【無料公開】能登半島地震ショック 札幌市の基幹避難所、来年度から燃料備蓄をスタート

(写真はイメージ)
能登半島の大規模な群発地震で、多数の県民が避難所生活を強いられている。
報道では、水不足や停電に加え、寒さについても地元から声が上がっている。実は、現時点では札幌市の基幹避難所も寒さ対策で課題を抱えている。
財界さっぽろ2023年8月号で報じた「ストーブあり灯油なし、札幌市基幹避難所の矛盾」が以下だ。
札幌市では学校や区の体育館などを、災害の種類ごとに指定緊急避難場所兼指定避難所(基幹避難所)に定めている。必要な物資も揃えているというのだが、疑問の声が上がる。
ブラックアウトを引き起こした胆振東部地震から、もうすぐ5年。最寄りの避難所を知っている人はどれだけいるだろうか。災害時に避難所を利用するにしても、肝心の場所がわからなければ始まらない。
札幌市の場合、市役所のホームページに区ごとに場所を示している。基幹避難所は災害の種類によって適用場所が異なり、種別も記載されていた。
市では実際の避難所に足を運んで行う、市民向けの訓練に力を注いでいる。
訓練メニューの中でユニークなのは、少人数の班で行う避難所運営ゲーム(HUG)。避難所の図面を前に行うシミュレーションだ。
HUGでは、ペット同伴や高齢の避難者への対応を話し合ったり、トイレの水があふれたといったトラブルイベントも発生する。その都度、班内で意見を出し合い、対処を決めていく。
災害時、避難所には市の職員が派遣されるが、大規模災害の場合、避難所に派遣できる市職員の人数は現実的には限られる。避難所運営では住民の自主的な動きも求められるのだ。東日本大震災の時、住民が助け合いながら避難所生活を送ったのはご存じの通り。HUGで市民は疑似的に避難所運営を学ぶことができる。
基幹避難所には物資の備えもある。アルファ化米やクラッカーといった食べ物や毛布や寝袋などが保管されている。
ところが、市の備蓄物資のラインアップに疑問が呈されている。
冬の避難にも備え、灯油ストーブが基幹避難所1カ所につき6台用意されているが、灯油は備蓄物資になっていない。
避難所の訓練に参加したことのある男性は「現場の担当者に質問すると、『ご自宅から持ってきて提供していただければ』と言われました」と話す。
非常用発電機も各基幹避難所に1台づつあるが、ガソリンの備蓄はない。
保管の難しさが理由のようだ。市は年に何度か備蓄物資のチェックを行っているが、灯油やガソリンは可燃物。危険性はある。
ちなみに道内第2の都市の旭川市の避難所でも同様だった。灯油やガソリンは備蓄物資に入っていない。
札幌市の危機管理局の担当幹部に質問すると、「現在、担当部署で燃料備蓄について検討をしているところです」と回答した。
では、いま、災害が起きた時はどうするのか。
各市は地元の石油販売業の団体などと災害時の燃料提供の協定を結んでいる。ところが、どこの給油所から、どんな方法でどれぐらいの頻度で避難所に運ぶかといった、具体的な手順について札幌市は決めていない。災害時は混乱するもの。協定の実効性を高めるにはシミュレーションも必要なのではないか。
以上が、23年8月号の記事。その後、どうなったのか。札幌市の担当部署は「今後、燃料備蓄の整備を進めていく」とのこと。次年度予算案にも関連費用が盛り込まれているようだ。