松下幸之助 松下電器産業会長【1968年新年号】

©財界さっぽろ

ホテルの立派さに驚いていた松下幸之助氏(左)

後継者は神の授かりもの、北海道の〝明るい面〟をPR

〝経営の神様〟といえば、誰もが松下幸之助の名を思い浮かべるだろう。
 松下電器産業の創業者で、英知と洞察にあふれる数々の言葉は、現代を生きる経営者たちの道標となっている。
 1967年末、松下が北海道を訪れた際、本誌のインタビューに応じている。場所は札幌グランドホテルだった。
 戦後、北海道を訪れたのはこの時が2度目。記事によれば、松下は生粋の旅行嫌いだったという。
 以前訪れた時と比較して、札幌の発展ぶりに大いに驚いた様子。その上で、松下は道民気質の機微に触れていた。
「北海道の人は、開拓精神が旺盛のようですな。北海道をもっと発展させるために、北海道の人は〝本州より北海道のほうがいいんだ〟と、もっともっと宣伝したらと思うんですよ」
 さらに海外を例にあげ、話を進めた。
「スウェーデン、ノルウェー、フィンランドの北欧諸国と北海道は、緯度ではあまり変わりませんな。多少あちらの方が温度は高いらしいが、寒い国ほど発展するんですよ。ところが、テレビなんかをみると、北海道の困難なところだけを取り上げ、〝いやー北海道というところは、どえらい困難なところや、こりゃいけんわ〟ということがでますのや(笑)」
「ですからもっと北海道の〝明るい面〟を取り上げたらよいと思いますよ。北海道の人はこの点にもっと金をかけて、PRしてもいいんじゃないかな」
 後継者づくりの問題で、頭を悩ませる経営者は少なくない。
 松下はインタビューで、現代でも通ずる胸がすく言葉を残してくれていた。
「後継者は神の授かりものです。つくろうとしてできるものではありません。毛利元就が子どもを3人を呼んで、その教訓を与えていますな。これは『後継者づくり』の具体的な事例ですよ。しかし、本当の意味での『後継者づくり』は、人間の力ではできませんよ。自然です」
「いい後継者があったなら、エジプトはもっと発展していたはずでしょう。5000年前、一番文化の高かったエジプトが、現在ああいう状態でしょう。それほど後継者づくりはむずかしいものです。人間の小さな知恵で〝ああするんだ、こうするんだ〟といっても、これはあくまで希望に過ぎない。私はこのことで、頭を悩ません方がいいと思うんですよ」

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