札幌ドーム23年度は大赤字、5カ年収支計画の〝真っ赤な嘘〟

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新たに「大和ハウス プレミストドーム」との看板が掲げられた札幌ドーム

 新たに「大和ハウス・プレミストドーム」に生まれ変わった札幌ドーム。札幌市は財政的な〝手厚い〟支援を行うが、想定よりも経営状況は厳しかった。社長人事や周辺施設を巻き込んだ今後の札幌ドームの姿とは。

複数のパターンから石川副市長が

「ようやくネーミングライツが決まったことはよかったものの、昨年度の決算は大幅赤字だった。収支の見通しをシミュレーションした5カ年収支計画を市が公表しているが、その想定よりもはるかに膨らんでいた。秋元克広市長も定例記者会見で『(計画と)現実が乖離している』と説明したくらいだ。そもそも『5カ年収支計画に物申したい』と思っている関係者は市側にも、札幌ドーム側にも少なからずいる」
 内情を知る関係者はこう打ち明ける。
 札幌ドーム(大和ハウス プレミストドーム)は札幌市が所有し、運営は第3セクターの株式会社・札幌ドームが指定管理者として担っている。
 5カ年収支計画とは、ファイターズ撤退を受けて、市が23年度から27年度までの収支見通しをシミュレーションしたもの。23年度は赤字を想定したものの、以降は収益が安定し、5年間トータルでは900万円の黒字になるとした。
 6月21日、札幌ドームの株主総会が開催された。23年度の決算が公表され、本業の収入と損失を示す営業損益は6億5100万円の赤字で過去最大。会計処理に伴う損失が約2億円生じたため、実質的な赤字は約4億5000万円だった。 
 年間60試合ほど行われたファイターズ戦がなくなったことで、23年度のイベント開催日数は22年度より26日少ない98日にとどまった。
 またアリーナを暗幕で区切り、入場者数を約2万人規模に縮小する「新コンサートモード」は市が10億円投じて整備したが、利用はわずか3日間だけだった。
 ネーミングライツが決まったのは今年度に入ってからだったため、当然、23年度決算には含まれていない。
 赤字額を見ると、市の5カ年計画で示した23年度の2億9400万円という赤字の試算を大きく超えた。 
 これに対し、批判的な声は少なくなかった。道内メディアも夕方の情報番組で取り上げた。結局、市は「5年トータルでの黒字化は困難となる見通し。今後計画を見直す可能性がある」とした。
 札幌ドームの山川広行社長は6月21日の株主総会後、報道陣の取材に対し、「(赤字幅が膨らんだことについて)我々がやろうとしたことが思うように進まなかったのは問題だが、見通しが甘かったというのは抵抗がある」と語った。
 実は、5カ年収支計画について、ある疑念がある。
「5年間トータルの売り上げの見通しではなく、黒字になるようにシミュレーションしたものだ」と内情を知る関係者は証言する。
 5カ年収支計画は22年に公表されたが、市側と札幌ドーム側が協議して作成されたものだ。
 両者が協議する過程で、公表した黒字になるシミュレーションのほかに、トータルで赤字が小さかったり、大きくなったりするものなど、いくつかのパターンがあったという。
 当時を知る関係者の話。
「どのパターンを公表するかで議論になった際、最終決定権は当然、秋元市長にあったが、いくつかのパターンから黒字のシミュレーションを公表することを選んだのはスポーツ局を所管する石川敏也副市長でした。当時、ファイターズが出ていったことを責められたくない。ファイターズがいなくても黒字化にできるということを示したかったように思います。しかし初年度(23年度)の赤字幅が大幅に膨れあがったことを考えると、〝素直〟に5年トータルで赤字になるシミュレーションを公表したほうが良かったのではないか」
 株式会社・札幌ドームは、今回の赤字を約22億円あった内部留保から補てんした。これまで札幌ドームは契約上、市から指定管理費を受け取ってはいないが、市、ドームに批判的な見方としては「今後も赤字が続くと、市はドームに税金を投入するのではないか」というものがある。
 しかし、秋元市長は記者会見などで「そのつもりはない」と否定している。
 一方で、24年度の札幌ドームは順調のようだ。何よりも、ネーミングライツが決まった。大和ハウスとの契約期間は今年8月1日から28年までの4年契約で、金額は非公表ながら札幌ドームが希望していた年2億5000万円とみられる。
 肝心のイベント開催日数について、今年度は123日を見込む。ファイターズ撤退前とほぼ変わらない。

来年度以降も新たな補助制度を?

 イベント開催について、「市の支援が手厚いのではないか」(市役所関係者)との声がある。
 1つがアマチュアのスポーツ大会などへの補助金だ。これは市民利用を促進させる狙いもある。
 スポーツ大会やコンサートなど、大規模なイベントの1日の借り上げの基本料金は約850万円。市はこれまで補助対象日数を決め、使用料の9割を補助してきた。対象日数を超えた場合、札幌ドーム自体が独自の減免措置として利用者の1割負担を維持してきた。
 22年度は対象日数を10日分に拡大。23年度はさらに支援を拡充し、市は補助金支給をドームとの折半にし、対象日数を20日分に拡大した。市の支出額も22年度の2500万円から23年度は8400万円になった。24年度も23年度以上の予算がついた。
 市の共催イベントにも補助金が出ている。子どもたちを対象としたスポーツ体験イベント「チャレンジスポーツパーク」を23年12月に開催した。
 また別項でも触れているが市は19年のラグビーW杯の日本大会を機に、競技の普及啓発に力を入れる。23年度は「みるスポーツ推進費」から補助金を出した。
 昨年度はこれらの補助金の合計が2000万円弱で、「アマチュアスポーツへの補助を含むこれらは税金投入ではないのか」(市役所関係者)との指摘もある。
 市の担当者は「札幌ドームへの補助でなく、あくまでもアマチュア大会などの主催者側に対する優遇として捉えています。今後も拡大させていく可能性はあります」と語る。
 このほか、市スポーツ局では、24年度からドームの新規イベントを誘致するため、「札幌ドーム活用促進費」をもうけた。初めて開催するイベントなどに補助金を出すというものだ。今夏に行われたHTBの「真夏の汗激‼フェス 」や今秋開催の「道新・秋華火」などが対象事業だ。
 その原資は一般財源ではなく、スポーツ振興基金から工面され、24年度は6000万円の予算がついた。一イベントに対して、補助の上限は1000万円だ。
 この事業については「山川社長自らがテレビ局のイベント事業部に向けて営業をかけている」(マスコミ関係者)という。
 市が積み立ててきたスポーツ振興基金の23年度末時点の残高は約24億円。この中にはドーム自体のこれまでの利益も積み立てられている。その残高は12億5000万円。
 基金全体としてはこれまでウインタースポーツ普及振興などに活用されてきたが、ドームが積み立てたものは、施設内の保全費に活用が限られてきた。今回のようなイベント開催費の補助は初めてとなる。
「この補助は、あくまでも札幌ドームでの新たなイベント開催発掘が目的になります。市としては同じイベントを札幌ドームで2回、3回と継続開催してもらいたいという考えを持っています」と市の担当者は説明する。
「今回の『活用促進費』を見ても、補助がないなら2回目の実施はしないと考える事業者もいるだろう。施策を打つのはいいが、その内容の荒さから、ドームを黒字化させるためを目的とした補助に見えてしまう。そういった観点から来年度以降も、新たな補助制度が施行されるかもしれない」(イベント事業関係者)

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