【追悼】張本勲が低迷期のファイターズに〝喝〟(18年1月号再掲、無料公開)

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張本勲氏

 現役時代「安打製造機」と称賛された張本勲氏が9月9日午後亡くなった。通算3085安打は日本球界史上最多で、引退後は歯に衣着せぬ発言と「喝」のフレーズで、球界のご意見番として親しまれた。本誌は2018年1月号(新年号)で本人にインタビュー。低迷期にあったファイターズに喝を入れてもらった。以下、当時の記事をそのまま再掲載する。

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「大谷メジャー移籍、清宮入団、主砲・中田…、ご意見番・張本勲がファイターズに喝!」(見出し)

 球界のご意見番といえば、〝喝〟〝あっぱれ〟でおなじみの張本勲氏だ。球団OBでもある張本氏が2017年シーズンに低迷したファイターズに喝!大谷翔平のメジャー移籍、清宮幸太郎入団、同郷・中田翔への思いなどを大いに語った。

中田翔はホームラン40~45本打たなきゃ

――2017年シーズンのプロ野球の総括を。

張本 : シーズン全体を振り返ると、不満なファンもいますわねぇ。セ・リーグはペナントレースで10ゲームの差をつけて広島が優勝したにもかかわらず、CS(クライマックスシリーズ)で敗退したわけですから。
 CSは短期決戦なので強いところが勝つとは限らない。CSも長いことやってきましたから、ルール変更も必要なのではないでしょうか。
 例えば、ペナントで10ゲーム以上の差がついたら、アドバンテージでさらに1勝を与えるとか。そうしないと、1年間必死になって戦ってきたかいがないじゃないですか。

――パ・リーグはどうでしたか。

張本 : ソフトバンクの優勝は予想通り。ファイターズファンには申し訳ないけど、16年シーズンは少しおかしかった。あれだけソフトバンクが独走していたのに、ファイターズに優勝をさらわれてしまったから。
 この前、球団会長を務めるワンちゃん(王貞治)と食事をしたんだけど、17年は最後までたがを締めて頑張らせたんだと話していました。
 ただ、16年のディフェンディングチャンピオンがここまで弱いとは思わなかった。一番は大谷(翔平)と中田(翔)の責任ですよ。大谷のケガと中田の不振はチームにとって痛かった。
 ワシはOB(日本ハムファイターズの前身・東映フライヤーズなどや巨人に在籍)なので、試合翌日の新聞ではファイターズとジャイアンツの結果を真っ先に見ます。
 いまとくに心配しているのが中田ですよ。我流ででたらめな打ち方をしとる。まずは足を上げすぎ。あんなに上げる必要があるの?あとはステップが広すぎる。打った瞬間、左足のつま先が開く。打つ前にグリップの位置が下がる。ダメな打ち方を全部やっとる。
 それらを直さないと2年くらいで消えちゃうよ。18年シーズンは29歳でしょう。とくに若手を積極的に起用するファイターズの場合、いいバッターが出てきたら、使われなくなる可能性があるよ。
 バッティングのクセって、なかなか直せないんですよ。本人がしっかりと納得して直さないと直らない。少し言われた程度では打てなくなったとき、自然ともとの悪いときのクセに戻る。長年、体に染みついてしまっているから。
 とくに中田の気になるところはステップですね。この指摘はもう4、5年しています。いつも春季キャンプで視察に行く際、本人にも口酸っぱく言っているのだけども……
 ステップが広くて成功した大打者はこれまでいない。唯一、それなりの成績を残したのが清原(和博)。彼がもしステップを狭くして打っていたら、三冠王を3、4回取っていますよ。
 日本球界80年以上の歴史で最も惜しい打者は清原と松井(秀喜)ですよ。松井のステップは理想的。ただ体が上下してしまう。そして、左手首の使い方が悪くて、打つときにバットをこねてしまう。俗にいう左手がかぶってしまうんです。これを直していれば、彼も三冠王を3、4回取っていますよ。
 中田もクセを直せたら、いいバッターになるがな。腕力があって、打つときの柔軟性もあるのに、もったいないわ。それにボールを飛ばせる素質は素晴らしい。一級品ですよ。
 だから、ホームランを年間40本から45本は打たなきゃ。中田に以前会ったとき、言っとりました。「札幌ドームは広いから45本は無理ですよ」と。喝だよ!何を寝言言っとるか。塀さえ越えればいいんだから。場外級を打てと言っているわけではないんですよ。

大谷のメジャー移籍、8対2で成功しない

――中田選手の精神的な弱さを指摘する声もあります。

張本 : それは本人に技術面で自信がないからでしょう。でも、勝負の世界で豪傑な人が成功した例はどちらかといえば少ない。繊細で臆病なほうが大成するんですよ。
 野球も同様です。なぜかというと、毎日練習をしないと不安になるんですよ。だからコツコツ練習する。それが血となり肉となるんです。
 ワンちゃんも私も豪快に見えるかもしれないけど、決して心は強くなくて神経質です。中田もとてもいい子ですから、精神面は心配していません。
 ワシがいまの日本球界で期待するバッターは筒香(嘉智)と柳田(悠岐)と鈴木(誠也)。この中に中田が入ってこないと!

