【無料公開】本誌記者がいち早く報じた「地域後援会設置強要」問題、長谷川岳氏の当時の回答は?【2021年5月号記事】
6月15日、参院議員の鈴木宗男氏が札幌市内で開いた会合で言及した、長谷川岳氏による「地域後援会設置強要」問題が吹き上がりまたぞろ、炎上している。
長谷川氏が2022年の自身の参院選を前に、道内の町村長に対して国の予算獲得の見返りとして後援会の設立を“要求”し、選挙後には協力しなかった町村長を怒鳴り付けた、というもの。本誌は2021年5月号で、この件をいち早く報じている。以下、当時の記事を掲載後の話も踏まえて改稿した。
21年春、長谷川氏が翌年7月の自身の参院選に向けて準備をしていた当時、ある道内の首長は「通常国会が終わる6月以降に地方を回ろうと思っている。ぜひ後援会づくりに協力してほしい」と氏に頼まれたことを明かしていた。
お願い自体は全道一円を選挙区とする長谷川氏のこと、不思議なことではない。この時期は新型コロナウイルスまん延2年目。ワクチン接種が滞る中、1年延期となった東京五輪の開催是非などをめぐり菅義偉内閣の支持率が低迷。政党支持率も下がり、過去2回は圧倒的な強さでトップ当選していた長谷川氏も、さすがに危機感を覚えたのだろう。
ただし別の見方もある。なぜ“首長に”後援会設立をお願いしたのか。それは19年9月から1年間務めた総務副大臣として力を入れた「光ファイバー事業」にヒントがある。
この事業は正しくは「高度無線環境整備推進事業」といい、次世代の無線通信環境を整備するため、市町村が光ファイバーを僻地に引く際に国が補助するもの。コロナ禍対応で高速通信の重要性が高まり、20年度第2次補正予算で502億円が措置された。
長谷川氏は副大臣退任のギリギリまで道内各地を視察に回って事業を後押ししてきた。コロナの臨時交付金や過疎債を組み合わせれば、1割以下の負担で敷設できるケースもあり、道内だけで106(21年当時)もの市町村がこの事業の恩恵を受けた。
後援会設立を依頼された前出の首長は当時「僻地への敷設は農業や土木工事のICT活用にも効果があり、感謝している。かと言って後援会づくりを自分が主導すれば、政治家への利益誘導につながりかねないのではないか」と困惑したものだ。
当時の記事執筆と前後してほかの複数の首長にも確認したところ、長谷川氏本人と懇意にしている場合は氏が直接電話。そうでもない首長には氏の事務所スタッフからお願いの連絡が来た、という話だった。
道内全域が選挙区といっても、長谷川氏が“入れる”あるいは“強い”エリアと、そうではないエリアとがある。その色分けは単純で、地元要望を受けて動いてくれる自民党衆院議員がいるか、いないかの差だ。
たとえば函館市を中心とする北海道8区は立憲民主党の逢坂誠二氏が君臨しており、自民党は比例復活もできない有様。そうなると、首長らのお願いごとはほかの国会議員などに特段のコネがなければ参院議員、それも行動力のある長谷川氏へ、となる。
実際、8区内の首長は当時「頼まれたら当然断れないが、どうしたら…」とこぼしていた。
逆に自民党の現職がいる選挙区内の首長はあっさりしている。そうした中のある首長は「頼まれたら代議士に相談して決めるというのがルールだと思うし、そう代議士にも伝えた」と語っていた。
それでも光ファイバーのカネが入っていれば、恩義を返すもの。総務副大臣としては旧自治省分野を担当、公用施設の建て替えなどでも世話になった市町村はたくさんある。結果として、長谷川氏の政治資金パーティーには毎回、道内の首長がこぞってパーティー券を買って出席するようになっている(先日の国政報告会記事を参照)。
ちなみにこの光ファイバー事業は、長谷川氏が猛プッシュしてきた世界遺産・知床半島周辺海域での携帯電話基地局整備と同根。半島東側の根室管内羅臼町は漁業者を中心に長谷川氏への要望を行ってきており、それを受けて進めてきた経過がある。現在、反対や見直しの声が高まりつつある中、渦中の氏が語った内容は以下に詳報している。
知床・携帯基地局整備 渦中の長谷川岳が語った“どうしても必要な理由”
後援会の設置要求について長谷川氏は当時、事務所を通じて「市町村に課題などを直接声を聞くため、各地域の自民党支部長や支援者、首長に後援会の設立をお願いしている」と回答。光ファイバー事業との関連は「一切ない」と否定。当時は選挙直前だったこともあり、非常に“ピリついた”回答であった。