【特別インタビュー】北の繁華街・ススキノの“明日”を語る(2)大久保次朗 東急不動産 開発企画本部開発第二部統括部長「繁華街に一日中過ごせる空間を創出する」
ススキノの食を新たな形で表現
――ラフィラ跡地の再開発事業の中心的な役割を、東急不動産が担っています。事業は竹中工務店、イトーヨーカ堂、地元のアインファーマシーズとキタデンとの共同事業です。新ビルの青写真を教えてください。
大久保 : 階数は地下2階地上18階、のべ床面積は5万3378平方㍍、高さ78㍍の大型複合施設になります。開業は2023年秋を目指しています。
地下2階から4階まで商業施設となり、イトーヨーカドーの食品スーパー、アインのコスメ&ドラッグストアなどが入居予定です。このほか、建物にはTOHOシネマズによるシネマコンプレックス、東急ホテルズのホテルが入る予定です。
施設の1つの特徴として「食」というものを意識しました。地下には、地下1階のマルシェを含むフードゾーンを、3、4階にはエンターテインメント性のある飲食ゾーンを設けます。歓楽街という、もともとのススキノのイメージを新たな形で表現できればと思っています。
――建物内には人が集える広場を設けます。
大久保 : 2階から3階までの一部スペースを多様なシーンを生み出す屋内外広場にします。ススキノの中心部で、気軽に多くの方がとどまれるスペースはなかったと思います。そういう楽しみも提供していきます。
外観で言うと、新たなススキノの玄関口をつくることを意識しています。ススキノ交差点の象徴でもあるニッカウヰスキーの看板と対になるランドマークをつくります。札幌、ススキノと言えば、という建物にしたいと考えています。
――道外から見たススキノの魅力は。
大久保 : 私見も入りますが、魅力はなんと言っても、遊びの文化ではないでしょうか。そして、飲みの文化ですね。北海道イチの歓楽街、飲食街であり、札幌の観光名所でもありますし、多くの観光客が足を運んでいると思います。
一方で、地元の方々も、生活シーンの中で、飲食店やナイトスポットを楽しんでいる。地元民と観光客、それぞれに対しての魅力があるのではないでしょうか。
今回、再開発事業を検討するにあたり、地元の方々とも情報交換する機会を設けさせていただきました。ススキノはもともと夜のイメージの強いまちですから、ディープなイメージを持つ方々がいました。一方で、ステータス感を抱くという声もありました。
そこにススキノのポテンシャルがあると感じました。昔は繁華街としての活気が今以上にあり、平日も人の肩がぶつかるくらいにぎわっていたそうです。新ビルを建設することで、そういった、かつてのススキノ以上に人が集まるまちにしていきたいと考えています。
まちのにぎわい、機能に貢献する
――あらためて、どのような建物を目指しますか。
大久保 : 新ビルの果たす役割としては、ススキノらしい部分をしっかり残しながら、昼間の時間帯を含め、一日中過ごしていたただける空間をつくり出すことだと思っています。
たとえば、シネコンが入ることで、来館される客層を広げることができると考えています。TOHOシネマズ新宿は15年、歌舞伎町にオープンしました。以降、歌舞伎町に来られる方の年齢層や時間帯も幅広くなったといわれています。
ススキノでも同じようなことが期待できるなと考えています。屋内外広場の設置もそうです。何よりにぎわいを創出していきます。そして、建物内だけではなく、そのにぎわいを〝外〟にも波及させていきます。
地域の活性化に寄与し、その中で、インフラというか、まちの機能としても貢献していきたい。建物は地下鉄すすきの駅と直結します。施設内には貫通通路を設け、商業店舗の営業時間外も地下鉄運行中は通行可能とします。まちの回遊性を高めることが目的です。これによって、公共交通機関への乗り換えなど、利便性も向上します。
月寒通には路線バスの停留場があり、新ビル1階の屋内に待合所を設置します。風、雨、雪をしのげ、バスの待ち時間を快適に過ごせるように整備します。
このほか、共同荷さばきスペースを設けます。配送業者は、周辺の店舗に商品を搬入する際にも利用できます。路上駐車の抑制に効果があると考えています。
建物は、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)の「ZEB Ready」認証を取得しました。これによって、省エネ対応のビルになります。長い目で見て、まち全体の環境意識が高まることにも貢献にしていきたいですね。