【独自・無料公開】10/27投開票・衆院選北海道内“最深”情勢〈1〉1区・2区・3区【財界さっぽろ編集部総力取材】

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札幌時計台

 財さつJPでは、公示中の第50回衆議院総選挙について、4回に分け、北海道内12の小選挙区と比例道ブロックの終盤情勢をお届けする。初回の今回は1区、2区、3区について。以下は文中すべて敬称略。顔写真や各候補の訴えは公式WebサイトやSNSなどのリンクを用意したのでそちらを確認されたい。現在行われている期日前投票、27日の投票日に向けて参考にしてほしい。

(文中の政党略称=自民→自由民主党、立憲→立憲民主党、維新→日本維新の会、公明→公明党、共産→日本共産党、国民→国民民主党、社民→社民党、れいわ→れいわ新選組、参政→参政党、保守→日本保守党、大地→新党大地)

〈1区〉=札幌市中央区・南区・北区および西区の一部

道下 大樹(みちした・だいき)1975年12月24日 前職(2期) 立憲公認
党国対副委員長、元道議会議員、元衆院議員秘書
https://michishita-daiki.com/

加藤 貴弘(かとう・たかひろ)1983年1月22日 新人 自民公認、公明・大地推薦
元道議会議員
https://takahirokato.jp/

小林 悟(こばやし・さとる)1964年09月25日 新人 維新公認
医師、医療法人理事長
https://go2senkyo.com/seijika/181895

千葉 尚子(ちば・なおこ)1980年5月8日 新人 共産公認
党豊平・清田・南地区常任委員、元札幌市議
https://chibanaoko.com/

田中 義人(たなか・よしひと)1972年5月18日 新人 参政公認
元倶知安町議
https://tanakay.net/

「立憲現職の道下大樹と自民新人の加藤貴弘は、コアな支援者層がはっきりと異なる。それを如実に表していたのが10月15日の第一声だった」(メディア関係者)

 道庁赤れんが庁舎東門前で行った立憲の道下街宣では高齢者が、西区の地下鉄琴似駅前で行った自民の加藤のつじ立ちには若い層の姿が多く目立った。

 3期目を目指す道下は、社会党の重鎮・横路孝弘の元秘書・民主党から西区の道議(3期)に転じた。道下は横路が政界を勇退した2017年に後継者となり、1区の議席を守り続けている。横路の支援者の多くがそのまま道下を熱心に応援している。

 しかし、昨年2月に横路が、同7月には後援会の重鎮だった元連合北海道会長の兼古哲郎が、今年に入っても、2月には元道議会副議長で横路の腹心だった西本美嗣が、10月には元日本鉄道産業労働組合総連合 委員長の村吉勇次郎が鬼籍に入った。道下は大きな後ろ盾を次々となくし、今回の選挙は道下自身にとって試金石となる。

 一方、明るい材料は、西本に変わり、連合後援会長に就いた元札幌市長の上田文雄の存在だ。上田は横路と昵懇の仲にあり、道下とは中央大学法学部の同窓。上田の自宅も1区内にある。退任はしたものの、市民団体「市民の風・北海道」の共同代表でもあった。

「市長退任後も政界に影響力を持ち、野党共闘の実現を呼びかけられる数少ない存在。体調を崩していた時期もあったが、上田さんは第一声の応援に駆けつけた。上田さんの神通力に期待したいが……」(地元立憲関係者)

 対する自民の加藤は前道議(西区・2期)で現在41歳。これまで1区の自民候補は衆院議員を2期務めた船橋利実だった。初出馬した12年の衆院選では民主党(当時)への逆風もあり、小選挙区で横路に唯一、黒星をつけた。しかし道下と2度目の対決となった21年の選挙では比例復活もかなわず敗北。その後、22年に参院選の候補に転じ、見事当選した。

 船橋がもともと北見市選出の道議だったということもあり、「次の選挙では、1区にゆかりのある人を担ぎたい」というのは地元自民関係者の共通認識だった。昨夏に行われた公募で、選ばれたのが1区内の西区の道議である加藤だった。

「そのため、地元自民関係者の士気は高い」(自民道連関係者)

 加藤は人脈が豊富だ。とくに、ファイターズ、ススキノ関連の関係者とのパイプが太い。

「加藤本人は街宣で『母子家庭で子ども時代から新聞配達をしていて、社会人になってからはパンの製造・販売会社を設立した。地盤、看板はないが……』と情に訴えている。もともとの地盤である西区とススキノ関係者の多い中央区以外の地域での支持をどこまで広げられるか」(地元自民関係者)

 他党では、共産が元札幌市議の千葉尚子、維新は小林悟、参政は元倶知安町議の田中義人が支持を訴える。

 告示後の各メディアの世論調査では「加藤が道下に迫っている」という論調が目立った。

「比例復活の位置につけることができるのか、はたまた道下を交わすことができるのか。陣営も若い人が多く、世論調査の結果とともに活気にあふれている。終盤、息切れしなければいいが」(加藤陣営関係者)

