【インタビュー】北海道日本ハムファイターズ社長 小村 勝

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北海道日本ハムファイターズ社長 小村 勝 氏

道民みなさんの行きつけのボールパークを目指す

北海道日本ハムファイターズの新球場・エスコンフィールドHOKKAIDOを含む北海道ボールパークFビレッジが今春、開業した。ファイターズ戦のない日を含む来場者数はすでに年間目標を突破。球団社長にボールパークの未来像を聞いた。

目標だった全体での年間300万人を達成

――自身の経歴を教えてください。

小村 : 1988年にファイターズの親会社である日本ハムに入社しました。そこからずっと35年間勤めてきました。
日本ハム時代は主に営業畑を歩み、店頭での販売のほか、マーケティング部門で広告・宣伝業務なども担当しました。マーケティング部門に所属していた4年前、看板商品・シャウエッセンのブランディングの仕事を手がけたことがありました。レンチン解禁を宣言するなどした「手のひら返し」マーケティングがそれです。

――ファイターズとの関わりは。

小村 : 量販企画室で販売促進を担当したこともありました。開幕セールや記念フェアなど、球団を活用したプロモーションを展開している部署なので、そのころから、ファイターズとは関わりがありました。
一方で、日本ハムでは昨年、北海道プロジェクト推進室を立ち上げました。私はマーケティング推進室から、新部署に異動しました。それと同時にファイターズの社外取締役にも就きました。
日本ハムにとって、北海道は重要なエリアです。あまり知られていないかもしれませんが、日本ハムグループの拠点がたくさんあります。
しかしながら、北海道プロジェクト推進室を立ち上げるまで、本体の拠点がありませんでした。広報などを含め、なんとなく球団に頼り切っていた部分があったと思います。新部署設立は当然、北海道ボールパークFビレッジ(以下、Fビレッジ)の存在がありました。日本ハムグループとしても多額の投資をしましたので、北海道との連携をより強めたいと考えました。
新部署設立によって、札幌に事務所を構え、私を含め3人が常駐しました。昨年は経済界の方々をはじめ、道民のみなさんとの接点を持つことができた1年でした。非常に好意的に受け入れていただいたことに感謝しています。
私自身としては、その後、今年4月に球団社長に就任し、現在に至っています。

――今年開業したFビレッジについては。

小村 : 想定以上に足を運んでいただいています。数字面で言いますと、野球興業以外を含めたFビレッジ全体の目標入場客数は年間300万人でした。その数字を9月末までに達成することができました。エスコンフィールドの公式戦主催試合の年間観客動員数も188万人を超えることができました。
野球以外の目的でFビレッジを訪れている方は全体の4割弱になります。土日の試合のない日も多くの方に来ていただいています。観光バスで立ち寄っていただくケースも多いです。1、2時間滞在し、敷地内を散策、見学していただくという形です。
新千歳空港も近いので、空港からの行き帰りに、旅行ツアーの1つに組み込んでいただいています。野球の試合がない日は、外野席の無料開放などを行っているので、予約していただいたお弁当を食べることもできます。
このほか、修学旅行生の利用も多いです。スタジアムツアーも好評を得ています。修学旅行生は社会科見学という位置づけで利用していただいています。
Fビレッジ開業当初は試合の際、交通の便が悪い、球場内でのキャッシュレス化の不便さ、場内での待ち時間の長さなど、たくさんのご指摘を頂戴しました。来場者にはいろいろご不便、ご迷惑をおかけしました。申し訳なく思っています。
それでも、少しずつ改善はできていると考えています。一方で、課題が完璧にクリアになることはありません。その点はお客さまの声を聞きながら、進化を続けていきます。

――シーズンオフの利用はどう考えていますか。

小村 : 「冬はどうするの?」と声を頂戴するんですが、いろいろイベントを実施すれば、足を運んでいただけるのではないかと考えています。その1つが「Snow Park」で雪を使ったアクティビティを提供します。
また、屋内では天候を気にせず遊ぶことができますので、マラソンやウォーキングなど、グラウンドを開放したイベントも開催できたらいいですね。シーズン中、試合のない日にある企業の展示スペースとして場内を活用しました。冬期間でも実施できるのではないかと考えています。

成績は最下位だが選手は育っている

――チームは2年連続最下位に終わりましたが、新庄剛志監督の続投(来季で3年目)が決まりました。新庄ファイターズへの評価は。

小村 : 順位については最下位なので厳しくならざるを得ません。一方で、選手は着実に育ってきています。昨年は松本(剛)選手が首位打者を獲得し、今年は万波(中正)選手がホームラン王を狙える位置につけました。
ファイターズは平均年齢25歳以下の若いチームです。新庄監督がもっともっと可能性を広げてくれるんじゃないかと思っています。監督続投に賛否両論もあると思います。ただ成績は現場だけの責任ではありません。決して監督のせいだけではない。フロントにも原因があります。真摯に受け止め、しっかりとチームを立て直していきます。

Fビレッジを一緒につくりあげていく

――Fビレッジ内への北海道医療大学の移転計画が発表されました。

小村 : Fビレッジにおいては敷地の約32㌶のうち、開発されているのは5㌶ほどです。これからも余白を生かし、進化し続けていかないといけない。大学だけではなく、いろいろな施設にきていただきたいという思いがあります。
Fビレッジ自体だけではなく、周辺を含め、まち全体が活性化するような仕掛けづくりをしていきたいと考えています。しかし、我々がそれをやるんだというよりも、同じ夢を描ける方々と一緒につくりあげていきたいと思っています。Fビレッジのコンセプトには共創空間の実現を掲げています。

――北海道とファイターズ、Fビレッジのこれからについて伺います。

小村 : ファイターズということに関していえば、やはり一丁目一番地は野球ですから、やっぱり強くならないといけないと思っています。
これまでにダルビッシュ(有)選手、大谷(翔平)選手らを送り出しています。我々にとって、彼らは宝物ですし、その足跡も宝物になっています。メジャーのスカウトをはじめ、海外の方々は、ダルビッシュ、大谷がかつて在籍していたチームだと認識していただいています。
新たなファン獲得として、世界の方々にも認知していただけるファイターズを目指していきたいです。そして、世界中の方々に足を運んでいただきたいと考えています。
Fビレッジに関して言うと、ここに来れば、何か面白いことがある、いつも楽しいという空間を追求していきます。目指したいのは、道民をはじめ、みなさんにとっての行きつけのエリアになることです。ちょっと立ち寄ろうと思ってもらえるような空間をつくります。
日本ハムグループは、そもそも食の会社なので、おいしいモノを食べて、笑顔になって、健康になってもらう。そのサイクルの中に、スポーツが加わり、元気になってもらう。それは実にシンプルなことです。このシンプルなことを具現化するのが、このFビレッジの存在意義でもあると考えています。
一方で、ファイターズは挑戦するチームです。それは象徴的なものではなく、日本ハムグループの先陣を切って行動しています。今回のFビレッジの具現化はもちろん、ファンサービスファースト、地域密着、そもそも2004年の北海道日本ハムファイターズ誕生もすべて挑戦の取り組みです。これからも、ファイターズをはじめ、日本ハムグループ全体で、挑戦し続け、社会、そして北海道経済に貢献していきます。

小村 勝
(こむら・まさる)大阪府生まれ。1988年日本ハムに入社。主に営業畑を歩む。2022年に新たに立ち上がった北海道プロジェクト推進室に配属。同年、北海道日本ハムファイターズの社外取締役に就任。23年4月から現職。
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