【業種別景況と企業動向】小売/製造/流通

円安メリットを生かせる、北海道の食の輸出

 円安が急速に進む中、政府は為替メリットを生かせる産業の強化を強調している。道内の場合、食の輸出の好機にもなり得る。もともと本道は農水産業が盛ん。食の北海道ブランドは東南アジアで抜群だ。一方、円安が燃料高につながっており、運送業界の懸念材料になっている。

 現在、3つの要因で日本経済が揺さぶられている。いわゆるコロナ明けの経済活動活発化による各原材料の逼迫、ウクライナ戦争に伴う燃料高と経済制裁の反動、そして急激な円安だ。さらに業種によっては人手不足も加わる。
 これらの結果、目下、値上げラッシュが起きている。
 小売業界では値上げに敏感な消費者をつなぎとめるため、大手チェーンは割安なプライベート商品に力を注ぐ。
 道内に本拠地がある主要スーパーは前期も好調な売上高を記録した。アークスは5775億円、イオン北海道は3216億円、コープさっぽろは3097億円だった。
 主要スーパーは新型コロナ感染拡大時も巣ごもり需要をうまく取り込み、好調を維持した。他の小売業種でも、コロナ禍で生まれた新たな需要に即応し、業績を伸ばす企業もあった。
 逆に、コロナ禍で深刻なダメージを負った小売業態の代表格が百貨店である。
 10年単位で俯瞰すると、ユニクロなどのカテゴリーキラーの登場やeコーマスの普及で、求心力が落ちていた百貨店。コロナ前までは中国人らのインバウンド需要が脹らみ、百貨店に恩恵をもたらし、ひと息ついていた。
 しかし、この2年はインバウンドというブースターが消え、百貨店はどこも大苦戦。
道内百貨店の両雄である大丸札幌店、札幌丸井三越は2021年の年間売上高は500億円を割り込んだ。19年と比較すると、落ち込みは200億円近い。
 今後、百貨店の業績回復ができるか否かは、ひとえにインバウンドがいつ戻ってくるかにかかっている。その点、円安はプラス材料になる。
 今後もアメリカの利上げが進む見込みで、円安傾向は続く可能性が高い。
 そんな中、政府は円安メリットを強調し、インバウンドと共に強化が叫ばれているのが食の輸出である。
 海外の日本食ブームは定着し、先進国を中心にラーメン文化も普及している。道内は食品関連が製造業に占める割合は高く、チャンスをしっかりとらえたいところ。越境ECに取り組む中小メーカーも徐々に増えているという。
 また、本道はもともと農水産物の輸出が盛んなエリアだ。
 21年の税関別輸出額シェアで見ると、道内と東北の一部を管轄する函館税関が全国の約68%を占め、2位の東京税関(約15%)を大きく引き離している。函館税関のトップは12年連続。
 立役者は魚貝類だ。中でもほたての貢献度が非常に高い。ほたて輸出は21年、約9万5700㌧、約421億円。統計上で比較可能な1988年以降、数量、価格ともに過去最高となった。
 水産関係者によると、各国で経済活動が活発化した影響だという。
 最後に小売、製造と密接に絡む物流分野について、道内の貨物輸送量で見ると、トラックと船の利用が大きな割合を占める。
 この2つの主要輸送機関を苦しめているのが、止まらない燃料高だ。
 運送業界では、燃料高に応じた適正な運賃・料金のアップを求める運動を継続的に行っている。ただ、裏を返せば、なかなか実現できていないからこそ、運動を続けているとも言える。
 さらにドライバー不足が叫ばれている中、働き方改革関連法の影響が2年後に加わる。
 運送ドライバーは現在、猶予措置として、年間時間外労働時間の制限対象から外されている。しかし、24年4月1日から、ドライバーの年間時間外労働が上限960時間になる。物流24年問題と言われ、運送業界のみならず、産業全体に大きな影響を与えると懸念されている。
 とりわけ広大なエリアに都市が点在する道内は、物流効率化が喫緊の課題だ。環境負荷を低減するモーダルシフトの観点も含め、今後、道内物流の改革は熱を帯びていくだろう。

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