主要都市1人当たり除雪費を一挙公開!

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 今シーズンも多くの道内自治体に除雪の苦情が寄せられている。裏を返せば、それだけ暮らしに密着している事業ということ。そこで札幌市や旭川市など道内10自治体の除排雪費用を、住民1人当たりで計算してみると……

岩見沢で続く官民連携の除雪事業

 雪は天からの手紙。北海道大学の雪博士・中谷宇吉郎氏の有名な言葉である。エッセイ集も出した文才の豊かな科学者らしい、ロマンある表現だ。
 しかし、雪は迷惑な手紙になる時がある。道路や歩道の雪は決まって、道民にイヤな顔をされる。
 雪国の暮らしと切り離すことのできない道路除雪。その歴史をひもとくと、開拓期の車がない時代は、材木で組み立てた三角状の枠を馬に引かせていたという。その後、トラクターなどにプラウを付け、道路除雪が行われていた。
 本道で組織的かつ本格的な除雪が行われたのは戦後とされている。「北海道開発局十五年小史」に「占領軍の要求によって(昭和)20年度の冬から開始され、これが北海道の冬期交通に大変革をきたす端緒となった」とある。
 その後、関係法令の整備が進み、現在のように管理者ごとに道路除排雪を行う形になった。
 ところで一般の公道は市町村道、県道、国道に分けられる。
 道内では、政令市の札幌市は市内の道道の除排雪も行うが、他エリアでは各管理者が除排雪事業を受け持つ。
「本州では、除排雪を含む国道の道路維持業務は基本的に各県が担当し、指定区間だけ国という仕切りになっている」(開発局OB)
 必ずしも行政単独で道路除排雪を担っているわけではない。官民連携の仕組みが各地にある。
 岩見沢市では市、道と商店街や町内会、除雪事業者が協議会を設置し、中心部の一定エリアについて担当している。
 市や道の予算に加え、商店街などが資金を拠出。その分、除排雪がキレイに行われるという発想だ。
 事務局を担う地元の商工会議所の職員は「かなり昔から始まっています。たぶん30年以上前。スタートした当時は注目され、いろんな新聞社が取り上げ、各地から視察団も来たそうです」と話す。
 道内有数の豪雪都市らしい取り組みだ。岩見沢はシーズンの累計降雪量が10㍍を超えた2011年度、陸上自衛隊の支援を受けた。

減少傾向のロードヒーティング整備

この冬、札幌など道内各地が大雪に見舞われ、役所には苦情が殺到した。除排雪は身近な行政サービスだけに、苦情の量も少なくない。政治家も気にする。
 地域の要求を受けて役所に働きかけ、除排雪の便宜を図って票を集めするセンセイもいるとか。
 では、除排雪に各自治体はどのぐらいの予算を使っているのか。
 そこで道内10自治体をランダムに選んで取材した。
 直近5年分の当初予算と各年度のシーズン降雪量に加え、人口から割り出した住民1人当たりの平均予算額(千円以下は切り捨て)を算出した。まとめたのが46㌻以降の図表である。
 ただ、自治体によって除排雪関連予算の組み方は異なる。
 例えば留萌市は、9月に除排雪の実質的な本予算を組む。予算組みを執行のタイミングに近づけ、費用算出をより実態に近づけるため。そのため、図の当初予算は留萌分だけ9月補正を記した。
 自治体によってはロードヒーティングなど、いわゆる雪対策費が含まれているケースもある。
 予算規模が大きいのはやはり札幌だ。
 例年200億円を超す当初予算を組む。中でも大きな割合を占めるのが、雪を堆雪場に運ぶ運搬費で21年度当初ベースで約50億円。意外かもしれないが、除雪より排雪業務の方がお金がかかるのだ。
 住民1人当たり平均では、
留萌市がもっとも高くなった。留萌は雪の多いエリアだ。人口規模は、取り上げた10自治体の中でもっとも少ない約2万人。そうした事情が反映されている。
 全体的な傾向としては予算額が年々、上昇していることが見て取れる。
 また、自治体からヒアリングすると、さらに共通する傾向があった。ロードヒーティング関連費用の縮小だ。
 坂道などで多く用いられ、熱で路面の雪を溶かす設備である時期、一気に道内で広がった。
 ところが、公道における利用はブームが去った。
「電気代も含め、維持費用がとても重い。スパイクタイヤ廃止後、ニーズが高まったが、スタッドレスタイヤの性能が上がっていき、縮小傾向にある」(札幌市のOB)
 もう1点、共通の将来解題が浮かぶ。人口減少だ。
 道路延長は変わらず、人口が減っていくと、住民1人当たりの負担は増していく。
 また、除排雪業務の担い手不足も深刻化している。
 道路は暮らしに欠かせない。雪国では除排雪がされるから、冬もインフラ機能が維持され、経済活動が行える。
 一方で、自治体財政が厳しい中、除排雪予算には現実的な限界がある。天からの手紙である雪の量はある意味、思し召し次第。自治体は毎冬、ハラハラするしかない。

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堆雪場に雪を投げ入れるトラック(上)。大雪の後、狭い道をノロノロ運転する車の列

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