【全4話】札幌市がひそかに温める、札幌ドーム生き残りのウルトラシナリオ③「ドーム〝至上主義〟の石川敏也・札幌市副市長」

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石川敏也札幌市副市長

 ファイターズが去った後の札幌ドームは悲惨というしかない。周辺では新アクセスサッポロと新月寒体育館の整備計画があるが、それぞれ課題を抱える。これら施設を巻き込んだ札幌ドーム生き残りの極秘シナリオがあるという。――全4話中の第3話。

アクセスサッポロを軽視している?

 建設計画が進む新アクセスサッポロも、五輪開催時に国際放送センターとして活用することになっていた。同施設は五輪に関係なく、予定通り建設される。
 現在のアクセスサッポロは白石区の流通センター内に位置する。メーンの大展示場は5000平方㍍の広さがあり、自動車の展示即売会場や就活イベントなどに利用されてきた。 
 運営は市の第3セクターの一般財団法人・札幌産業流通振興協会(以下、協会)が行っている。協会のトップである理事長は歴代、副市長クラスが就いてきた。現在の理事長は石川副市長である。
 施設は1984年に開館し、手狭になってきたことなどから、月寒グリーンドームの相性で親しまれていた北海道立産業共進会場の跡地(豊平区)に移設する。

 アクセスサッポロの売り上げは、コロナ禍を除き、年間20億円程度で推移し、健全経営を貫いている。赤字を埋め合わせるための市の補助金などがそもそも入っておらず、修繕費なども運営資金から捻出するなど、独立独歩の経営スタイルでもある。
 経営が安定している理由は、施設の年間稼働率が8割超であることや、貸し施設事業だけではなく、主催事業を展開していることなどがあげられる。
 現施設は当時の建設スキームの関係で、市ではなく、同協会が所有。一方で、新施設は市が所有することになる。
 展示場スペースは現在よりも3倍大きくなり、1万5000平方㍍の広さになる。開業は27年度を目指す。事業規模は約265億円。
 市は、PFI方式(民間の資金や技術を活用し、公共施設の設計・建設・維持管理・運営を行う公共事業の手法)に基づき、事業者選定に向けた総合評価一般競争入札を実施。入札参加条件は設計・建設・工事監理・維持管理を担う複数の事業者で構成するグループとした。
 市は今年3月に入札結果を公表し、事業者は大林組をトップとするグループに決まった。落札企業体は今後、特別目的会社(SPC)を設立し、市と6月ごろに事業契約を結ぶ予定だ。

 一方で、入札の参加条件の中に運営業務が入らなかったことに、一部関係者から疑問の声もあがった。
「新アクセスサッポロのような展示場施設であれば、PFI方式の入札なら、運営業務も入れるのが一般的。建設する段階で、運営企業が決まっているケースも珍しくない」(イベント業界幹部)
 市の担当者は「競争入札の観点から、現施設を運営する協会が、どこかの企業体に入ってしまうと有利に働いてしまう可能性があることなどを加味しました」と説明する。
 一方で、こんな見方も。新施設と札幌ドームの運営を一体化させることを想定し、入札から運営業務を外したのではないかというものだ。

 噂の〝発端〟は石川副市長だったとされる。市役所関係者の話。
「石川副市長は関係者の間で、ドーム至上主義者として知られる。噂が立ったのは2、3年前で、ファイターズが北広島に移転する直前の頃。札幌ドームの経営危機が叫ばれ始めてきた頃と重なる。石川副市長は経営が安定しているアクセスサッポロの売り上げを札幌ドームに補完しようと考えたのではないか。一部関係者の間ではこんな話も流れた。協会を解散し、株式会社・札幌ドームに吸収合併させるというものだ。ドームの従業員は70人弱で、協会は8人。比較的、単純に一体化できるのではないかと考えたのではないか」

 しかしながら、それぞれの運営団体は財団法人と株式会社、また施設目的は産業振興、スポーツ振興であることなどから、合併は簡単にはいかない。
 その後、両施設の一体化構想は噂の域を出なかった。

 市の担当者は新アクセスサッポロの運営事業者について、「22年3月に取りまとめた新展示場整備基本計画の中で、協会が運営に関与することを基本とするとしている」と説明するが、決定方法については「正式にはまだ決まっていません。(非公募の可能性など)協会の運営ノウハウを生かすことが基本線ではありますが、どのような方法が公平性を担保できるか見極めたい。25年度中には運営者を決定したいと考えています」とする。
 一方で、「大規模イベントは3、4年前から仕込んでいかないといけない。すでに協会には新アクセスサッポロのイベント開催の問い合わせがきていると聞く。協会も開催準備を進めているようだ。運営者を開業の2年前に決めるのでは遅い。市は展示場運営、産業振興を軽視しているのではないか」(イベント業界関係者)といった声も聞こえる。

第④話:新アクセスサッポロ・新月寒体育館との〝一体化〟

第①話:札幌市がひそかに温める、札幌ドーム生き残りのウルトラシナリオ

第②話:アリーナ問題でレバンガが大人な対応

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