今年のうちに!来年こそは!! 札幌エアコン生活へのイロハ

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「喉元過ぎれば熱さを忘れる」けれど、〝暑さ〟は毎年やってくる。
今夏の猛暑により、札幌市内のエアコン需要は急増中。
「エアコン付き賃貸物件」「費用」「取り付け補助金」など、エアコン生活に向けての入門情報をお届け。

賃貸物件の借り主主導は〝オススメしない〟

 エアコンのある部屋で生活するための手段は主に3つ。「エアコン付きの賃貸物件に入居する」「借り主として賃貸物件にエアコンを設置する」「一軒家や分譲マンションに設置する」だ。
 不動産業者間の流通サイトによると、札幌市内の賃貸物件約2万3000件のうち、エアコン付きは約7000件に上る。
 ある不動産賃貸業関係者によると、間取りによる取り付けの偏りは特になく、築5年までの物件なら新築時に設備としてエアコンを導入しているケースが多いという。
 エアコン取り付けが増加したのは約5、6年前から。関係者はその理由を語る。
「そのころから道内でも猛暑が続くようになり、住人が室内で熱中症になって亡くなるケースも出てきました。いわゆる〝事故物件〟になってしまうのを防ぐため、リスクヘッジとしてエアコンをつけることをオーナーさんに推奨しています」
 同様に、築5年以前の建物にもエアコンは増えている。大家にとっては設備投資による負担増大かと思いきや、ある裏事情がある。
 その名も〝プロパンガススキーム〟。
「大家が契約しているプロパンガス会社に依頼し、契約延長の条件としてエアコンやインターホンなどの設備の無償提供・貸与を受けるという仕組みです。オーナーは懐が痛まず、ガス会社は契約につながる。これによりエアコンを取りつけても賃料を上げないというケースがほとんどです」(前出の不動産関係者)
 一見、良いことづくめのシステムのように見える。しかし、2023年7月に経済産業省が「プロパンガス料金へ関係ない設備費の上乗せをする商慣習を禁止にする」と発表。2024年7月には法令が施行され、違反者には30万円以下の罰金が科される。
 プロパンガス業者関係者によれば、〝プロパンガススキーム〟にはいくつかの問題点があるという。その一つは、賃貸契約者が知らないうちに、ガス料金に設備費が上乗せされている可能性があること。
「プロパンガス料金は自由料金となっています。アンケートによると65%の業者は『ガス料金に設置料を転嫁していない』としていますが、実際のところは分かりません。制度の透明化により、借り主の利益は守られ、業界は正しい方向へ向かうことができるでしょう」(プロパンガス業者関係者)
 法令制定を受け、現在では駆け込みで設置依頼されるケースが増えている。
「施行後にエアコンを設置する場合は、オーナーが設置し、家賃で徴収することになります。エアコン設置物件の増加は確実に停滞するでしょう」(前出のガス業界関係者)
 オーナーによる設置が今後難しいとなれば、借り主主導による設置はどうか。
 前出の不動産関係者は「推奨しません」と明言。
「設置する時にはあまり問題になりませんが、退去の際にトラブルになるパターンが多いです。ですから、仲介業者としては一切勧めません。借り主が設置したい場合は原状回復費などについて綿密な話し合いをして、借り主がすべての責任を負うという形となります」
 なお、退去の際に設置したエアコンをオーナーが買い取るということはない。借り主が引き取らない場合はオーナーの許可のもと、残置物扱いとなるという。

取り付けに潜む落とし穴

 賃貸物件へのエアコン設置が増えてくると「設備上は明記されていないものの実際の部屋にはエアコンが設置されている」というケースが出てくる。これが前述した残置物扱いのエアコンだ。
 取り付け費用がかからず、家賃に設備費として上乗せされることもない。借り主にとってはラッキーと言いたいところだが、そうでもない。
「残置物の場合、管理は借り主の責任となります。つまり、故障した場合は借り主が修理や撤去の費用を払わなければなりません」(前出の不動産関係者)
 自分で所有している物件に設置する場合は、賃貸物件に比べてややこしいやり取りは必要ない。注意点は設置工事にまつわること。
「一軒家なら大きな問題はありません。マンションならベランダに十分な広さがあるか、避難時に妨げにならないかを確認しないと工事ができません。築20年を超えるようなマンションは建築時にエアコンを付ける想定をしていないので、問題が出てくるケースがあります」(市内電器店関係者)
 費用についても注意が必要だ。大手家電量販店の店頭では本体価格と基本工事料金がセットで表記されていることも多い。
 注目は〝基本〟という点。エアコン設置の想定がない物件では、分電盤工事や配管延長が必要になることもある。ベランダがなければ、室外機を外壁に取りつける工事が必要になる。見積もりの時点で工事費がかさみ、泣く泣くキャンセルするケースも。
「日ごろから付き合いのある電器店なら、家の構造が分かっているので工事費も予期しやすいですが、若い世代にはそういうお店があるという人は少ないですね」(前出の電器店関係者)
 対策は、事前に室内の設置場所・穴を開ける場所・室外機置き場・ブレーカーなどの写真を撮っておくこと。店員とのやり取りで、追加工事が必要になるポイントをあらかじめ確認することができる。

