【無料公開】大友啓史監督インタビュー!木村拓哉×綾瀬はるか出演・映画「レジェンド&バタフライ」で見る地方経営者あるある
織田信長とその妻・濃姫の関係にフォーカスした“レジェバタ”は、豪華キャスト、スタッフが集結し、制作された大作。「財界さっぽろさん的な視点で話すと……」と、口を開いた大友啓史監督が本誌読者に向けて作品を独自解説!
豪華スタッフ・キャスト陣が集結
東映創立70周年を記念して製作された映画「レジェンド&バタフライ」が、2023年1月27日に全国ロードショーされる。
戦国時代を舞台にストーリーが繰り広げられる本作は、織田信長が主人公。正室(本妻)・濃姫と出会い、本能寺の変が起きるまでの33年間が描かれている。
信長役は木村拓哉さん、濃姫役を綾瀬はるかさんが演じる。ほかにも、宮沢氷魚さんや市川染五郎さん、音尾琢真さん、伊藤英明さん、中谷美紀さんら、豪華キャストが脇を固める。
脚本を手がけたのは「ALWAYS 三丁目の夕日」「探偵はBARにいる」などで知られる古沢良太さん。監督は、「るろうに剣心」シリーズや大河ドラマ「龍馬伝」などが代表作の大友啓史さんが務めた。
撮影は、国宝や重要文化財に指定された場所でも行った。圧倒的なスケールで描かれているという。
本作のプロモーションで札幌に訪れた大友啓史監督にインタビューを行った。
監督キャリアで初めての出来事
――脚本を初めて読んだときの印象は
大友 : 30年ほどの僕のキャリアの中で、初稿の段階で撮影をしたいと思ったのは初めて。それくらい完成度の高い脚本に仕上がっていました。
通常であれば、ここから疑問が残った部分や、役の感情が反映されていないところを、脚本家と打ち合わせしたり、時には自分で手を入れていったりします。
しかし、細かい部分をのぞき、今回はすぐに準備を始められると思ったんです。
――主人公の信長は、愚か者を意味する「うつけ」だったのではないかと、一般的に言われていますが。
大友 : 常識から外れたことをすると、すぐに「うつけ」と扱われてしまう部分があったとは思います。
実際に映画を見ていただかないと伝わらない部分があると思いますが・・・・・・。一例を挙げると、本作冒頭、信長と濃姫が初夜を迎えるシーンがあります。当時のしきたりでいうと、元服を済ませているとはいえ、この時の信長は、男子高校生と同い年くらいです。
正装を気崩し、虚勢を張って背伸びしたり、下ネタを口走ったりもしますが、そのくらい普通じゃない?という見方もできると思うんです。
当時のしきたりに染まらず、気持ちをストレートに伝えられる性格だったからこそ、信長の革新性が生まれたのではないか、と思ったりもしますね。
2人で会社を経営していたのに……
――物語では妻・濃姫が非常に大きな存在として描かれています。
大友 : 財界さっぽろさん的な視点を交えて、この映画を端的に解説すると、愛知県(尾張)の暴走族のリーダーがさまざまな経験を経て、大企業や国のトップになるみたいな話なんですよ(笑)。その過程で、六本木ヒルズにビル(=城)を建てちゃったみたいな。
そこに欠かせない存在だったのが濃姫です。家臣が京都制圧を反対したときも、彼女の助言で上洛を成功させます。経営者にとって、いかに〝パートナー〟とか〝良妻〟が大事かという話にもつながると思います。
あの時代は、政略結婚が、世を生き抜くための方法でもありました。戦国武将からすれば、家のことも仕事の部類だったはずなんです。
今に比べて男尊女卑の傾向も根強かったでしょうし、確たる事実は分かりませんが、妻に才知があるか否かも、当時を生き抜くにはとても大事な要素だったと想像します。
――信長と濃姫の2人で天下を目指すストーリーになっています。
大友 : 濃姫が、父・斎藤道三と見た天下統一の夢を信長に託す。男の夢を妻がサポートするのではなく、妻の夢に男が乗っていく。数ある信長作品の中でも新しい切り口の映画になっていると思います。
そして、その夢の先には何があったか・・・・・・。これも財さつさん的な視点で例えますね(笑)。
ある会社を2人で経営していたとします。お互いに意見を言い合いながら方向性を決め、事業規模を拡大してきました。しかし、地位が確立してくると、片方が「お前は口をだすな」と言い放つわけです。この関係性の破綻で、滅びの道へ進み始めるという感じです。
業績が一番いいときに、会社として崩壊が始まっているケースもきっと多いですよね。それに気づかず、他業種に手を出して失敗するとか。何事も調子に乗り過ぎると、神様はそこに目をつけて、思いがけない試練を与えてくる。
信長と濃姫もまさにそのような形でした。織田の勢力が拡大するにつれ、闘いに明け暮れる信長と、妻・濃姫の心の距離が離れていきます。
――その後、冷酷になっていく自身に悩む信長も描かれていますよね。
大友 : 人間はどこかで失敗に気づく瞬間があります。この話の面白いところは、レジェンド(信長)とバタフライ(濃姫)が対等なパートナーというところです。
結局、関係性に優劣は存在しません。2人の距離感の変化を意識しながら運命に翻弄される信長と濃姫のドラマを充分に楽しんでいただきたいですね。