 一方で「道下陣営は相当な危機感を抱いている。それに対し、本人の性格というのがあるが、悲壮感をもっと出してもいいのではないか」(地元立憲関係者)という声もなくはない。

 しかし、ここにきて、加藤陣営を悩ますのは、自民党の今回の「政治とカネ」の問題。〝ボディーブロー〟のように利いてくる。
「選挙戦が進むにつれ、自民に対する有権者からの〝逆風〟が強くなってきている。加藤本人はまったく関係者ないのに、新人候補にとってはつらすぎる」との声が地元自民関係者から漏れる。

〈2区〉=札幌市北区の一部・東区

松木 謙公(まつき・けんこう)1959年2月22日 前職(6期) 立憲公認、社民道連・れいわ(山本太郎代表が個人で)推薦
党幹事長代理(国対担当)、元農林水産政務官、元衆院議員秘書
https://kenko-matsuki.com/

高橋 祐介(たかはし・ゆうすけ)1980年9月12日 前職(1期) 自民公認、公明・大地推薦
元衆院議員秘書、元マーケティング会社社員
https://www.2ku-takahashi.net/

山崎 泉(やまざき・いずみ)1973年04月18日 新人 維新公認
元道議会議員、元帯広市議会議員
https://www.yamazaki-izumi.com/

宮内 史織(みやうち・しおり)1992年6月17日 新人 共産公認
党道常任委員、道平和運動部長
https://miyauchishiori.hp.peraichi.com/

「また職を失ってしまいました。バッジを付けているのはわずかな間で、何の仕事もできませんでした。やりたいことがたくさんあるんです。どうか助けてください!」

 10月15日、衆院選公示後の第一声。比例道ブロック自民前職の高橋祐介は集まった党関係者らを前に開口一番、そう訴えた。

 高橋は、比例道ブロック選出だった堀井学の公職選挙法違反による議員辞職にともない、9月18日に比例復活。前回の衆院選後、実に3年越しの“初当選”となったが、衆院は10月9日に解散。初めての代議士生活は約3週間、国会会期は9日だけだった。

 それでも2区の自民関係者は「良いか悪いかは別として、多くの報道があった。知名度不足がずっと課題だった高橋にもたらされたバッジの効果は大きい」と前向きに話す。

 高橋本人も不完全燃焼であったことを踏まえ、防災に力を入れる党公約のもと、丘珠空港の防災拠点化や医療体制の充実を看板政策に掲げる。

 小選挙区での勝利を悲願とする高橋にとって、どれだけ2区内の自民関係者が“本気”になれるかがカギを握る。

 高橋は前回2021年の衆院選を前に、自民2区支部が行った公募を経て支部長に選出された。だが、この選出の過程でしこりを残した。前回得た約9万票は自民の基礎票に足りておらず、一枚岩になれなかったことを示している。

「一部の地元地方議員が選対への協力を渋ったり、第一声に顔を出さなかったりと、今回も高橋に対する冷淡な態度が目につく」(前出関係者)

「少し緩んでいるのでは」――一方、立憲前職・松木謙公の選対役員を務めてきた古参の労組関係者は、公示前の事務所を訪ねた際、そんな印象を抱いたという。

 21年衆院選で自民・高橋に1万6000票差を付けて大勝した松木。主因は野党共闘の成果で、2区に一定の地盤を持つ共産が候補を取り下げたことにある。だが今回、共産との協議は不調に終わった。

「共産が最後には候補を取り下げるだろう、との期待があったのは事実」(松木陣営関係者)。直前になって戦術の練り直しを迫られた格好だ。

 昨年の道議選で共産は2区内の北区・東区の候補は合わせて2万6000票あまりを獲得。単純に差し引くと、松木は高橋の前回票を下回る。

 前出関係者は「直前になって危機感をあおっても効果は薄い。それでも、共産と離れたことで戻ってくるであろう民間労組の関係者、退職者などを糾合していくしか方法はない」と話す。

 松木の救いは自身の元秘書を含む道議2人、市議5人が一体で能動的に動けること。SNSでの発信も強化しており、無党派層の開拓に力を入れている。

 共産は今年3月に、党道常任委員の宮内史織を擁立。父の聡はかつて衆参両院選や道知事選などに9回出馬した苦労人で、一定の知名度を持つ。自身も日本民主青年同盟北海道委員長を務めるなど、エリート街道を歩む。共産の悲願である比例道ブロックでの議席獲得に貢献したい考えだ。

 維新は山崎泉が3度目の挑戦。昨年の統一地方選で2区内に道議1人、市議2人が誕生するなど、地道に活動を続けてきた成果が出てきた。ただし道総支部代表だった鈴木宗男が昨秋に離党。今回は大地代表として髙橋の支援に回った。鈴木の秘蔵っ子であった山崎が、鈴木と袂を分かった影響は大きい。

