北原陽介 リーフ社長

©財界さっぽろ

北海道ブランドを世界へ。スマート農業が創る未来

 北海道は、広大な敷地面積を誇る日本有数の農業地帯だ。しかし、農業従事者の高齢化や後継者不足の深刻化により、その立ち位置も危ぶまれている。農業施設の設計・施工で農家を支えてきたリーフの北原陽介社長に、北海道の農業業界の今と未来を聞いた。

――リーフの事業内容を教えてください。

北原 : 農業施設の設計施工がメーンです。中でも、農業先進国と言われるヨーロッパ産の温室の施工を得意としています。
 例えば、オランダの農業は施設園芸が盛んで、日本よりも施設の大規模化やスマート農業の活用が進んでいます。日本国内では受注生産となるような、大型かつ先進的な温室や資材が大量生産されており、比較的安価に仕入れることができるのです。日本国内では導入事例が少ない最新型の施設も手掛けました。
 施設園芸では天候に左右されずに生産ができます。雪が降る北海道でも当社の技術を積極的に普及させていきたいです。

――北海道の農業の実情は。

北原 : 道産の農作物は、安心安全で何よりおいしいです。しかし、地域によってはブランド力や発信力の弱さという課題も抱えていると思います。
「十勝産」や「真狩産」「ニセコ産」などと聞くと、それだけで購買欲をそそられますよね。これがブランド力です。北海道には、こうした地域ブランド力が強く、高い売り上げをキープする地域もある一方で、その他の多くは食べていくので精いっぱいだといいます。つまり、強いブランド力を持つ地域と持たない地域の2極化が進んでいるのです。
 ブランド力を高めるためには、発信力を強化しなければなりません。道産農作物の安全性の高さやおいしさは世界にも通用するはずです。農家が一丸となり、〝北海道ブランド〟として、もっと世界に発信していくことで、2極化が進んだ現状を平準化し、ブランド力の底上げにつながっていくのではないでしょうか。
 一方、担い手不足も深刻化しています。後継者がおらず廃業する農家が多いことは、皆さんもご存じだと思います。これも、発信力の弱さが原因の一つに挙げられるでしょう。
 また、地域ブランド力が強い農家であっても、担い手がいなくなれば廃業に追い込まれます。廃業農家が増えると、せっかくの地域ブランドも損なわれてしまいます。これは本当にもったいないことです。次代のための取り組みをが重要になってくると思います。

――具体的な提言は。

北原 : 企業型経営へのシフトです。農作物は天候や災害の影響をもろに受け、年によって出来高に差があります。また、農家の多くは農作物を農協に出荷するため、価格決定権を持ちません。天候や災害、需要と供給の仕組みで相場が左右されるため、経営計画を立てるのが難しいのが現実です。
 しかし、『天候に左右されない設備投資をする』『価格決定権を持ち生産・販売まで行う』『商品化して輸出する』といった計画的な経営にシフトすることで、安定的な収益が期待できます。安定志向が強い若者の新規就農者を増やすには、こうした取り組みが重要です。
 当社では『天候に左右されない設備投資をする』という点において、先端技術を駆使した環境制御装置を搭載する、いわゆるスマート農業を取りいれた施設の施工など、省力化や収穫量の増加に微力ながら貢献しています。ぜひ活用してほしいです。

――今後、どのように北海道の農業に貢献していきますか。

北原 : 日本は世界有数の建築技術を有していますが、農業に関しては後進国というイメージを持たれています。当社では、海外におけるハウス建築のスーパーバイザー案件を積極的に受けています。その中で、農業建築や品質管理の技術力を世界に発信し、イメージを払拭していきたいです。
 また今後は、農家のブランド力を高め、担い手不足を解消できるようなポータルサイトを作りたいと考えています。私は札幌市立高等専門学校のインダストリアルデザイン学科出身で、当時の同級生はデザイナーやライターの道へ進んでいます。共同で開発を進めていく計画です。

――自社の人材確保にも注力していますね。

北原 : 北海道の農業を支えていくためのさまざまな取り組みに着手できるよう、福利厚生を充実させています。
 具体的には、「アドベンチャー支援制度」という制度を導入しています。これは、自社で保有するキャンピングカーやボートの貸出に加え、2日間の休暇取得、船舶免許の取得補助をするものです。社員の家族サービスを支援する仕組みがあっても面白いのではないかと思い整備しました。休日は家族にかっこいい父親像や夫としての威厳を見せられるチャンスです。プライベートでも社員には充実した日々を過ごしてもらえるように、今後も社員の働きやすさを追求していきます。

きたはら・ようすけ
1980年北広島市生まれ。2003年に札幌市立高等専門学校インダストリアルデザイン学科卒業後、北原園芸に入社し、建設工事や農業生産に従事。07年にリーフを開業し、16年に法人化。現在に至る。

こちらもおすすめ

関連キーワード