岩佐凱実 富士銀行頭取【1966年4月号】
北海道を発展させるために、〝政経分離〟はそぐわない
「芙蓉グループ」は、旧富士銀行の融資企業を中心とした企業集団。その創設に尽力したのが岩佐凱実だった。岩佐は全国銀行協会(全銀協)会長、経済同友会代表幹事、経団連副会長などを歴任。
そんな岩佐は頭取時代に本誌のインタビューに応じている。
取材の中で、北海道の企業誘致が遅々として進まない理由にこう言及した。
「北海道のよさをじっくり売り込むことが必要だ。あれだけの地域を開発するからには、もっと気長に時間をかけて、しかももっと一貫した強い方針を貫いていくべきだ。とにかく日本人は気が短すぎる。目先だけの効果に期待をかけすぎる嫌いがある。それがある意味で、北海道の開発を阻んできた要因だったと思うね」
岩佐は北海道を発展させるために、〝政経分離〟はそぐわない、と指摘する。
「まだまだ開発途上にある北海道の場合は、官民こぞって1つの目標に立ち向かう協調性を持つべきだ。その力の結実が世論となって、北海道の政、財界の眼に関して、心をひきつける導火線になるわけだからね」
60年代後半、日本は不況にあえいでいた。そんな時代を生き抜く経営者に、次のようなメッセージを送っている。
「超高度成長からきた経済現象面のアンバランスをときほぐし、経済構造面の手直しを強く押し進めなければならない。こういう非常な難題を抱えている現実に立ち、経営者は企業の自己責任の原則に徹し、それに対処するしっかりした気構え、心構えを持つべきです。たとえ不況がやや好況に向かおうとしても、あくまで自らに厳しい姿勢で企業経営に専念する。そしていま、高度成長時代に温存された脆弱な経済体質を、改善強化するときであることを確信します」