 それでも公示直前の10月12日には維新共同代表の大阪府知事・吉村洋文が2区入り。2カ所で街頭演説し聴衆を沸かせた。共産同様に維新は比例での1議席獲得が悲願だが、山崎の比例順位は1区・3区の候補と同じ。

「着実に地盤を広げてきた。惜敗率は身内同士の勝負だが、それが票の掘り起こしにつながる」(維新関係者)と陣営の鼻息は荒い。

 公示後は常に松木がリード、あるいは一歩前に出ているという情勢分析が多い。高橋は24日に選対委員長の小泉進次郎や女性活躍、共生社会担当大臣の三原じゅん子が応援に入るなど、必至のテコ入れを行う予定だ。

〈3区〉=札幌市白石区の一部・豊平区・清田区

高木 宏壽(たかぎ・ひろひさ)1960年4月9日 前職(3期) 自民公認、公明推薦
復興副大臣、元内閣府政務官、元道議会議員
https://hirohisa-takagi.jp/

荒井 優(あらい・ゆたか)1975年2月28日 前職(1期) 立憲公認
党副幹事長、党人材局長、学校法人副理事長、元ソフトバンク社員
https://araiyutaka.jp/

鳥越 良孝(とりこし・よしたか)1956年09月07日 新人 維新公認
元道議、元北見市議、元国務大臣秘書
https://torikoshi.net/

伊藤 理智子(いとう・りちこ)1961年6月28日 新人 共産公認
党道委員、元札幌市議
https://jcphokkaido3.blogspot.com/

増田 健治(ますだ・けんじ)1954年1月13日 新人 無所属
鍼灸院院長
※Webサイト・SNSなど無し

 小選挙区制導入以降、候補者は変われども3区は超激戦区だ。今回も、自民・高木宏壽と立憲・荒井優が鎬を削っている。

 高木と、荒井の父・聰は過去3回戦った。2014年、17年の選挙では高木が勝利し、聰が比例復活。17年は聰が勝利し、高木は全国最多得票での落選を喫した。

 21年の選挙では、父の地盤を受け継いで初挑戦した荒井が優勢とみられていた。そんな中、浪人中の高木は細かく地元を回った。参院議員・高橋はるみや岩本剛人らとの連携強化もあり、ふたを開ければ僅差ながらも豊平区、白石区、清田区とも荒井を上回り、当選した。

 比例復活した荒井はその悔しさを抱えながら、新人議員として活動してきた。札幌新陽高校校長としての経験から教育分野を得意とするが、超党派のライドシェア勉強会やサウナ振興議連の事務局長なども務める。地元で月1回ペースでかわら版を配布し、大学生や若手経営者との交流も図っている。

 一方、国政に戻った高木は23年に復興副大臣に就任した。自身が会長を務める札連のセミナーには、元経済安全保障大臣・高市早苗を招き、自身のセミナーの講師は総理・石破茂が務めた。先に行われた総裁選では、当選同期の小林鷹之を応援。つかず離れず、党内での人間関係づくりでうまく立ち回ってきた。

 公示翌日の10月16日には、自民政調会長・小野寺五典が高木の個人演説会に登壇。熱弁をふるった。

「高木宏壽さんとは、同い年で仲良くさせてもらっています。復興副大臣として、私の地元・気仙沼の担当をしていただいたご恩もあります。物価高対応の補正予算を作る上でも、宏壽さんは必要不可欠な人材。当選してもらわなければ困るんです」

 第一声には、前回同様、北海道知事・鈴木直道が駆けつけた。他にも期間中には石破や、女性担当大臣・三原じゅん子、選対委員長・小泉進次郎など、〝大物〟が続々と選挙区に入っている。

 現状では、荒井が高木をわずかに上回っているとみられる。しかし、高木陣営は「組織が一丸となって追い上げている。必ず逆転できる」と意気込む。

 また、折からの自民への逆風もあるが、荒井陣営は「厳しい戦い」だと気を引き締めている。その最大の要因は、共産から元札幌市議の伊藤理智子が立候補していること。

「共産は基礎票として2万票近く持っている。前回は共産が出馬を取り下げた状態で負けています。全く楽観はできませんし、現状でも下回っていると思って必死にやっていきます」(荒井陣営関係者)

 3区では、札幌市白石区の北東白石連合町内会が5区に区割り変更となった。該当地域の有権者は約1万5000人。前回、約4400票差で決着がついていることを鑑みると、影響は小さくない。自民・立憲陣営ともに「どう転ぶか読めない」と渋い顔を浮かべている。

 維新は鳥越良孝が初挑戦。北見市議4期と北見市選出の道議1期を務めたが、3区内では知名度に欠ける。ほかには、鍼灸院院長の増田健治が無所属で立候補している。

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