めている。その中で党内外の折衝に八面六臂の活躍をみせているのが、党幹事長の榛葉賀津也氏だ。財界さっぽろでは2月27日午後、榛葉氏に単独インタビューを実施。その中から一部を抜粋して掲載する。
大阪での教育無償化は評価が分かれている
――2月26日、所得減税のいわゆる「103万円の壁」について、最終の与党案は課税最低限を160万円にした上で、非課税枠を上乗せする年収の範囲を850万円まで段階的に広げるというものでした。国民民主党はこれに合意せず、与党提出の新年度予算案には反対すると表明しました。
榛葉 : われわれは一貫して所得制限のない178万円までの引き上げを求めてきました。だがこの与党案は30年ぶりに103万円の壁が動いた一方、結果的に“セコい”というか、趣旨の違った壁になってしまった。現役世代の手取りを増やすために壁を動かそうというのが、低所得者をどう守るかという話に変えられてしまった。壁が“階段”になり、4枚も5枚も壁ができてきました。障害物競争かと言いたいです。
――しかも、年収200万円超の人にとっては2年間の時限的措置。
榛葉 : 200万円以下は恒久減税だけど、それ以外の所得層は2万円で、一番多いところでも3万円です。これは基礎控除ですから。税の理念として、生きていくためのコストには税金をかけないというものですよ。だから本来は、所得に関係なくやらないといけないんです。それを細かく分断してきた。われわれとしては、とても飲めるものではなかった。
――この与党案は実質的に公明党案とされています。この間、公明とも水面下で協議をされていたのでは。
榛葉 : 公明の税調や政調、そして西田(実仁)幹事長のレベルでは、ほとんど最後の方まで(われわれと)同じ方向を向いていました。政策として、手取りを増やさないといけないという認識を、共有していたわけです。今まで自民と二人三脚でやってきた結果、昨年秋の衆議院選挙に惨敗でした。大阪で全敗し、代表(埼玉14区で石井啓一氏が国民の鈴木氏に敗北)も落選しているわけですから。与党には民意が無かったということです。今、われわれの元には公明の支援者さんからたくさんのメッセージが届いています。「大衆とともにここまでやってきたけど、今、大衆とともに政治やっているのは国民民主党だ」と。
公明も最後は連立政権の枠組みの中で、これ以上強気に出られなかったのでしょう。でもここで“大きな政治”をすべきだった。ここで勇気を持って大きく変えていけば、また違う局面になったと思います。

――与党は日本維新の会と教育無償化で合意に至ったことから、103万円の壁については妥協する必要がなくなった格好です。
榛葉 : 教育無償化と引き換えに、所得減税やガソリン税の暫定税率廃止という手取りを増やす政策を反故にした。私は政策としても政治論としても間違っていると思いますし、これは大きな失敗だと思っています。維新にとっても、後に必ず「あの時やっておけば」と思うでしょう。
それに自公・維新との合意文書を見ると、教育無償化や社会保障改革を具体的にどうするかという話ではなく、総花的なものだと思います。何がポイントかよくわからない。あたかも「3党連立政権」下での合意内容に見える。社会保障改革で4兆円を削減する、というけれどその中身もさっぱりわからない。やると約束はしたけど、中身は全くわかりません。2カ月後には大阪万博があるので、維新とすれば政策論というより政治的に目の前の予算案をどう通すか、という観点から合意をした。私にはそう見えます。
――教育無償化は大阪府内で先行していますね。
榛葉 : 高校授業料の無償化ということですが、これが大阪で本当に成功しているのか評価が分かれているものですよね。公立高校がどんどん定員割れして厳しい状況になっている。強い公立高校は残るという競争の原理が持ち込まれたわけです。私は地方の伝統ある公立高校にサバイバルゲームをさせるべきではないと思う。その地域との深い絆や歴史、文化、伝統が紡がれているわけですし。いわば公立高校を淘汰する政策が、本当に正しいことなのか。それに私立高校にも補助金が入る分、設備投資をせざるを得なくなって授業料にはね返ります。それが今後はどうなるのか。さまざまな詰めがなされていない印象です。数合わせ、国民のための政策合意ではなく内輪の論理、政府与党の論理の数合わせの合意、というふうに言わざるを得ません。
――文部科学省の審議会では、私立大学のトップが委員として国立大学の授業料は今の3倍の年間150万円にすべきだといった意見まで出ています(注・維新共同代表の前原誠司氏は自身のX(旧Twitter)で、次は制度設計をした上で大学無償化に取り組むと投稿:参考リンク)。
榛葉 : これも決められた小さな予算枠の中での足し算引き算ではないのか、ということに尽きます。ただ、われわれはあきらめません。今回はダメでしたけど、103万円の壁を恒久的に178万円まで引き上げなければならない。手取りを増やさないと国民は生きていけないですし、日本経済は元気にならないんです。今やらなければならないのは、30年ぶりにデフレから脱却して日本経済を強くする、大きなチャンスが来ている。そのビッグウェーブに乗らない手はないんです。
国民民主党の政策は北海道にこそ“刺さる”

――3党合意が成らず公約の実現には至らなかったものの、壁は動き、さらに目指す壁もあるという状況です。次期参院選に向けては追い風なのでは。
榛葉 : われわれの目標は、選挙に勝つことではないんです。選挙に勝つことは手段であって、今の人数では力が足りないから、政策実現のためにもっと力を貸してほしいということです。
――次期参院選では候補擁立の検討が進んでいます(注・国民道連が党本部と調整していた林佳奈子氏はインタビュー後に擁立を断念)。参院選を通じて道内で訴えていきたいことは。
榛葉 : 北海道の中心は札幌市ですが、広大な北海道内各地で生活されている方々がいます。とくに国防上、海をはさんでロシアに面した地域で生活されている方々の暮らしは重要です。
――離農や農地の集約、漁業の不振などで、沿岸部に人の気配がない地域もあります。
榛葉 : 国防とは軍事、つまり防衛省、自衛隊だけでできるものではなく、そこに人が住んでその土地を守り、地域の営みを続けることです。だから国防と経済はコインの裏表。人が住まなくなれば土地が荒れ、守ることもできなくなる。ほとんどの場合、そうした地域で頑張っている方々は、酪農や漁業など1次産業の方々です。
そうした方々をどう支えていくか。それはその地域の経済を支えることです。われわれが訴えてきた103万円の壁やガソリン税の問題は、北海道のみなさんにこそ一番“刺さる”政策と言っても過言ではない。あくまでも手取りを増やす、給料を上げる、可処分所得を増やす、そして地域経済を回していく、そういった政策をしっかり訴えていく。そしてそこに住み続け、家族を養えて、子どもも望めば育てられるよう、所得の補償を国の責任、国防の観点からもしっかり手当てしていく。そこを訴えていきます。

3月14日に財さつJP&デジタル版、15日に道内書店・コンビニエンスストアでそれぞれ更新・発売する財界さっぽろ2025年4月号では、本稿内容のほか、参院選への戦略や政策実現へのあくなき意欲などについて大いに語っているので、こちらもどうぞご覧ください。