【札幌、小樽、旭川】雪国の選挙と除雪の悲喜こもごも

©財界さっぽろ

秋元克広氏

 雪の多いまちでは、除排雪への向き合い方がリーダーを選ぶ際の重要な判断基準となる。雪の多いまちの首長を例に、雪国の選挙と除雪の実例を紹介する。

 久しぶりに大雪が続く札幌市。2015年市長選で当選し2期目の秋元克広氏は「持続可能な除排雪」を公約に掲げてきた。
 当時、秋元氏の対抗馬は市による生活道路排雪の全額負担を打ち出したが、大きな争点とはならなかった。
 ただ、秋元市政下で年間降雪量が平均を超えたのは16年度の1度だけ。
 除雪オペレーターや排雪用ダンプの減少が続く中、公約に基づく新しい除雪方法を一部で試行しているものの、市内の除雪業者に言わせれば「これまでより除排雪が良くなるわけではなく、基本的に撤退戦」だ。
 今年度はすでに昨年の年間降雪量を超えており「現在の除雪体制の限界を市民は知った。3期目出馬となれば、除雪が大きな争点となる可能性は高い」(前出業者)と見る向きもある。
 除雪改革を主張して市長に上り詰めたのが、前小樽市長の森井秀明氏。
 公約に「きめ細やかな除雪」を掲げ、除雪車の出動基準を降雪15㌢から10㌢に引き下げた。
 だが、除雪について助言をもらうために市長権限で雇用した参与が自身の後援会関係者であったことから、市議会が猛反発。市内7地域の除排雪業務入札の要件を急に変更して混乱を招いたほか、町内会の排雪作業時にダンプを貸し出す制度を、後援会幹部が経営する企業の受注量を増やす内容に改悪するなど、利益誘導ともとれる改革を乱発した。
 さらには予算節約のため排雪を抑制し、一部の市道は森井氏や後援会幹部らが直接検分して中止した。
 これに対し「きめ細やかなのは除雪だけで排雪は改悪だ」と市議会が追及。路線バスが未排雪で通れず迂回運行する事態となると、市民の批判も高まった。
 森井氏はその後、市政運営に行き詰まり辞職。出直し選挙では、除雪正常化を訴えた現市長の迫俊哉氏に完敗し、表舞台から去った。
 他方、同じ除雪改善を訴えて初当選を果たしたのが、旭川市長の今津寛介氏だ。
 昨秋の市長選で今津氏は「生活道路の排雪倍増」を「すぐやる」公約に掲げた。
 市内の生活道路は1シーズン1度が基本だが、これを2度にするもの。昨年末に4億3000万円の補正予算を組んで実行に移した。
 だが予算の出所が、たまたま国家公務員給与引き下げに合わせて削減した職員の人件費で、次年度以降の予算確保は見通せない。
 ある保守系旭川市議は「市長の公約には実現に疑問符がつくものが多い」とした上で「自分が巻き込まれないよう、市長には是々非々で臨みたいのだが…」と不安視している。

©財界さっぽろ
森井秀明氏
©財界さっぽろ
今津寛介氏

こちらもおすすめ

関連キーワード