――このほか、ファイターズで気になった選手はいましたか。

張本 : 有原(航平)です。今シーズンは大谷のケガもあり、エースとして期待されていただけに少し残念。もっと勝てるピッチャーだと思います。プロの世界で長いこと大成するために何が大切かといったら、努力、自己管理、技術です。彼にはこの3つをもっと意識してもらいたい。
 中田も有原もワシと同じ広島出身。広島の人間にはきつく言うんですよ。活躍してほしいからね。

――二刀流・大谷翔平選手がメジャーに挑戦します。

張本 : どこのチームに加入するのかは関心ないけど、流出はもったいないわな。メジャーに行って、普通にピッチャーとして勝てるでしょうけど、長続きはどうかね。
 大谷のメジャー移籍は8対2で成功しないと考えている。その理由はケガをするのではないかと。本格的に二刀流に挑戦して、ここ3年から5年くらいはしっかりとした練習ができていないでしょう。本来ならプロとしての体をしっかりとつくらないといけない時期。でも、ピッチャーとバッターの両方をやるため、体に負担をかけられない。
 相撲界にはね、「3年後の稽古」という言葉があるんですよ。「3年後に勝てるような稽古をいまやりなさい」という意味です。
 ピッチャーは手で投げるのではないんですよ。足で投げないと。そのために下半身を鍛えることが必要です。金田(正一)さんをはじめ、大投手はみんな下半身が強かった。培ったのが走り込みです。また、メジャーのマウンドは固いからね。いまのままで、その負担に耐えられるのか。

引き留めないファイターズに〝ダブル喝〟

――そもそも大谷選手の二刀流は反対ですか。

張本 : 絶対反対です!むしろ、なぜ、やらせるんですか。プロは投手、野手、どちらかでも大変なんですよ。活躍する姿を見たい人はいると思いますけど、それは心ないファンの見解でしょう。大谷の体を考えたら、プロで二刀流をさせるべきではないです。
 大谷のバッティングは悪くないと思います。ただ、メジャーではパワーも技術もあれくらいのレベルは3A、2Aにも掃いて捨てるほどいます。打撃フォームを見ていると、近めのハイボールは打てない。しかしね、日本のピッチャーはそこに投げない。
 ワシ、対戦相手のピッチャーに聞いたことがあるんです。そうしたら、大谷は左バッターですから、「万が一にでも投げる側の腕にボールを当てると、野球ファン全体から『なんてことをしてくれたんだ』と批判を浴びます」と。ただ、メジャーではそんな容赦はありませんから。
 それでもピッチャー・大谷は100年に1人の存在だと思います。あっぱれです!
 ――投手に専念したら、どのくらいの成績を残せると?
 張本 日本ではまず20勝はできる。近年の最多勝は15勝くらいでしょう。2リーグ制以降、かつて稲尾(和久)さんが42勝、杉浦(忠)さんが38勝しています。
 大谷には昔のそういった大投手くらいの素質があります。実際に生で見て、こりゃあ、みっちり鍛えて走り込ませたら、ものすごいピッチャーになるなと。
 いまでさえ、すごい成績を残しています。だからこそ、もったいない。自分で意識して走り込みをしっかりやってほしいねぇ~。
 近年の大投手、松坂大輔、ダルビッシュ有、田中将大。彼らとは比べものにならない選手になりますよ。ただ少し手遅れな感じもするけど。20歳くらいでやっておくべきだったんだよ。

――23歳の若さでのメジャー挑戦になります。

張本 : まずはファイターズに喝を入れたい!入団時に5年後にポスティングでメジャーに行ってもいい。そういう契約をしていたとしましょうよ。でも、23歳はまだ子どもだから。ものごとの分別が正しくできないよ。
 メジャー移籍は基本賛成しないけど、行くのが25歳だって遅くはないじゃない?だから、ファイターズは大谷を説得しないと。「もう1、2年、チームにおれ」と。
「日本のプロ野球ファンはできるだけ長くお前を国内で見たいんだよ」と言ってほしいね。スーパースターの流出ですから、球界全体においても大損です。そういった意味ではファイターズには〝ダブル喝〟ですよ!そもそもどうしてメジャー移籍を承認しているのかと。本人の夢を応援したい?寝言言っているんじゃないよ。

