【業種別景況と企業動向】情報/通信/IT

※北海道IT推進協会「北海道通信ITレポート2021」より ※2003~2004年度数値は経済産業省北海道経済産業局「北海道情報処理産業実態調査」による

道内でもデジタル化加速、さらなる可能性も

 テレワークやウェブ会議など、コロナ拡大によって、世の中のデジタル化は加速した。IT・情報産業は北海道でも伸長し続け、総売上高は大台を突破。課題は人手不足だが、少子高齢化が進む北海道、地方都市ではIT産業がさらに拡大する可能性を秘めているという。

 5000億円超。北海道におけるIT・情報産業の総売上高が2021年度、初めて大台に乗った。一般社団法人「北海道IT推進協議会」が毎年調査している「北海道ITレポート」によると、総売上高は12年度以降、右肩上がりを続けている。
 今回、5000億円を突破した背景は、やはりコロナ禍によるデジタル化の加速だろう。テレワーク、ウェブ会議、ウェブ注文によるフードデリバリー……、これらも道内で普及した。
 道内IT産業は首都圏からの受託業務を主力事業とする下請け企業が多いことが特徴。これが道内市場の課題でもあった。もともと給与や福利厚生などの待遇面で、本州市場と差があるためだ。
 また、業界全体としては、人手不足が長期的な懸案事項となっている。これも北海道ではより深刻だ。
「IT業界としては、北海道でもデジタル化が進んだことは歓迎だが、一方で、テレワークが当たり前になってしまった。そして売り手市場に拍車がかかってしまった。札幌にいながら東京の企業に籍を置く。こうした転職組が増えています。道内企業にとっては、このような人材の流出はマイナスです」(あるIT企業経営者)
 近年は非IT企業が社内に専門部署を立ち上げるケースも増えた。さらに、開発したシステムを社内利用だけではなく、一般販売するところも出始めているという。そのため、今後も人材不足は続くという。
 道IT推進協議会では当然、人材の確保と育成に注力している。
「人材の採用・育成はこれまで①新卒②Uターン・Iターン③外国人労働者を対象者としてきました。それらのほか、新たに第4の選択肢として、非IT企業の従事者も加わることにしました。ITに関連する仕事をしてみたいというマインドは高まっています」と道IT推進協議会の入澤拓也会長は語る。
 同協議会では、基礎技術がなくても、ソフトウェアを開発できるノンコードプログラミングのセミナーなどを開催。受講者は増えているという。
 道内情報産業と主要産業の製造品出荷額を比較すると、食料品、石油・石炭製品に続く、3番目に位置し、出荷額合計の8.1%(20年工業統計情報)を占める産業規模となっている。ちなみに前年の割合は7.6%だった。
 ギガスクール、スマート農業……など、IT・情報産業はどの業界にも精通する。他業界との垣根は今後、低くなっていくだろう。
 道内のIT産業の従業者は現在、約2万4000人。これが5万人に拡大すれば、同協議会が掲げる「2030年までに道内1兆円市場」が見えてくる。
「他業界では省力、省人化を推進させていますが、IT業界は完全にそうはならない。ITはその仕組みをつくっている側です。そこに人材・資金を投じることは間違いなく北海道経済の貢献につながっていくと考えています。デジタル技術を使って働き方の効率化を目指すDXも少子高齢化が進む北海道、地方都市には不可欠。ITは道路と同じようにインフラなんです。今後ますます我々の生活と近くなっていくでしょう」と入澤会長は語る。

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