【財界さっぽろ 過去記事を無料公開】日経の「交遊抄」に登場、中山茂中山組社長が明かした成蹊同期・安倍晋三元総理との㊙エピソード

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中山茂氏(左)と上田定夫氏

 3月7日付の日本経済新聞の「交遊抄」に、中山組社長の中山茂氏が登場した。成蹊大学同期の盛田敦夫敷島製パン社長とのエピソードが明かされているが、両氏が再会するきっかけは〝同期の桜〟安倍晋三元総理だった。中山氏は「財界さっぽろ」2006年11月号で、3期先輩にあたる上田定夫上田コンクリート工業常務(当時)とともに対談に登場。同年9月に総理大臣になったばかりの安倍氏との秘話を明かしていた。以下、記事を無料公開する。なお、肩書などは当時のままだ。

振りを付けて「エイトマン」の歌を

 中山茂氏は、滝川が本拠の有力ゼネコン・中山組の3代目。空知建設業協会の会長も務める。首相とは成蹊大学法学部政治学科の同級生だ。上田定夫氏は滝川の上田コンクリート工業所の常務。首相が入ったアーチェリー部でキャプテンを務めていた。3期先輩だった。以下、両氏の対談。
   ◇                                          ◇

――首相は、どんな学生だったのですか。
 中山 学生時代は、いまほど親しくなかったから…上田さんの方が詳しいよ。 

――上田さんはアーチェリー部の先輩だったそうですが、入ってきたときの首相の印象は。
 上田  彼は背が高いので、そういう点では目立ったんですが、いいとこのお坊ちゃまという感じで、将来、首相になるとか、そんな雰囲気とかは全然、感じられませんでしたね。
 ただ安倍の倍の字がちょっと変わっているんで、その時はまだピンとこなかったのですが、後に友達と安倍君のところに遊びに行ったら、家のところにポリスマンがいる(笑)
 それで安倍晋太郎さんの息子さんということが、初めてわかったんです。
 彼は小学校のころから成蹊だから、そのころからの友人や先輩は知ってたようなんですが、アーチェリー部の人間は、大学から成蹊という人間がほとんど。
 だからほとんどの部員が彼の素性を知らなかった。彼自身、出しゃばるタイプでもなかったですし。
 そういう意味では、将来、代議士にはなるだろうけど、とても幹事長ポストだとか、総理総裁にというイメージはなかったですね。おそらく本人も、当時はそういうことになるとは、思ってなかったのではないかな。

――片鱗とかは、まったく感じませんでしたか。
 上田 いわれてみれば、資質はあったかなと思います。場を盛り上げたりとか、こまやかな気配りが利いたりとか。座が白けてきたら、歌がうまいわけでもないのに歌を歌ったり。
 中山 まわりに気を遣うんですよ。エイトマンのカッコをして歌ったりしてた(笑)
――コスプレですか(笑)
 中山 そうじゃなくて、エイトマンの歌に合わせて、手をこうやって(エイトマンが走る時のマネ)振りを付けながら歌ってた。そうやって、いつも場を盛り上げてた。
 上田 意外と勝負師なんですよ。ゲームごと、特に彼はマージャンが好きなんですけど、見かけに似合わず、ここ一番という時に度胸と勘で、グイッといく。
 そういう意味では確かにあったかなと。いま「ぶれない」とか言われていますが、当時から決めたら猛進していくタイプでしたね。
――マージャンを上がる手は。でかい手ばかり狙うとか。
 上田 そういうんじゃなくて、その場の雰囲気で、いけるとなったら、勝ちを狙ってくるタイプですね。
 皆に気を遣うところなど、いいとこあるなぁと思って見ていました。単なるお坊ちゃんではなかったですね。
 中山 それは本当にそう。お坊ちゃんだったら別に「やってらんない」っていって、そんなことしなくても、よかったんだもの…
 上田 私が言うのもなんですが、お母さんの安倍洋子さんの育て方が、きっとよかったんでしょうね。

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安倍晋三氏

練習できなかったアーチェリー

――同級生として、どうでしたか。
 中山 安倍が怒ったり、自己主張したりすることはほとんどなかった。ましてや人を傷付けたりするようなことは絶対にしなかった。ただ芯が強いというか、この頃から心に強いものを持っているようではあったね。
 上田 ある種のこだわりのようなものは、持っていたと思います。いまの北朝鮮の問題だとか、靖国の問題だとかにこだわっているところなどは、そういう性格が表に出てきているのではないでしょうか。
――よく、おじいさんの岸信介さんのDNAが色濃く出てるといわれますが、大学時代から、そういうそぶりあったのですか。
 中山 それはまったくないですね。
 上田 よく家に友達を連れて行ってマージャンしてたり、ごくごく普通でした。
 お兄さんは政治家にはならないと言ってましたから、彼が晋太郎さんの後を継ぐのだろうと思ってましたけど…まさか首相にまでなるとは。皆、驚いたとは思いますよ。
 中山 安倍のお兄さんも成蹊だから。上田さんの一期下で。
――お兄さんについては。 

