札幌・大倉山ジャンプ競技場デュアル化にまたも暗雲、過去の不安材料を再掲(24年9月号、無料公開)大倉山ジャンプ場の改修見直し浮上、激反対!全日本スキー連盟会長(勝木紀昭)が「それでもデュアル化は必要だ」

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勝木紀昭氏

 札幌市は大倉山ジャンプ競技場のデュアル化を計画している。宮の森ジャンプ場のノーマルヒルを、ラージヒルの大倉山に移設し、大小2本のツイン体制にするというものだ。2030年度の完成を目指していた。

 しかし、市が26年度に予定していたノーマルヒルの設計費3億5800万円の予算計上を見送ったことで、目標年度の実現が困難となった。事業は先送りされ、完成時期は未定。北海道新聞社が5月27日付けの紙面で報じた。

 市はラージヒルの大倉山自体の改修も予定していた。既存のジャンプ台はそもそも、FIS(国際スキー・スノーボード連盟)の基準を満たしておらず、W杯などの国際大会を招致ができなくなってしまうため、猶予期間の28年度までに対策を取らなければならなかった。デュアル化とラージヒル改修を合わせた事業費は計130億円を見込んでいた。ラージヒル自体の改修ついては、27年度着工、28年秋までの完了を目指すスケジュールに変更はない。

 デュアル化の設計費が先送りされた理由として、道新は「巨額事業となることから市は観光面の魅力向上を同時に打ち出し、観光客増による経済効果が大きいとして理解を求める考えだった。市と大倉山の指定管理者の札幌振興公社は展望台改修や、老朽化していたリフトに代わるゴンドラ導入を想定していたが、経済効果の精査や競技団体との調整が不十分」だったためと報じた。

 直近、道新をはじめ、各メディアが「市の財政危機」を指摘している。物価高や社会保障費の増大で、財政は資金不足に陥り、市の推計では5年後に財政調整基金が枯渇する可能性があるという。さらに、市は国際会議などの会場となるMICEの建設など、大型公共施設事業なども控える。

 こうしたことから、ハコモノ投資への批判が高まっており、デュアル化事業にも影響したとみられる。

 デュアル化はそもそも、「30年、34年招致に失敗した冬季五輪の環境整備のための事業」(市役所関係者)だった。計画が浮上した際には、既存施設の跡地活用もないがしろになるなど、「五輪ありきの整備だ」(市議会関係者)と指摘する声は根強かった。

 市が招致断念を発表したのは23年。一方で、デュアル化の事業化を正式に表明したのは24年11月だった。五輪開催がなくなっても事業化が撤回されなかったのは「38年大会以降の招致の可能性を残すため」(地元経済人)と言われている。 こうした背景から、デュアル化に対して、たびたび疑問視する声があがっている。本誌も何度かその現状を報じてきた。その1つが自然環境問題が浮上したときだ。これに対して、その後、市側はノーマルヒルを移設する場所に生息している植物を移植するなどの対策を取れば「デュアル化は可能」と判断した。

 本稿では当時の記事を無料公開する(肩書きなどは当時のまま)。記事内に登場する勝木紀昭氏は現在、全日本、北海道、札幌スキー連盟の会長職を退職しているが、今も道内経済界に一定の影響力を持ち、五輪招致推進派の1人として知られる。当時副市長だった石川敏也氏は現在、札幌スキー連盟の会長に就いている。

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 札幌市は大倉山ジャンプ競技場を大小2本のツイン体制にするデュアル化を検討しているが、それを見直す可能性が浮上。しかし、全日本スキー連盟会長の勝木紀昭氏がデュアル化見直しに断固反対している。