暑くなってからでは遅い

 夏を快適に過ごすには、何月までの購入がベストなのか。
 前出の電器店関係者によれば、以前は雪が溶けてから5、6月頃までが閑散期だったという。
「設置数が増えた一方、道内には工事業者が少なく、最近は取り付けまでに2カ月かかるなんてこともザラにある。付けたいと思ったら早めに動くのがベスト。冬の暖房にも使えますから」(電器店関係者)
 道内では、暖房機能に特化した「寒冷地エアコン」が着目されている。
 寒冷地用は一般地用に比べ、室外機のパワーが強く、積雪や凍結への対策がなされているものを指す。
 エアコン暖房は、室外機が外の空気から熱を奪い、室内機に熱を運ぶことで暖風を出す仕組みとなっている。一般地用は厳冬期に利用すると、室外機が凍結し、外気から熱を奪うことができず、故障の原因となってしまう。なお、冷房機能に違いはない。
 前出の電器店関係者はエアコン取り付けについて内情を語る。
「最近では2・8キロワットまでのタイプ、10畳までの広さの部屋につける比較的小さなエアコンが売れています。灯油やガス設備を撤去して寒冷地エアコン一本に絞る踏ん切りはなかなかつきません。リビングではストーブを使って、寝室や子ども部屋に小さいエアコンを付ける、そういう方が多いのでしょうね」

 札幌市では、灯油暖房より省エネ効果が期待できる寒冷地エアコンに対して、現在2種類の取り組みを実施している。
 一つ目は「省エネ機器エネルギー源転換補助金制度」。これは、灯油を熱源とする暖房もしくは給湯機器から電気やガスを熱源とする機器への転換を促す補助金のこと。
 対象には寒冷地エアコンの他にエコキュートやエコジョーズ(省エネ高効率給湯器)などが含まれる。経費の2分の1が補助対象となり、最大額は35万円。期間は24年1月31日までで、先着順の受付となっている。対象者は、一軒家やマンションなどの物件所有者だ。
 かなり〝お得〟な制度だが、適用には厳しい条件がある。
 最大の壁は、灯油による既設の暖房・給湯設備を処分すること、そして撤去後に新たな灯油機器を設置できないこと。つまり灯油と〝お別れ〟する覚悟を決めなければ補助は受けられない。
 エアコンだけで厳しい冬を越すことができるのか。
 実は補助金交付者は、そんな多くの道民の疑問に応えるための〝先陣〟のような働きを担うことになる。
「使用感などのデータを集約することもこの補助金の目的の一つです。交付者の方にはモニターとなっていただき、使用状況などの聞き取りを行っていきます。それによって省エネ機器をより普及啓発していければ」(市の担当者)
 補助金は22年11月に第1弾の募集があり、23年は2シーズン目となる。寒冷地エアコンでの補助金が認められたのは、23年9月末時点で2シーズン合わせて計8件だった。
 もう一つは「省エネ家電で家計を応援キャンペーン」。登録店舗で寒冷地エアコン、冷蔵庫、エコジョーズを購入すると、購入金額に応じて最大5万円分のキャッシュレスポイントや、ギフトカードが還元される。申請受付は24年2月13日まで。
 適用の大きな条件は「省エネ基準達成率100%以上」を満たす製品を購入すること。前述の補助金のように他の機器を撤去する必要はなく、比較的使い勝手の良い仕組みだ。
 札幌市によれば、それぞれの予算は補助金が2250万円に対し、キャンペーンは3億6700万円分と、まさにケタ違い。なお、補助金とキャンペーンの両取りはできない。
 市の担当者は「猛暑を受け、補助金に関する問い合わせは増えています。補助金申込専用の電話番号や、キャンペーン事務局のコールセンターを設置していますので、お問い合わせはそちらにお願いします」と呼びかけている。

※2024年4月現在、上記の取り組みは終了しています。

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