【独自・無料公開】「不祥事は把握しきれていなかった」……高野連「ダブル謹慎処分」指導者を出した釧路・武修館高校の回答は?

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武修館高校

 6月25日に独自記事として報じた、釧路市の学校法人「緑ケ岡学園」(中島太郎理事長)が運営する「武修館高校」野球部顧問の「ダブル謹慎処分」について、7月初旬、本誌の質問書に対する回答が届いたので、以下、紹介する。

 前回記事のおさらいをすると、今年4月から同校に採用された契約職員が、野球部の顧問として指導を行った際に部員へ暴言や暴力行為など不適切な指導を行った、として、5月に日本学生野球協会から6カ月間の謹慎処分を受けた。

 この職員は昨年「盛岡誠桜高校」(岩手県盛岡市)野球部で指導を行った際にも同様の不祥事を起こし、同協会から同じ5月の審査で謹慎とする処分が下されていた。同時に別の所属校でそれぞれ不祥事を起こして処分を受けるのは前代未聞のこと――ということで、当サイトでは6月25日付けで記事を掲載するとともに、緑ケ岡学園に対して8項目の質問書を送付していた。

以下、質問に対する回答をそのまま掲載する。なお当該教員の氏名など個人情報に関する部分は質問及び回答から伏せたほか、一部を読みやすいよう修正した(当該教員=回答における「第2顧問」)。

(質問1)
 今年4月7日に貴法人が採用した教員が、同14日、顧問を務めていた野球部の部員に対し、暴言や暴力を振るうなどの不適切な指導を行ったとされるが、事実か。
 また、この不適切指導が日本学生野球憲章に違反していることから、日本学生野球協会において、4月22日から6カ月間の謹慎処分が下ったとするが、事実か。

(回答)
 令和6年4月1日採用の本校野球部の第2顧問により、4月7日から14日までの間に、野球部員に対し、暴言や暴力ともとれるような不適切指導が行われたのは事実です。
 また、この不適切指導により、日本学生野球協会から、本校から謹慎を命じられた4月22日を起点に6カ月の謹慎処分が下されたのも事実です。

(質問2)
 前項に関連し、貴法人はこの教員を5月22日に謹慎とした上、翌23日に顧問を解任したとするが、事実か。

(回答)
 本校が第2顧問を謹慎としたのは、5月22日ではなく4月22日です。翌4月23日には第2顧問を解任いたしました。

(質問3)
 貴法人は4月14日の行為後間もなく、当該行為の被害者である野球部員および保護者等からこの教員の行為について連絡等を受けたものの、5月18日に保護者らに対する説明会開催するまで対応を取ることはなく、この間に行われた春季大会等でもこの教員をそのまま指導させたとされるが、事実か。事実であれば、指導を続けさせた理由は何か。

(回答)

1 発覚の経緯及び対応
 令和6年4月15日に、学園の理事長及び校長宛に、前日4月14日に釧路工業高校グランドで行われた練習試合中の本校野球部第2顧問による相手校生徒への不適切な発言並びに本校生徒の厳しい叱責に対するお叱りと今後の指導の改善を求める内容のファクシミリが届く。差出人は不明である。

 ファクシミリ通報を受け、4月15日に第2顧問の出勤を待って、午後に事情聴取を行う。前日の練習試合での言動等、状況を確認した。

 第2顧問は「本校の野球部生徒を鼓舞するため大声で指示を出した。大声であったことと言い方のまずさから、他者には不愉快な思いを抱かせたかもしれない。けっして、相手校の生徒を卑下するような言葉は発していない。ただ本校生徒への指示であったが、前述のとおり大声、言い方のまずさから相手校選手への中傷と取られたかもしれない」と、反省の弁を述べる。今後は丁寧な指導を約束する。

 校長より、今後、部活指導・授業指導に際し、生徒に丁寧な指導と指導者として生徒の範となるべき言動をとるよう厳重注意する。同時に、これまでの第2顧問の練習中の生徒対応について、監督より聴取を開始する。

 令和6年4月16日に、北海道高等学校野球連盟会長宛に、上記の練習試合中に第2顧問から「お前は捨て駒や」「お前らは兵隊なんだぞ」「ボケ」というような不適切な言葉が本校生徒に向けて発せられていたこと、そのため本件の調査と部長に対する適切な措置を求める内容が記されたファクシミリが送られる。差出人は記されていたが、対戦相手校の保護者並びに本校保護者に、該当者はいない。監督並びに第2顧問への調査(事情聴取)、事実確認を継続する。

