【独自・無料公開】国民民主党が林佳奈子・帯広市議の参院選擁立を“断念”した原因は「統一教会」か

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林佳奈子氏

 国民民主党が今夏の参院選に北海道選挙区での擁立を目指していた帯広市議会議員・林佳奈子氏。それが一転「断念する方針」との一報があったのは、3月1日夜のこと。

 後追いを含め各社の報道では「党本部から公認が得られない見通しとなった」とされる。

 なぜ公認が出ないのか。実は、林氏が過去に旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)とかかわりを持っていたことが「原因の1つ」だと複数の関係者が明かす。

「2月26日に、国民の党本部が参院の新人候補向けの勉強会を開催。林氏も候補になる前提で参加した。だがその際のやりとりで、林氏が過去に旧統一教会の関連団体のイベントに出席したことがある、という話が本人の口から党本部の担当者に伝わった」(国民関係者)

 旧統一教会と自民党などの保守系国会議員との密接な関係が明らかになったのは、2022年7月の参院選最終盤、元首相の安倍晋三氏が奈良県内で凶弾に倒れて以後のこと。霊感商法に代表される信者からの金銭収奪で社会問題化していた旧統一教会が、選挙時の電話がけやビラ配りを信者が手伝い、見返りに議員が同団体のイベントへ出席するなど、政界との密接な関係が問題視された。道内では釧路市や帯広市に拠点を設け、長年活動していることが知られてきた。

 地元政界関係者は「かつて十勝管内にあった土着の新興宗教が、曲折を経て旧統一教会に吸収された過去があり、その当時からの信者を含め一定程度、根を張っている。ほかの地域同様に地方議員の支援などを通じ、保守層へ巧みに浸透してきた」と打ち明ける。

 その中で林氏もかかわりを持ったと見られ、2022年9月に北海道新聞帯広報道部が帯広市議全員に行ったアンケート取材では「過去複数回、関連団体のイベントに出席していた」と回答していた。

 また林氏には、政治資金収支報告書に関する問題も発覚したという。別の政界関係者の話。

「23年当時衆院議員だった中川郁子氏の資金管理団体「なでしこの会」の報告書には、林氏の後援会へ10万円を寄付したことが記載されている。この年は市議選があったため、中川氏から見舞い金として交付したようだが、同年の林氏の報告書がまだ提出されていない。提出期限に間に合っていないか、意図的に提出していないのかは不明だ。統一教会もそうだが、1つひとつの問題は、事実とはいえ過去のことであったり小さなミスではあるが、その積み重ねで信頼関係を損ねたのではないか」

 林氏は1969年幕別町生まれ。帯広柏葉高校、武蔵女子短期大学卒業後、シンガポール航空の客室乗務員、専門学校教員などを経て、19年帯広市議選に保守系無所属候補として出馬し初当選。その後追加公認を受けて自民党入りした。23年市議選は自民公認で出馬して再選を果たし、現在市議会経済文教委員長を務めている。シングルマザーで、離れて暮らす娘が1人いる。

 その林氏の参院出馬の意向が明らかになったのは、今年1月22日のことだ。

 ある帯広市議は「国民の北海道総支部連合会会長代行を務め、同じ帯広市議でもある稗貫秀次氏が白羽の矢を立てた。稗貫氏は国民の支持母体の1つである電力総連の組織内候補。元市議会議長で『ばんえい競馬』ナンバーワンの大馬主でもある小森唯永氏も擁立をバックアップしたようだ」と解説する。

 林氏が所属していた自民帯広支部は、参院道選挙区に現職の高橋はるみ氏と岩本剛人氏の2人が公認済みだったこともあり、全会一致で林氏を除名処分とした。

 その後、国民道連は入党手続きを進めつつ、立憲民主党、連合北海道、北海道農民連盟との4者協議を経て2月上旬にも正式に候補とする予定だった。だが正式発表や記者会見は待てど暮らせど開かれず、政界関係者の中には訝る向きが出始めていたもの。

 2月27日午後、当誌財界さっぽろは国民幹事長の榛葉賀津也氏に単独インタビューを実施したが、その時点では榛葉氏は「(林氏は)間もなく候補予定者となる」と回答していた。そこからわずか2日、急転直下の出来事となった。

 ある道内労組幹部は「林氏の統一教会との関係は報道にも載っている、地元では知られている話だった。“身体検査”が甘かったのでは、としか言いようがない」と指摘する。

 その国民道連は、週明けにも林氏本人を含めた会合を持つという。林氏の今後の扱いを協議する模様だが、党本部の意向がはっきりしている以上、擁立断念は避けられない情勢だ。

 他方、立憲民主道連代表の逢坂誠二氏はこの件を受け、3月2日朝に自身のSNSを更新。「参院選に向けたの調整で(元衆院議員の)石川知裕氏が議論の俎上に上がっています。国民民主道連からは自治体議員の名前も上がっていましたが、報道によればその方の擁立を断念したとのことです。今後も協議を進めますが、選挙は勝たなければなりません。知名度、実績などを考慮すれば、私は石川知裕さんが最適だと考えています」として、同党現職で再選を目指す勝部賢志氏に加え、昨年の衆院選で比例単独候補として戦った石川氏の擁立を目指す考えを示した。

 だが国民道連幹部は「林氏のほかにも公募に応じた候補者はおり、あくまで自前候補を擁立する」との姿勢を堅持する。参院選本選まで残り4カ月弱、4者協議による2人目の候補の行方は、混迷の度を増している。

 なお本稿掲載に先立ち、当サイトでは林氏に対し、統一教会との関係などについて質問事項を送付した。回答があり次第追記する。

 3月14日に財さつJP&デジタル版、15日に道内書店・コンビニエンスストアでそれぞれ更新・発売の財界さっぽろ2025年4月号では、前出の通り与野党協議のキーマンである榛葉氏の単独インタビューを掲載。“103万円の壁”やガソリン税暫定税率など、公約実現に向けた丁々発止の裏側や、知られざる北海道との縁などを大いに語っているので、乞う御期待。

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