「社員の魅力を引きだし、得意を伸ばす」国井美佐/ゲート社長

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くにい・みさ/1985年名古屋市生まれ。金城学院中学校・高等学校を経て、金城学院大学人間科学部へ入学。卒業後、北海道テレビ放送(HTB)に入社し、MCや報道キャスターを12年間務める。2020年にイベント関連会社「ゲート」に入社した。

 HTBの番組「イチオシ!」でMCも務めた国井美佐氏。4月に「ゲート」を事業承継し、社長を務めている。新人アナウンサーとして受けた学びの経験や、経営者として考える人材育成について話を聞いた。

テレ朝研修ノートは人生のバイブルに

――名古屋の私立学校に通われたと聞きました。私立校にはどのような良さがあると思いますか。

国井 : 私は名古屋にある金城学院という女子校に中学から大学までの10年間通っていました。公立学校との比較はできませんが、人間関係の構築という部分ですごく勉強になったと思います。
 想像をしていただくと分かると思いますが、思春期の女子達がずっと一緒に学校生活を送るわけです。けんかなどはどうしても起こってしまいますよね。仲直りをするのか、はたまた新しい友人の輪を探すのかという点では、すごく悩みながら過ごした時期もありました。
 グループの中でどこに立ち位置を置けば心地よくいられるかであったり、人との距離の縮め方や空気を読む能力は女子校だからこそ学べたものだなと思います。この力は社会人になってからも生かされています。
 10年間という青春時代を共にした仲間の絆は揺るぎないものです。卒業後、社会人になってからも連絡を取り合いますし、金城学院に入学して良かったと思っています。
 個人的には、私立校出身の方は愛校精神が強い印象を受けます。同窓だからという理由で年の離れた先輩や後輩と仲良くなれたり、ビジネスにつながったりすることもあります。

――北海道テレビ放送(HTB)に入社した際、どんな研修を受けましたか。

国井 : テレビ朝日系列のアナウンサーは、入社前に「テレ朝研修」があります。これは全国の新人アナウンサーがテレ朝本社に集結し、缶詰めになって11日間研修をするというものです。基礎的な発声練習から滑舌練習、アナウンサーとしての心構え、照明や音響などの技術的な部分まで全て教わります。
 この研修のすごい所は、現役のアナウンサーから毎日教わることができる点です。教育担当と呼ばれる方はベテランのアナウンサーの方で、その他にも堂真理子アナや下平さやかアナにも教えていただきました。音楽番組「ミュージックステーション」 で見ていた方が目の前にいると思うと、ミーハーな気持ちが湧き上がり、ドキドキしたのを覚えています(笑)
 研修で教わったことはノートにまとめて毎日提出します。1日目 のノートを提出した時に「君たちは何を聞いていたんだ。こんな研修を受けられる贅沢な時間は今しかない。一言一句逃さずメモして、見返したときにわかるようにしなさい」と指摘されました。その後、急いで家電量販店に行き、ボイスレコーダーを買いましたね。研修が終わった後は、みんなで夕食を食べてからホテルに戻ります。そこからノートをまとめ始めるので、睡眠時間は毎日3時間ほど。自分の個性や課題と向き合い続けるので疲弊しました。
 しかし、このノートは私の人生のバイブルになりました。どこを探しても売っていない私だけの教科書です。こんなアナウンサーになりたいといった憧れや希望などもたくさんメモしています。アナウンサー業に疲れたなと思うときでも、このノートを見返すと過去の自分から元気をもらえます。研修仲間とは今でも仲良しです。全国各地に足を運んだ際、その時の仲間とご飯を食べに行きます。人生の豊かさという面でも研修があってよかったなと思います。

「得意な人が得意なことをやる」がモットー

――HTBで12年間務めた後、父が経営していた会社「ゲート」に入社します。

国井 : 父が65歳のとき、私はHTBにいましたが産休に入っていました。色々なことを考え、そのタイミングで、HTBの退職を決意しました。
 私がゲートに入社した時期は、コロナが流行し始めたタイミングでした。2020年はイベントに力を入れる年で、東京の池袋西武本店を皮切りに、大阪のあべのハルカスなどで全国行脚する大型イベントが決まっていました。しかし、ほぼ中止となり、会社としても厳しい状況でした。私ももっと働かねばと覚悟を決め、VRなどの新事業を立ちあげました。
 弊社は、1965年に製版業の会社として祖父が創業し、現在はホームページやイベントの企画運営、映像制作やWEBマーケティングなど7つの手段を用いて広報ブランディングを行っています。
 HTBの報道部門で働いていた時代は毎日、大量のプレスリリースに目を通しました。ニュースバリューがあるものを見つけては取材へ行き、どうすれば視聴者へ魅力を伝えられるかということを常に考えていました。この経験が当社の仕事にも生きています。

――今年の4月、事業承継を行い、社長へ就任しました。

国井 : 私は社長として若輩者ですが、社員教育という面では、社員の自己実現をサポートするということを大事にしています。その理由は私自身が「得意な人が得意なことをやる」をモットーにしているからです。学校教育では苦手を克服することに力を入れている印象を受けます。しかし、会社では得意を伸ばした方がその人も幸せだし、組織としても効率的に回って利益につながると思います。
 私は社員自身が、何が得意で何に挑戦したいかを自己分析してもらい、そこにスポットを当て、経営者として仕事を振ることを意識しています。お客様のブランディングはもちろんですが、社員一人ひとりの魅力を引き出すブランディングをしていくのも社長である私の仕事だと思っています。
 最近は企業だけでなく自治体のの案件も増え、街づくりに関わらせていただく機会が多くなりました。私自身、お世話になった北海道に恩返しできるのが自治体との仕事だと思っています。今後はより多くの自治体や企業を応援できる組織作りを行い、成長させていきたいなと思います。

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