 4月15日から19日までは、第2顧問は事情聴取及び事実確認が実施されていたため、部活動指導に当たる時間はほとんどなかった。また、4月20日・21日は部活動指導はしていない。

 4月22日、本校野球部3年生保護者から、第2顧問による生徒の暴言や体罰ともとれるような不適切指導があった旨の訴えが監督にあったことを報告される。同日、北海道高等学校野球連盟本部にも、本校保護者から第2顧問の不適切指導に対する調査依頼がある。

 同日、継続していた第2顧問からの聴取で、野球部指導中に不適切指導があったことを確認し、第2顧問を謹慎とし、野球部の接触を禁ずることを、校長より申し渡す。同時に、野球部生徒への事情聴取を実施する。

 4月23日、校長から北海道高等学校野球連盟会長に第2顧問の野球部生徒に対する不適切指導を報告する。その後、第2顧問には、校長より改めて野球部第2顧問の任を解くこと、野球部活動の参加の禁止、必要業務以外での野球部員との接触の禁止を命じる。

 また、第2顧問の不適切指導の場に居合わせ、第2顧問の不適切指導を戒めず、学校の報告、相談をしてこなかった監督には、校長より相互牽制の重要性を説き注意する。
 両名には、今後、生徒への事情聴取の結果を待って、学園本部並びに北海道高等学校野球連盟から、指導があることを伝える。

 生徒への事情聴取と第2顧問の事実確認はゴールデンウィーク前まで続いた。

 野球部員並びに保護者への謝罪、説明については、生徒の心情を考慮し、ゴールデンウィーク札幌遠征や5月7日から12日まで実施される春季支部大会の出場終了を待って、5月14日に野球部員、5月18日に保護者へ実施する。

 日本学生野球協会からは5月24日付処分通告書をもって、第2顧問に令和6年4月22日から6カ月間の謹慎処分が下された。本学園からは6月13日に第2顧問に対し懲戒処分「戒告」、監督には「口頭注意」が下された。

2 春季大会等への参加について
上記のとおり4月22日から謹慎、23日には第2顧問解任になっているため、大会にエントリーしてもいないし、参加もない。

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学園から届いた回答(一部を修正しています)

(質問4)
 この教員は昨年度、岩手県・盛岡誠桜高校野球部副部長として勤務、指導をしていたが、同年8月までに武修館高校での指導時と同様、暴言などの不適切な指導を行ったことで、今年6月21日付けの日本学生野球協会審査会において無期謹慎の処分が下っている。貴法人として、この教員を今年4月に採用する際、昨年度に盛岡誠桜高校で不適切な指導を行っていたことなど、その行状、行動、指導ぶりについてどの程度把握していたか認識を伺いたい。

(回答)
 第2顧問については、事前に提出されていた履歴書に、前職が盛岡誠桜高校である事は記載がありました。退職理由については、野球部指導上の理由ではありませんでした。また、野球部の副部長であったことは知りませんでした。
 盛岡誠桜高校野球部は、生徒指導にあたり5人体制をとっていて、本校第2顧問は、指導責任では4・5番手にあたるコーチとして指導にあたったと面接で答えています。

(質問5)
 前項までに関連し、5月18日の説明会では、この教員を採用した責任者である馬場保孝校長が指導経歴などについて問題ないと認識していたと説明したと聞くが事実か。この教員の採用経緯についてできるだけ詳細に説明願いたい。

(回答)
 本校教職員の採用は、欠員状況から学校法人緑ケ岡学園職員採用規程に基づき行われております。
 近年の教員の不足(教職敬遠)は社会問題化しているように、公私学校の別なく教員の獲得が難しい状況となっています。これは本校も同様であり、採用選抜から教員確保に重点を移した採用試験となっております。
 教員免許取得応募条件を満たしている者(刑事罰等により免許の無効者は応募資格なし)については、教員採用試験を実施しています。その際、文部広報や明確な情報による欠損事項については採用試験の受験及び採用の可否の判断材料としています。
 匿名記述が許され、個人の歪められた不正確な情報が発せられるSNSやインターネット投稿並びに匿名による情報提供は、採用可否の判断材料にしておりません。
 また、前歴中の就業先への人物評価等は、人権侵害に該当する危険性があることから実施しておりません。本校離職者が他校入職する際も、入職希望先から職務状況について尋ねられたことはありません。
 そのため、本校では、教職員の適正を正確に把握するため、1年間は1年の期限を設けた契約職員(専任講師)としての採用となっております。
 また、1年目は学級担任を持たせず、強化指定部活の顧問は相互牽制が可能な複数担当者の1人とし、第2顧問に任命しています。
 第2顧問は、本校HPの教員募集案内を閲覧し、令和6年3月7日消印の郵送物で本校の入職を希望してきました。本校では、直前まで本校への入職で返事待ちになっていた他校勤務者(地歴・公民)に入職を辞退され、1名欠員の状態でした。そのため、応募してきた第2顧問に、前述の教員免許取得応募条件を満たしていることを確認するとともに、前歴の勤務校等で問題があったとの明確な資料もなかったことから、採用試験の受験を許可いたしました。そこで、3月15日に本校にて、私と事務室長の2名で面接選考を行いました。これまでの勤務校の勤務年数が短いことの理由は「任期満了」、「他校からの招聘」、「野球戦績の不振」によるとの回答がありました。特に短期雇用の契約教員での採用となったと答えておりました。助教諭免許で国語を教えていたこともあり、本校では「地歴」と「国語」を担当することを条件に、後日、採用を決定いたしました。

