友夢牧場
新得町で最大規模の牧場を運営
ふん尿の再利用でSDGsを推進
道内10指の出荷乳量を誇る「友夢(ゆうむ)牧場」。1600頭以上の乳牛を飼育し、年間1万㌧の生乳を出荷する新得町の大規模牧場だ。
生産性の向上と省力化を図り、創業当初から機械化を推進してきた。搾乳においては同時に52頭の搾乳ができるパラレルパーラーを完備している。中長期目標として第2牧場の新設も計画しており、その先には搾乳ロボットの導入も視野にある。
牧場の規模拡大に伴い、ふん尿の再利用にも取り組んでいる。同エリア最速でバイオガスプラントを建築し、現在は3つのプラントが稼働中。ふん尿を発酵させて発生するメタンガスによって発電し、売電する酪農ビジネスの先端モデルだ。
発酵を終えたふん尿は、肥料として活用。新得町内に所有する270㌶もの広大な畑で、牧草や飼料用のトウモロコシの栽培に役立てている。
また、バイオガスが発生する際に生じる余剰熱も無駄にはしない。水との熱交換でエネルギーゼロのお湯をつくり、敷地内で行う水耕栽培に利用している。
「メロンの水耕栽培に挑戦し、18年に『青空メロン』として売り出しました。一般的に糖度が13を超えると一級品と言われますが、青空メロンの糖度は平均16度と高級メロンに肩を並べます。ECサイトでの販売も好調で、20年には新得町のふるさと納税返礼品に採択されました」と植田昌仁社長。
20年からはバナナの栽培もスタート。よりおいしいバナナの収穫を目指し、試行錯誤を続けている。
また、今年3月には収穫後のバナナの葉や茎を円山動物園に寄贈。本来なら破棄するものをゾウの採食行動に役立てる取り組みだ。さらにゾウのふんをバナナの肥料に用いるなど、SDGs活動を続けている。「酪農を多くの人に知ってもらうため、さまざまな取り組みを行っています。酪農業界の発展にも寄与できれば」と植田社長。
燃料費や飼料が高騰する中でも攻めの経営を実践している。既存の社宅に加え、8月には牧場から徒歩圏に新たな社宅を建設した。
「我々酪農家を取り巻く環境は厳しさを増していますが、ここで足踏みはしていられません。引き続き働き方改革を推進するとともに、採用活動を継続していきたい。人や設備への投資を積極的に進めていきます」と植田社長は意気込む。