【全4話】札幌市がひそかに温める、札幌ドーム生き残りのウルトラシナリオ②「アリーナ問題でレバンガ北海道が大人な対応」

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北海きたえーる(北海道立総合体育センター)

 ファイターズが去った後の札幌ドームは悲惨というしかない。周辺では新アクセスサッポロと新月寒体育館の整備計画があるが、それぞれ課題を抱える。これら施設を巻き込んだ札幌ドーム生き残りの極秘シナリオがあるという。――全4話中の第2話。

改修は市が負担すべきとの強行論も

 ネット上で市が批判の的にさらされているのが、ドームネタのほかに、招致に失敗した冬季五輪に絡むものだ。関連する施設整備にも不満がくすぶった。
 30年大会で活用する予定だった施設整備について、計画はあれど、なかなか青写真を公表しないなど、市スポーツ局は歯切れが悪かった。
 担当者は当時、「五輪がなくても、建て替え、改修は検討していた。そこにたまたま五輪開催が重なっただけ」との主張に終始していたが、「五輪ありきの整備だ」(市役所関係者)と指摘する声も根強かった。

 その1つが新月寒体育館だった。
 豊平区にある月寒体育館は1971年に完成。72年の札幌五輪では、アイスホッケーの会場として使用された。
 市は施設が老朽化しているということもあり、建て替えを計画。同じ豊平区にある札幌ドーム周辺に移設させるとした。その地は市がスポーツ施設などの集約を目指すスポーツパーク構想の整備エリアでもあった。
 新月寒体育館は多目的アリーナと通年型リンクからなる。建設場所はドーム敷地内にある南西側の駐車場で、28年度までの完成を目指していた。30年五輪が実現していれば、市は多目的アリーナをアイスホッケー会場、通年型リンクを練習場として使用する計画だった。
 市は五輪がなくても検討していたと主張していたが、結局、「建設時期を延期する」とした。新施設の建設費約400億円のうち、市は国の補助金として180億円を見積もっていた。しかし、五輪招致失敗で予定していた国の補助金が得られなくなったためとした。この展開に青ざめたのがレバンガ北海道。この新施設が新本拠地となる予定だったからだ。

 レバンガが所属するBリーグは26―27年シーズンにカテゴリー分けを改変。トップカテゴリーのBプレミアに参入するためにはいくつかの条件を満たさなくはならない。その1つが5000人以上が収容可能で、VIPルームなどを備えた本拠地の確保だ。
 ちなみに、本拠地は参入時点ではなく、28―29年のシーズン開幕までに完成していることが条件となる。
 レバンガは当初、施設確保に向けて、さまざまな可能性を探った。
 現在の本拠地である道立施設・北海きたえーるの改修などだ。このほか、北広島に移転した北海道日本ハムファイターズと〝近くなった〟こともあった。
 結局、新本拠地に浮上したのは新月寒体育館だった。
 レバンガは新施設をホームとすることができ、市もプロスポーツチームが利用することで集客につなげることができる。両者の狙いが一致した。
 しかしながら、前述した通り、五輪招致断念にともない、新月寒体育館の建設計画がいったんストップしてしまう。
 Bプレミア参入の初回審査は今年10月。レバンガはそれまでに参入条件にあたる新本拠地の整備計画などをまとめなくてはならない。
 これらの条件をクリアできないと、下部カテゴリーからのスタートになる可能性もある。
「レバンガとしては、それだけは避けたいところだ。Bプレミアに簡単に昇格できる保証もないし、下部カテゴリーだと収入面が今よりも落ちることが予想される」(メディア関係者)

 そこで、解決案として浮上したのが、きたえーるの改修だ。施設をBプレミア仕様にするには、VIPルームなどを設置する必要がある。
 レバンガは3月1日、きたえーるを所有する道に、改修の協議開始を求める依頼書を提出。その後、レバンガはBリーグとも連携しながら、道に改修案を提出した。
 しかし、きたえーるの改修もハードルは低くない。
 まずは時間。改修案を図面に起こし、施行業者を初回審査までに決定させなければならない。
 そして費用。回収にかかる諸経費は基本的に自己資金でまかなわなくてはならない。きたえーるは公共施設であるため、道としてもレバンガのために改修費を負担するということにはならない。
 仮に、これらが間に合わない場合、Bプレミアの仮ライセンスが発行されることになり、来年4月までに条件をクリアすることが義務づけられる。しかし、レバンガはあくまでも申請期日までに改修案をまとめ、本ライセンスの発行を狙う。
 レバンガは3月1日に行った記者会見で「道庁の担当者が、市の担当者に対し、『引き続き、チームをしっかりサポートしてもらいたい』という言葉を伝えていただいた」と明かしている。
 道庁の担当者は「施設の指定管理者であるスポーツ協会の意見なども聞いて、レバンガに示していただいた改修案が実施可能か判断していくことになると思います」と説明する。
 新月寒体育館の建設が市の都合で延期され、レバンガはきたえーるを改修せざるを得なくなった。そのため、市が費用負担するのが筋ではないかという〝強行論〟もなくはないが、道の所有物、公共施設であることから現実的ではない。
「きたえーる改修について、いまのところ関与できることはないと考えています。しかし、何かできることがあれば可能な限り協力していきたい」(市の担当者)

 結果として、はしごを外された格好のレバンガに対し、同情論は少なくない。
「レバンガも思うところはあるだろうが、新本拠地問題にメドをつけるため、今のところ、大人な対応に終始している印象だ」(マスコミ関係者)
 仮に、きたえーるを新月寒体育館が完成するまでの暫定施設にするとなると、別の問題も浮上してくる。レバンガが撤退後、VIPルームはどうのように活用されるのか、ということだ。
 レバンガは「市内にBプレミアの条件を満たす施設が2つあるということを強みにできないかと考えています。きたえーる改修については、どのような方法で資金調達はできるのか、そのスキームを検討中です。施設のあり方としては、もともとの目的であるアマチュアスポーツの振興にも寄与できるものにしていきたいと考えています」と説明する。
 新月寒体育館の行方については、秋元市長は3月27日の記者会見で「レバンガの本拠地というようなことを視野に入れていくことに変わりはない」と話したが、現時点で建設資金確保のスキームは見通せてはいない。
 市担当者は「五輪がなくなったことなどから、公共的な観点だけで整備することは難しさもあると考えています。今、プランを練り直している最中です。民間と連携して整備していくことも探っています。現在、サウンディング調査をしている状況です。できるだけ早く建設したいと考えていますが、タイムスケジュールはまだ見えていません」と話す。

第③話:ドーム〝至上主義〟の石川敏也・札幌市副市長へ続く

第④話:新アクセスサッポロ・新月寒体育館との〝一体化〟

第①話:札幌市がひそかに温める、札幌ドーム生き残りのウルトラシナリオ

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