清宮幸太郎は一流ではなく超一流に

――大谷選手が抜ける一方、ファイターズには清宮幸太郎選手が入団しました。

張本 : いまファイターズに喝を入れたけども、個人的には一番いいチームに入ったと思う。球団そのものは選手育成に理解があるから。
 栗山(英樹)監督も選手起用など、なかなかユニークじゃない?選手に気持ちよく野球をやらせようとしている姿勢が伝わってくる。清宮の人間性をみていると、伸び伸びとプレーするファイターズのチームカラーに合っているんじゃないかな。
 ドラフトは野球人生の運命を決めるから。そういった意味では清宮はこれからの人生の運というか、縁を持っている選手なのかな。

――清宮のスイングをどうみていますか。

張本 : 映像や連続写真などではありますが、生のスイングは見たことがないので、わからない部分もあります。ただ、いまのままだったら、一軍ですぐ活躍するのは難しいかなと感じる点もあります。
 現時点で気になるのはまず足の上げ方。上げるのはいいんですが、どう打つタイミングを図っているのかなと思うんですよ。多くの変化球、速い球に対応できるかなと。
 僕もワンちゃんも長嶋(茂雄)さんも落合(博満)も、入団後、簡単にプロのボールに対応できたわけではありません。あと1番気になるのはやっぱりステップ。少し広い。それと彼も打った瞬間、前の右足のつま先が開く。
 さらに細かい点をいうと、手の遊びが多い。余計な力を抜くためなのか、わからないけど、バットのグリップに小指をかけている点。力を伝えるという意味では10本の指はしっかりと使わないと。

――バッティングでいいと感じる点は?

張本 : ボールを待つタイミングの取り方はあっぱれだよ!大きな体を揺らしながら、上手にタイミングを取っているよ。ワンちゃんはこれが下手だったから一本足にしたんだよ。
 いまの段階で清宮は長距離砲なのか、中距離砲なのかという話題を多く聞くけど、ワシは前者だと思う。タイミングを取るのもそうだけど、ボールを遠くに飛ばせるのは天性だから。足が速い、歌がうまいなどと一緒なんだよ。イチローにどんなに技術があっても、ホームランバッターにはなれっこないから。
 清宮の素質はもちろん、腕力、体力も素晴らしいと思う。一流ではなく超一流になってもらいたいわな。なれる可能性は十分に秘めている。ワシもキャンプ視察で彼を見るのを楽しみにしています。

メジャー移籍で日本球界の消滅を危惧

――起用法については。

張本 : 一軍に帯同して、基本は一塁とDHで中田との併用でしょう。外野手という声も少しあるようだけども、足、俊敏性などを考えると厳しいのかなと思います。だからこそ、清宮が試合に出られるかはバッティング次第ですよ。
 バッティングは中田のマネをする必要はないと思う。そもそも左と右で違うし、先輩のスイングは参考にならない(笑)。自分のスイングを確立してもらいたい。
 あとはファイターズのバッティングコーチは大役を授かったね。清宮のスイングをしっかりとみて、大きく活躍できるように、悪いところを削って、いいところを伸ばしてやらないと。

――高卒1年目でどのくらい成績を残すと予想しますか。

張本 : 実際に彼のバッティングを見ていないから、それはわからん。2割8分、ホームラン20本などと外野はいろいろと言うけども、変に予想しないほうがいいよ。
 でもね、ファンとしては清原の高卒新人の31本を超えられるのかと思っているでしょう。ま~、わからんな~。
 清原を初めて見たとき、20本は打てると予想したんだよ。それが31本。最初はとてもいいバッターだったんだよ。でも、どんどんと……(笑)。
 18年の新人は清宮をはじめ、ロッテの安田(尚憲)、広島の中村(奨成)ら期待する選手が多い。中村は同郷でもありますから楽しみです。

――張本氏は日本球界の今後をどうみていますか。

張本 : 大谷のメジャー移籍のように看板選手が次々と海の向こうに渡っていく状態が続くと、100年後、200年後の日本球界は消滅してしまうのではないかと危惧しています。主役のいなくなった試合を誰が見ます?
 そのためにも日本球界はやるべきことがたくさんありますよ。1つあげるならポスティング制度の廃止。いまのポスティングで選手への対価はお金です。これは人身売買だから。メジャーのチームと選手の交換をするのならまだいいですけど。
 日米の規約全体も見直したほうがいいかもしれません。いまのままでは日本の有望選手がどんどん流出してしまうから。日本側としては簡単にはメジャーに行けない仕組みもつくらないといけないと思います。
 最近はメジャーで活躍できなかったといって、すぐに日本球界に戻ってくる選手もいます。出たり入ったり、芝居の幽霊じゃあるまいし(笑)。こうした状態が続くと、日本球界は荒れますよ。

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