(質問6)
 この教員は盛岡誠桜高校以前に勤務していた五所川原商業高校、青森山田高校などでも同様に不適切な指導を行い、処分を受けた、あるいは退職していたことが本誌の取材でわかっている。盛岡誠桜高校以外でのこの教員の不祥事について、どの程度把握していたのか認識を伺いたい。

(回答)
 匿名記述が許され、個人の歪められた不正確な情報が発せられるSNSやインターネット投稿並びに匿名による情報提供は、採用可否の判断材料にしておりません。
 また、前歴中の就業先への人物評価等は、人権侵害に該当する危険性があることから実施しておりません。本校離職者が他校へ入職する際も、入職希望先から職務状況について尋ねられたことはありません。
 第2顧問が不祥事を起こしたとする事実を明確に示す資料がなく、把握しきれていませんでした。

(質問7)
 不適切指導が起きないような再発防止策など、今回の事案について取った対応をできるだけ詳細に説明願いたい。

(回答)

1 問題解決に向けた対応

①第2顧問については、野球部第2顧問を解任(4月22日から練習参加の禁止)、野球部生徒との接触の禁止、本校参加の野球大会観戦の禁止とする。

②第2顧問については、野球部生徒が参加する授業及び清掃監督の担当を外す(担当者の交代)、対面が予想される学年・学校行事等への参加を制限する。

③今後、第2顧問に発せられる日本高等学校野球連盟並びに本学園からの処分に即した対応をとる。

④野球部顧問、学年を中心に野球部生徒への面談等を通してケアにあたる。

2 再発防止に向けた対応

①今一度、全教職員に対し、生徒の人権を尊重した指導に徹するよう指導を強化する。

②複数指導体制等の利点を生かした教職員間での相互牽制の徹底を図る。

③瞬時の連絡・報告・相談を徹底する。

④家庭との連携を密にし、家庭の協力を得た教育活動の推進を図る。

(質問8)
 本誌が貴法人含む複数の関係者に取材したところによれば、馬場保孝校長はこの教員の採用について、現在の野球部の指導教員や体制に不満があることから、この教員に野球部を任せ、その指導力に期待したためなどとする狙いがあったというが、事実か。馬場校長自身の言葉として、この教員を採用した狙いと不祥事が起きたという結果についてその受け止めと改善策を示していただきたい。

(回答)
 数年前まで50名を超える部員数を誇った本校野球部が、ここ3年大幅に入部生徒を減らしている状況(3年4名、2年8名、1年1名)や、入部生徒の早期離脱(令和5年度入学生:入学当初転学1名、退学1名)、指導強化に向けた指導者教員不足(昨年、一昨年と指導者教員1名)と、現野球部に課題意識を抱いているのは事実です。そのために野球部体制強化を狙いに指導教員の確保を目指してきました。しかしながら第2顧問は、3月に本校のHPを閲覧し「地歴」「国語」の教員として入職を希望してきたものであり、将来的に野球部を任せるという考えは全くありません。
 あくまで「地歴」・「国語」を担当する教員として採用したものであり、野球指導は監督の補助です。
 以上、第2顧問の指導力を期待し採用したという事実はありません。
 新たに採用した第2顧問が不祥事を起こしたことには、誠に申し訳なく、指導不足を痛感しております。何より、生徒の安全を保障する学校現場で、その責務を担わなければならない教員が、生徒に暴言並びに暴力ともとられるような不適切指導を行い、生徒・保護者の皆さまに強い不安・心労を負わせたことは、誠に遺憾であり、心よりお詫び申し上げます。
 生徒・保護者の不安解消に向け、7の回答に記述した対応を丁寧に実施してまいります。

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