【特別インタビュー】北の繁華街・ススキノの“明日”を語る(1)大島昌充 すすきの観光協会会長「単なる繁華街ではなく、重要な観光資源」
小口の宴会需要は回復してきている
――札幌中心部において、飲食店やカラオケ店など各業種の客引きを禁止する条例が、7月から全面施行されました。ススキノの地元のみなさんもかねてから、客引き防止を強く訴えていました。
大島 : コロナ前、ススキノだけでなく全国の繁華街で飲食店の客引きが増えてしまい、困っていました。
ススキノでは以前から、クリーンすすきの協議会が中心になって活動を展開し、呼びかけを行っていたものの、以前の迷惑防止条例では罰則規定がありませんでした。今回の条例では罰則があります。
――ススキノ地区では新たな条例の効果は出ていますか。
大島 : エリアごとに現状の情報を観光協会にいただいており、地区によって減少幅に違いはありますが、ススキノでは大幅に客引きが減りました。
条例の施行前と比較すると60%減というエリアもあります。確実に効果が出ていると言ってもいいでしょう。
それでも、いたちごっこの側面はあります。
――いたちごっこというと……
大島 : 見回りや取締りをしていただいておりますが、客引き集団の面々は「ナンパしているだけ」などと言って逃げるケースもあるそうです。
また、彼らは女性のスカウト行為もやっており、場所によっては、見回りの目が届きにくい深夜にスカウト行為をしているケースがあると聞いています。
――条例に対する地元の反応は。
大島 : 地元の方々からは「よかった」という反応が多い。とりわけ夜の店で働く女性たちからは「安心できる」という声をいただいています。
――他県の繁華街などから、客引き防止条例についての問い合わせなどは。
大島 : ええ、「どのようにやったのか教えてほしい」といった声をいただいております。
――さて、新型コロナ感染症が広がってから3年が経過しました。現在のススキノの現状は。
大島 : 若い世代の方が多くススキノに足を運んでいる感じですね。若者向けのお店、例えばニュークラとかは悪くないと思います。
さまざまな施策で、旅行が活発になってきました。ご家族やご友人と旅行で札幌に来られ、ススキノなどで飲食をするニーズは今後、増えてくるでしょう。来春には、卒業旅行の需要も戻ってくると期待しています。
ただし、会社や団体単位での大口の宴会は、まだコロナ前の状況に戻っていない印象です。
会社や団体などの大勢でススキノの店で1次会を楽しむ場合、そこからグループが枝分かれして、思い思いの店に流れていく。ですから、2次会、3次会を目当てとする店はまだこれからという感じです。
一方で、ご家族やご友人などが集まって楽しむ小口の宴会は、以前よりは戻ってきていると思います。
――大島さんご自身も、ススキノでよく楽しむのですか。
大島 : もちろんです。先日も小学校の同窓生同士で飲みましたよ。
――飲みニケーションという言葉がありますが、一緒にご飯を食べ、お酒を共にすることは楽しみ以上のものを得る機会でもあると思います。
大島 : そうですね、私自身、ススキノで得たものはたくさんあります。よい友だちや仲間、仕事につながるコネクション、淡く小さな恋とか……でも、ススキノで痛飲して失ったものもあるけれどね。
――繁華街には人間ドラマがありますよね。旧友にバッタリと再会したり……
大島 : 私の場合はお店をやっていますから、そういう再会の機会には恵まれています。旧友が店にふらりと来たりして。
飲みニケーションと言えば、経営する「家庭料理 大助」には、近くのマンションの住人や地元の人が多く来られ、常連客がとても多い。ススキノには、そういうコミュニケーションの場でもある店が少なくありません。
「アイスワールド」開催に向け準備中
――ススキノの玄関口にあったラフィラの跡地で、新ビル計画が進んでいます。地元のみなさんの期待は大きいのでは。
大島 : 新しい商業施設ができることで人が集まり、にぎわいができる。ラフィラの時と同様に、新しいビルも地下鉄すすきの駅と直結されます。札幌市はすすきの駅のコンコースの改修を決めました。
――地下鉄駅のアクセス向上は、地元サイドが熱心に提案されたと聞いています。
大島 : 駅のコンコースや地下の広場は、待ち合わせ場所として多くの人に利用されています。ところが実は、すすきの駅のコンコースなどは約50年前にできてから1度も、抜本的なリニューアルがされていません。
そこで今回、地元町内会が中心になって市側に働きかけをしました。バリアフリーの観点から、エレベーターが新しく設置される予定と聞いており、地上と地下のアクセスがさらによくなるでしょう。
札幌市長の秋元克広さんは以前からススキノを、単なる繁華街ではなく重要な観光資源と考えてくれています。私たち地元も一緒になって、ススキノの魅力をさらに高めていきたい。先ほど話題に出た客引き防止も、そうした思いからの取り組みです。
――来年2月、さっぽろ雪まつりが開催されます。同時期に行われる「すすきのアイスワールド」は昨年、一昨年と自粛になりました。調理人がこしらえた氷の彫刻は、その時期のススキノ名物とも言えます。今回はどうなりますか。
大島 : 開催する方向で検討を進めてはいますが、まだ内容については決めておりません。11月中旬に「アイスワールド」の第1回目の打ち合わせが行われることになっており、その後、内容を詰めていくことになります。