松野 知之【日本銀行札幌支店長】

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地球温暖化への取り組みに地の利

――北海道経済は、コロナにより大きなダメージを受けました。ポストコロナ、ウィズコロナを考えた上で、経済活性化には何が大切でしょうか。

松野 :  北海道といえば、やはり観光、食、そして第1次産業です。その分野では日本の中で一番といっていい競争力もありますし、同時に世界の方々から見ても魅力のある場所です。
 さらに、これだけ自然豊かな地域です。脱炭素といった地球温暖化への取り組みでも、地の利を持っています。今後の成長がより期待される分野で、活性化のためには、よりブラッシュアップしていく必要があります。
 那覇支店長時代、海外輸出のマーケットを調査しました。もちろん北海道でも食関連の輸出には大きな可能性を秘めています。それ以外の工芸品の分野でも、世界に通用するような製品が眠っているかもしれません。
 物理的なモノではなく、北海道の企業が保有するデジタルコンテンツを海外に売り込むこともできます。新しいマーケットとして確立していけば、その可能性が広がっていくのではないでしょうか。

――そうした中、日銀の役割を教えてください。

松野 :  まず、金融政策についてです。新しくチャレンジされる方にとっては、金融が緩和されている状態は、後押しする環境です。当行としても、そうした状況を推進していきます。
 全国の支店の職員は本部以上により経済の現場に近いといえます。地元の経済界、中小企業の方々と直接対話をしています。そうした声に耳を傾け、私どもとしてもアイデアを出したりしていきます。
 私個人としては、ほかの地域での経験で、北海道勤務で参考になることもあります。
 たとえば、沖縄の支店長を務めていたご縁で、県内の経済界の方々を、私がかつて勤務した大阪や名古屋にご案内しました。広島の方を沖縄にお連れしたこともあります。
双方の交流、意見交換の場も設けさせていただきました。

スポーツは地域経済発展の起爆剤になる

松野 :  広島にいた16年~18年は、広島東洋カープがセ・リーグ3連覇した時期で、まちは大変盛り上がっていました。いまやスポーツビジネスは地域経済活動を支える大きな柱です。
 広島のほか、北海道から沖縄まで野球、サッカー、バスケットボール等のスポーツビジネスの関係者に集まっていただき、地域活性化を議論したこともありました。
 北海道にもプロスポーツチームが複数ありますので、地域活性化の起爆剤になると思います。
 今回、全国の知り合いに北海道への赴任を伝えると、「いいね」「ぜひ、行きたい」と、多くの声をかけていただきました。
 コロナの感染拡大で厳しい状況に立たされたのは、全国どこも同じです。
 北海道と同じ悩みを持っている地方都市の方々が、「北海道の人たちと一緒に取り組めることはないのだろうか」と言ってくださいます。議論してみたいと考えている方も多いはずで、そうした場もつくっていきたいです。
 経済発展の上では、技術革新、インフラの整備は大切になります。そうしたことに加えて、その地域を愛して、その地域をよりよくしたいという強い思いがなければ、真の意味での地域活性化は難しいと考えています。
 私の周りだけでも、全国各地に〝北海道ファン〟が多くいらっしゃいます。私自身がそうしたみなさんと北海道の橋渡し役になれればと思っています。
 北海道ファンの力を結集させて、北海道が元気になるために力を尽くしていく所存です。

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