【無料公開】杉村太蔵が“ライバル”長谷川岳に自民党公認争いで負けたワケ【テレビ番組で言及】

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衆院議員時代の杉村太蔵氏(2008年5月撮影)

「こんな素晴らしい人生が待っているとは思っていなかったですよ。こうしてテレビで使っていただけるようになりまして、何が起きるか起きるか分かりませんね」

 4月10日のテレビ朝日「大下容子ワイド!スクランブル」に、北海道出身の元衆院議員でタレントの杉村太蔵氏が出演。日替わりで問題が浮上し、炎上中の参院議員・長谷川岳氏に言及した。

 杉村は2005年9月の衆院選で公募に応じ、比例南関東ブロックから立候補。比例名順位は35位だったが、郵政選挙で自民が地滑り的に勝利したことでバッジを付けた。いわゆる小泉チルドレンの一人だ。

 その後は奔放な発言が目立つなど「お騒がせ議員」として世間に認知。一方で旭川市出身ということと次の衆院選では比例での当選が難しいことから、選挙区での出馬を模索。「偉大なるイエスマン」こと自民党幹事長・武部勤氏の後見もあり、道内選挙区での出馬を模索するようになった。

 その中で、横路孝弘氏が王国を築いていた衆院北海道1区での出馬に手を挙げたのが2006年のこと。道1区は前任の三品孝行氏が2度続けて横路氏に破れ、支部長を下ろされたことから支部長を公募。杉村氏はそこに手を挙げたのだ。

 1区内の札幌市南区にある市立藻岩高校出身の杉村氏は、縁がないわけではなかった。ちなみに杉村氏が高校3年生の時、教育実習でやって来たのが同じ藻岩高校出身のタレント・大泉洋というのはよく知られた話だ。

 07年に入り、そこへ公認を争うライバルとして現れたのが長谷川氏だった。長谷川氏は被選挙権を得た25歳の時に一度、無所属で1区から横路氏に挑戦し惨敗していたものの、政界進出になお意欲を持っていた。

 その長谷川氏と親しい経済人を通じ繋がったのが、武部氏同様に自民党内の大実力者だった町村信孝氏だった。1区では杉村氏のほか数名がリストアップされていたが、町村氏の庇護を得た長谷川が有力候補として急浮上したわけだ。07年の末にかけて選考が行われたが、31人の選考委員は早い段階で長谷川支持に固まった。

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町村信孝氏(左)のセミナーで挨拶する長谷川岳氏(右、2008年5月撮影)

 それを引き起こした出来事があったという。選考委員会が開かれる前の12月11日、杉村が国会で記者団の囲み取材を受けた際に語ったこの一言。

「公認するかしないかは党の判断。選挙に出馬するかしないかは私の判断だ。必ず道1区から出馬する」

 選考委は長谷川氏と杉村氏で公開演説会を行った上で1区内の全党員を対象としたアンケートを実施する予定だった。そこに杉村氏の発言があったため、選考委員らが「地元の以降を無視する発言だ」とカンカンとなった。自民札幌支部連合会などにも党員から杉村氏に対する抗議の電話が相次いだと伝わる。

 そんな空気を察知したか、杉村氏は結局公開演説会開催に必要な書類を提出せず、1区の候補はすんなり長谷川氏に決まったのだ。

 杉村氏からすると、長谷川氏と“対等”な立場で候補争いをすることに面白くない向きがあったのも事実という。07年の知事選や参院選などで自民候補のためにマイクを持ち、札幌に事務所を構え、マンションも借りていた。杉村氏に並々ならぬ意欲を感じた関係者も多かった。

 他方、選考委による検討が始まると、長谷川氏が態勢有利という見方がアッという間に広まった。委員による面談の前資料は杉村氏が各項目ともそっけないものだったのに対し、長谷川氏はびっしり書き込んでいた。「杉村は国会議員になって2年経つのにまるで成長していない」といった声まで出ていたという。前出の発言はそれそのものというより、決定打だったようだ。

 また客観的材料として、自民党が密かに行った世論調査の数字も影響したという。2つの調査機関が別々に杉村氏と長谷川氏の支持率を調査したところ、長谷川氏が杉村氏を2倍から3倍上回ったという。

 杉村氏にはその後、党執行部や小泉純一郎首相秘書官を務めた飯島勲氏、果ては党派を超えて鈴木宗男氏にも支援を要請、無所属でも1区から出馬するか、違う選挙区での出馬を模索するか、といった話が飛び出したものの、最終的には出馬を断念。09年6月に開いた記者会見では「いつか国政復帰に挑戦したい」との意志も表明したものの、その後はタレント・政治評論家として身を立て、活躍は読者もご存じの通り。

 この記者会見の約1カ月後、杉村氏は長谷川氏と“居酒屋会談”をしたと当時の財界さっぽろ本誌に掲載されている。

 内容は、衆院選を間近に控え、自民党北海道支部連合会選対本部長だった参院議員・中川義雄氏が場面をセット。道連のベテランも交えて会食した。2人はこの時が初めての顔合わせだったというが、お互い幼い子どもがいるパパ同士ということもあり盛り上がったという。杉村氏はその場で、長谷川氏の選挙応援も約束した。

 この場面はきょうの番組出演時に杉村氏自身も明かしている。

「(不出馬を)表明した後、食事したんです、長谷川さんと。その時に僕は『長谷川さんの擁立論が出た時に、僕でも北海道1区の公認候補は杉村太蔵よりYOSAKOIソーラン祭り創設者の方(長谷川氏)がいいと思います。頑張ってください』と言った記憶があります」

 そして、冒頭の発言へと続くのだった。

 杉村氏は近年、タレント業の一方で会社経営も順調で、地元・旭川市の新飲食店街「旭川 Harete」を監修。まちづくりや地域起こしなど幅広い活動を行っている。

 次号の財界さっぽろ2024年5月号では、炎上中の参院議員・長谷川岳氏を90分にわたり独占直撃。これまで水面下で広がっていた疑惑の数々についても本人の口からすべて説明する特集を掲載。14日に当サイト「財さつJP」、15日には北海道内書店・コンビニエンスストアで発売予定となっている。

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