 中山 学年も違うし、クラブも違うから、われわれにはわからない。
――首相の練習状況は。
 上田 僕がいたころは、彼は、まだ矢を打たせてもらえないころだったから…
 中山 体育会だから(笑)上田さんの頃なら安倍たちは、まだまだ一兵卒だもん。
 上田 空弓を引いてるところは見ましたが、それ以降のことはわからないです。
 中山 本人は「俺はうまくなかった」って。
 上田 彼はかわいそうなんですよ。体育会の事務局にも入ってて、それをびっちりやってて、練習時間があまりとれなかったから。
 中山 安倍は事務局で役員をやってたんです。確か会計をだったはず。
 僕はサッカー部だったけど、うちの部からも行ってたし、体育会傘下のクラブから必ず1人以上が人身御供で事務局に入って、体育会全体の切り盛りをやらなきゃならなかった。
 上田 スキーも上手だし、スポーツ万能だったから、練習をしてれば、いい選手に育ったと思いますよ。
 中山 事務局って大変なんだよ。裏方だから表に出ることもないし。部活がキチッと運営されるようにするための下働きだから。
――人のいやがる仕事をしていたと。
 上田 うーん。選ぶ人が選んだら、いやとはいえない時代でしたし…体育会ですからね。
 中山 マネジャー向きの人間がひっぱられる。とにかく大変なの、事務局は。
――マネジャー向きということは、そのころから調整能力があった?
 中山 それはわからない。おそらく、成蹊の下(小、中、高校)から、上がってきてた連中に引っ張られたんだと思いますよ。
 上田 そういった頭角が出てくるのは3年生ぐらいからでね。先ほども言いましたが、彼が入部したてのころは皆、そういう血筋だとは分かってなかったから。
――隠していたんですか。

 上田 そういうわけじゃなく、普通にしてました。
 中山 そういうことは、自分から言わないからね。そういうのを自慢するタイプでもないし。僕が安倍の家系のことを知ったのは、2年生になってからだった。
 上田 私は彼の入部から半年後に。成蹊の下から上がってきた人以外は、わからなかったと思いますよ。
――オーラとかは出ていなかったんですか。 
 中山 出てなかった。ごくごく普通の学生でしたね。
 上田 そのころは幹事長ポストとか首相の座をつかみ取るパワーがあるようには、とても見えなかった。 それだけに彼の演説を聞いて涙が出ましたよ。人づてに聞いた話ですが、最初はあまり上手じゃなかったそうなんです。それがいまでは、抑揚があって説得力がある。心底、すごいもんだなぁと感動しましたね。

好きだった娘はいたようだが…

――首相はあのルックスだから、女性には相当、モテたのではないですか。
 中山 そういう話はなかったね。男友達とばっかり遊んでいた。
 上田 浮いた話は聞かなかったなぁ。好きだった娘はいたみたいですが、打ち明けられないタイプのようでした。
――中山社長が、首相と友達になったのはいつごろですか。
 中山 政治学科の同期が120人しかいないんです。それで4年間一緒なんだから、自然と皆のことが分かるようになる。つきあいの度合いは別にしてね。同期の結束力は強いですよ。
――授業の出席率は。
 中山 安倍はよかったね。僕は悪かったけど(笑)
――部活の方は。
 上田 まじめだったですよ。彼には汚点が全然ない。
――首相が声をかけてきたことは。
 上田 こっちからはあっても、向こうからはありませんね。体育会でしたから上下関係が厳しいので。
 中山 僕らの場合は、会えば「よぉ」でしたけど。

――やっぱり同級生は気やすいんですね。面白いエピソードは。
 中山 特にないなぁ。普通の学生だったから。部活の方があるんじゃないかな。 上田 校風がバンカラとかじゃないから。ごくごくまともな学校で、特異な人間はいないし。思い当たるようなことはありませんね。
――首相は学生時代、クルマとかオートバイには乗られてたんですか。
 中山 クルマには乗ってたみたいだね。「乗り入れ禁止」なので、学校には乗ってきていなかったけど。
 上田 左ハンドルに乗ってたはずです。
 中山 雑誌にアルファロメオって書かれてたけど、正確にはわかりませんね。

クラス会同窓会の出席率は100%

――お二人以外に、道内の成蹊大学出身関係者は。
 中山 僕は北海道の成蹊学園の事務局やっていたからよくわかりますが、大学の関係だと帯広の高橋建設の高橋文介が同期。お兄さんの大介さんが2期上。
――大介さんは、首相のお兄さんの同級生ですか。
 中山 同期ではあるけどクラスまではわからない。文介は政治学科で同級生。いまは身体を壊しているけど…彼の方が安倍と仲がよかった。あと1期上に男山の山崎與四良社長がいます。
――クラス会や同期会では、どうですか。
 上田 誰も彼のことを特別扱いはしませんね。
 中山 「官房長官」とか言う奴はいないなぁ。男は皆「アベ」、女は「アベクゥ~ン」って(笑)。学生時代の仲間だから、地位とかは全然関係ない。
――出席率は。
 中山 必ず来るよ。安倍のためにやってるようなものだから。安倍は酒もタバコもやらないけど、いつも最後まで残ってる。
――宴席ではどんな話を。
 中山 学生時代の思い出話やバカ話ですよ。「お前、ふけたなぁー」とかね。仕事や政治の話は、いっさいしませんね。
 ただ首相になっちゃったから、当分はお預けです。はんぱじゃなく忙しいだろうし…次にやるのは安倍が首相を辞めた時、御苦労さん会でしょうね。
――最後に首相に向けてひとこと。
 上田 首相になったからには、悔いが残らないように思い切ってやってほしい。小泉さんも言ってましたが、本当に孤独で批判も多いと思うんだけど、それだけに自分の信念を曲げない強い気持ちを持ってやってほしいと思う。
 それと激務だろうから、くれぐれも健康には気を遣ってほしい。
 中山 まずは健康第一で。あとは北海道のことを見捨てないで欲しいということ。それだけですね。

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