「売り手市場どころか作業〝拒否〟が当たり前になる」除排雪業者のホンネ

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上篠路地区の雪堆積場

 除排雪業務に従事する除雪オペレーターが減り続けている。少雪でも補償をするなど行政も対応策を取るが、末端の作業員やダンプの運転手に行き渡っているとは言い難いのが現実という。業者サイドから見た行政への本音を聞いた。

5年後に作業員2割減の推測

 ショベルカーや路面を整地するグレーダー、ロータリー車など、除雪用機械を操作する除雪オペレーターや作業員の人手不足が指摘されて久しい。
 札幌市の推計では、2017年に2056人いたオペレーターは10年後の27年に1640人と2割減少する。
 除雪に従事するそのほかの作業員も、17年に1884人いたものが同じ27年には1523人に減少するとされる。
 国の調査では、道内の建設業従事者に占める55歳以上の割合は全国平均より1割多い。
 一方、札幌市が除排雪を行う道路の総延長は5400㌔、歩道は3000㌔に及ぶ。
 高齢の作業員がこの距離を2割少ない人員で除排雪する未来が、あと5年後に迫っているというわけだ。
 若者の建設業離れや2000年代の自民党・小泉純一郎政権時の公共事業削減、民主党政権時代の開発予算半減、さらには東日本大震災後の復興需要など、人手不足の原因はさまざま指摘されている。
 季節労働である除雪だけのために業者がオペレーターを確保しておく負担を軽減する意味合いもあり、道開発局や札幌市などは、夏の草刈りや路面補修と除排雪をセットにして発注するのが基本だ。
 業者側も、除雪車に特殊な機械を付けて草刈りをするなど、除雪の技術を夏も活用できるようにするといった工夫をしてきた。
 除雪作業自体についても、運転者と安全確認の2人が乗るものだったグレーダーを1人乗りで運用するなど、現場レベルでの対応は少しずつ進められている。
 それでも作業員が減り続ける理由の一端について、札幌市内のある除雪業者は「末端の作業員は、出動回数に単価を乗じた金額以外に、まとまった実入りはない。札幌は気候の関係でシーズン初めと終わりは南部で雪が降り、シーズンまっただ中は北区や東区で雪が多くなる傾向がある。近年の少雪で、シーズン真っ最中に月収10万円にも満たない収入のダンプ運転手もいたと聞く。冬期間は出動に備えて酒も飲めず待機しているのにそれでは、人員確保も何もない」(別の除雪業者)と憤る。
 札幌市の道路維持除雪業務は、除排雪の出動回数や内容などさまざまな項目ごとに規定の費用を設定し、実際にその作業をした回数に応じて費用を支払う。
 一方の元請け業者は、人員の確保や除雪機械の都合などの固定費を含めた金額で入札、契約する。出動回数が少なければ実際支払われる費用が減ってしまう。
 これが問題視されたのが、記録的な少雪だった19年度。23ある除雪地区の大半が採算割れとなる恐れがあったため、市は緊急対応策を行い、契約総額の78%まで補償するようにした。
 翌年以降はこの対応を経常的に行うようにもしたが、これはあくまで元請け業者に対しての補償だ。
 別の除雪業者も「下請け業者や個人でダンプを持っているような個人事業主の運転手といった、末端の人員の収入確保にまで目が行き届いていない。人手不足と嘆く前に、札幌市はカネがきちんと現場の作業員にわたる仕組みを考えるべきだ」と訴えている。

雪堆積場が開かず排雪できない

「排雪が遅いのは、堆積場の開いている時間を減らしているからだ。遠いのは仕方ないが、出口を塞いでおいて進むわけがない」
 マンションや商業施設の除排雪を行う民間業者は、こう言って嘆く。
 市では今年度、一般業者の排雪を受け入れる堆積場を30カ所開設している。
 それぞれの運営は、堆積場がある地区の道路維持除雪業務に含まれている。堆積場は持ち込まれる雪の整備など、道路と同様にオペレーターが必要で、人手不足が直撃している。
「今年の年末年始にまとまった雪が降ったが、堆積場は原則閉鎖しており、空いているのは遠隔地の日中だけ。契約するマンション駐車場の雪を持って行くところがなく、本当に困った」(前出民間業者)
 市の公表では、22年度以降も堆積場の開設時間は減らされる予定。24年4月からは労働基準法改正による残業上限規制の猶予期間が建設業で撤廃されることもあり〝出口戦略〟はさらに厳しいものとなる。
「1月以降、民間の除排雪業者にはひっきりなしに依頼の電話が鳴っている。近年は少雪傾向でダンピングも横行していたが、今年はもうどの業者も受けられない。今後、低価格の契約は業者側から解除していく流れになる。質の良い業者は奪い合いとなり、質の悪い客はどの業者にも相手にされず、作業を拒否されることになる」と前出民間業者は予言する。

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