親子ではじめる〝ダブル終活〟のススメ
我が国は死生観や文化的に、子は親に終活を勧めにくい。しかし、親子共同で行う〝ダブル終活〟こそ、子ができる最後の親孝行ではないだろうか。終活を通じて親と子の相互理解も深まるはずだ。
最後の親孝行〝ダブル終活〟
親が子に無償の愛を注ぐように、子も親に「いつまでも元気でいてほしい」と願うものだが、誰しもやがて〝死〟が訪れる。死生観は国や文化によってもさまざまで、とりわけ日本においては死についての話題は「縁起でもない」とタブー視される傾向が根強い。
子が親に終活を勧めることも例外ではなく、何となく「死を急かしている」と誤解されやすい。打診しにくい雰囲気は否めないだろう。しかし、最後の親孝行として、あえて終活を打診すべきだ。葬式に呼んでほしい人、あるいは呼んでほしくない人もいるだろう。親への遠慮から「事前に話を聞いておけば」と死後に後悔することになる。孝行のしたい時分に親はなし――この後悔は一生つきまとうことになりかねない。
そこで子が親に終活を打診するきっかけとして〝ダブル終活〟を推奨したい。親子ともども終活する新たなスタイルだが、煩雑な作業や手続きを協働で行うことで、頓挫することなくお互いの終活を進められるはずだ。子世代も不慮の事故や病気に備えられる。また、お互いの考えや思いを改めて確認しあえる絶好の機会であり、子ができる最後の親孝行ともいえるだろう。
もちろん、終活のメリットは情緒的な達成感や満足感だけではない。
例えば遺産の相続についても十分に話し合っておく必要がある。親族間の〝争続〟につながるリスクは、あらかじめ取り除いておきたい。当然、墓や葬儀についても事前に目星をつけておくべきであり、同時に費用の〝出どころ〟などもしっかりと確認しておきたいところだ。
認知症のリスクも。元気なうちに終活を
さまざまなメディアが終活を取り上げるようになったが、知り得た情報をもとに即、行動に移せる人は少ないのが現状だ。当然、子世代は現役で働く人も多く「忙しいから」「仕事が落ち着いたら」「親はまだ元気だから」と先延ばしにしたい気持ちは理解できる。しかし、事故や病気、ケガによる〝死〟だけでなく、認知症のリスクにも備える必要がある。
厚生労働省によると、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になると予測されている。80代、90代と年齢が上がれば当然、発症のリスクは高まる。認知症になれば、コミュニケーションが難しくなり、〝ダブル終活〟どころではなくなる。それどころか認知能力が低いと判断されれば、たとえ本人の子どもであっても、自宅の売却や金融機関の入出金など、本人名義の財産を動かすことが極めて困難となるので注意が必要だ。
また、財産の多くを占めるのが自宅という不動産。例えば父親が亡くなった後も名義を変更しないまま母親が住み続けているケースもあるだろう。この場合、相続人である母が生きているうちに名義変更をしておかないと、母親の死後に煩雑な相続手続きに追われることとなる。こうした情報も親子間で共有しておいて損はない。
親が旅立つ時、言葉では言い表せないさまざまな感情があふれるだろう。後悔に駆られた涙ではなく、濁りない惜別の涙を流すためにも、本特集を参考にしてほしい。