【不定期コラム・編集長のつぶやき】第6回・無知の知

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 昨夜、中居正広さんのトラブルをめぐり、フジテレビと親会社の経営陣による2度目の会見が開かれました。一夜明け、同局サイドが誠実に対応したのかはもちろんですが、質問する記者側の姿勢も話題になっています。

 私が思う記者に必要な資質は「感謝」「謙虚さ」「愛嬌」の3つをあげます。これは、どんな仕事にも通じるかもしれません。

 取材対象の方は忙しい中、自分のために貴重な時間を割いていることを忘れてはなりません。中には「会うのが当たり前」というように、勘違いしている記者もいます。

 「謙虚さ」は「素直さ」とも言い換えられるでしょう。相手の話に耳を傾けて、決して知ったかぶりはしないことです。その世界の専門家、プロですから、すぐに見透かされてしまいます。「無知の知」という言葉をご存知でしょうか。この仕事では日々、いかに自分自身が世の中、物事を知らないのかを痛感します。しかし、知らないことが恥ではありません。何も知らないことを自覚し、もっと色んなことを知りたいから多くの人に会いに行く。ある意味、記者は生涯勉強の仕事です。その心構えは記者経験が1年目だろうが、知識が蓄積されている10年、20年目でも変わりません。同じ取材現場は一度たりともないので、何年やっても飽きることがない刺激的な職種と言えます。

 最後は「愛嬌」です。これが1番難しいかもしれません。明確な基準はないですが、とくに雑誌記者の場合は、相手からつまらない人間だと思われる方は不向きです。愛嬌の源泉はそれまでの人生経験と考えます。体が滲み出るものなので、持てと言われて持てるものではないのかなと。年配者に可愛がられる記者は成長し、大成します。ただ、へりくだり、ゴマをすれという意味ではありません。キーパーソンから放って置けない存在になることが大切です。たとえば、若いうちはこんな感じです。

「会っても大した情報も持っていないけど、なんか気になる。飲みにでも誘ってみようかな」という感じです。

 果たしてフジテレビの会見を見ていて、この3つの素養を兼ね備えた記者がどれほどいたでしょうか。会見場に怒号が飛び交う。そして語気を強め、上から目線の生意気な質問に終始する。「会見を開いてていただきありがとうございました」という感謝の言葉もない。新聞、テレビ、雑誌などオールドメディアに厳しい視線が注がれる中で、自らの首を絞めている言動と指摘せざるを得ません。質問者がどれほど偉いのか。業界の端くれの一人として、いきがっている一部の記者たちの姿にがっかりしました。

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