観光資源への投資を優先すべきでは

 札幌市は現在、大倉山ジャンプ競技場の改修計画を検討している。宮の森ジャンプ場のノーマルヒルを、ラージヒルの大倉山に移設し、大小2本のツイン体制(デュアル化)にするというものだ。
 市が2030年の冬季五輪招致に失敗したのは周知の通り。一方で、市は五輪で活用する予定だった施設整備について、改修計画はあれど、なかなか青写真を公表しないなど、担当する市のスポーツ局はどうも歯切れが悪かった。
 既存施設の跡地活用もないがしろになるなど、「五輪ありきの整備だ」(市議会関係者)と指摘する声は根強かった。その矛先は管轄する副市長の石川敏也氏にも向けられた。
 大倉山も、五輪に向けて整備される1つだった。そもそも、FIS(国際スキー・スノーボード連盟)の基準を満たしておらず、W杯などの国際大会を招致ができなくなってしまうため、猶予期間の28年度までに改修しなくてはならない。
 市はデュアル化の整備費に90億円を見込んでおり、ジャンプ台を集約することで、運営の効率化、施設維持管理費の削減などが図れるとした。宮の森も老朽化が進んでおり、それぞれ改修するよりも、何より建設費の圧縮ができるという。
 デュアル化は全日本スキー連盟も支持していた。とくに会長の勝木紀昭氏が〝大賛成〟だった。
 勝木氏は北海道、札幌スキー連盟の会長も兼務。札幌商工会議所副会頭を務めた経験もあり、道内経済界に一定の影響力を持つ。副市長の石川氏とは、石川氏がスポーツ局長を務めていたことや五輪招致担当だったことなどから近しい関係にある。
 しかしながら、デュアル化について、〝整備ありき〟だった市の方針に変化がみられる。市は五輪で活用する予定だった施設整備全体の見直しを図っている。
「今年度中にデュアル化を実施するか否かを含めた整備方針を出したい。仮に、デュアル化をしないとなった場合でも28年度までに大倉山単独での改修を行うことになる」(市の担当部署)
 スキージャンプはフライングヒルの普及で、ジャンプ台の大型化が主流になっている。男子はすでにノーマルヒルの世界大会は五輪だけとなっている。女子も世界大会がラージヒルに移行しつつある。そのため、競技関係者の間では「デュアル化というよりも、そもそもノーマルヒルの新設が時代遅れ」との見方がある。
 大倉山は現在、インバウンド需要で観光客が増えている。施設自体は老朽化が激しく、リフト整備もしくはゴンドラ導入など、今後、施設設備の改修の議論が深まっていく可能性がある。
「観光資源として大倉山への投資を優先したほうがいいのではないか」(市役所関係者)といった声もなくはない。

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大倉山ジャンプ競技場

「環境破壊の問題は次元の違う論点」

 デュアル化に伴うノーマルヒルの移設場所は、大倉山のジャンプ台から見て左側の位置になる。もともとそこにはノーマルヒルより小さなジャンプ台「雪印シャンチェ」が併設されていたこともあった。
 雪印シャンチェ撤廃後は、そこに木々が植えられ、現在は夏になると緑が生い茂る。ノーマルヒル移設工事では、これらを大規模伐採しなくてはならない。野鳥などへの生態系への影響も懸念される。
 市は大倉山の環境調査を今秋までに実施している。
 担当部署はこう説明する。
「調査結果を踏まえ、環境対策を検討しなくてはならない。生態系対策もしっかりと取り組んでいきます。絶滅危惧種への影響が浮上した場合、そこを配慮し工期の延長も考える必要もあります。市としては現時点でデュアル化断念を決定したわけではありません」
 一方で、「五輪もなくなったことで、大規模伐採や生態系に影響を及ぼす工事は今の時代、批判を受ける。環境調査の結果がデュアル化撤回の1つの根拠になるかもしれない」と語る市役所関係者もいる。
 ある事情通は「全日本スキー連盟内にも、デュアル化撤回の可能性について理解を示す関係者はいる」というが、「仮に、本当にデュアル化を見直すとなったら、市の幹部クラスが勝木さんを説得することになるだろう」と推測する。
 勝木氏は7月4日、大倉山で行われた全日本スキー連盟の理事会に出席。勝木氏は、席上で「何としてもデュアル化を実現させなくてはならない」という趣旨の内容を力説したという。
 本誌は勝木氏を直撃。デュアル化の意義を聞いた。
「デュアル化を前向きに検討していく中で、森林伐採などの環境破壊の問題は、個人的には次元の違う論点だと考えています。森林伐採については植林をすればいいのではないか。生態系への懸念も、たとえば、野鳥の巣箱を設置すればいいのではないでしょうか。こうした共生の取り組みを行うことで自然破壊にはつながらないとの認識を持っています」
「デュアル化は選手強化と観光面で大きく役に立つと思っています。大倉山の魅力も最大限上げることができるのではないでしょうか。選手についてはジュニアの育成にも寄与できます。昔はジュニア選手は地方施設から育っていきましたが、今は地方施設自体がなくなっています。大倉山でジュニア選手から国際的な強化選手までを一括で育成することが可能になります」
「観光面では大倉山は夏も飛べるので、観光客には一年中、ノーマル、ラージのジャンプを見てもらうことができるようになります。現時点での整備費90億円が高いということなら、大倉山と宮の森をそれぞれ改修し、競技と観光の両面で寄与できるのかということを問いたいです」 

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ジャンプ台から見た大倉山。デュアル化では写真左側の木々が生い茂る位置にノーマルヒルを移設する

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