【再録・無料公開】河合竜二・小野伸二・稲本潤一・内村圭宏が今季(2016年当時)を振り返る<砂川誠のコンサの深層>

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(写真左から)内村圭宏さん、小野伸二さん、砂川誠さん、稲本潤一さん、河合竜二さん

2016年はチーム創設20周年イヤーだった。同シーズンにチームはJ2優勝&J1昇格を果たす。
若手主体のチームで昇格を勝ち取った裏には、経験豊富なベテランの存在があった。
本誌は17年新年号で、ベテラン陣による座談会を実施。4人の選手で16年シーズンを振り返ってもらった。

イナのゴールで勢いに乗れた

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砂川 : まずは今シーズンについて振り返ってもらおうかな。竜二はどう?

河合 : 目標だったJ1昇格をつかみ取れた、というのはまず良かったです。J2優勝もそうだけど、昇格が一番の目標だったから。個人的には……。春先からコンディションが悪く試合に出られなくて残念でした。

砂川 : 伸二はどう?

小野 : 難しい試合でも勝ち点3を取れたし、波がないというか、安定して試合で勝つための準備ができた。そこは1年を通じて成長したのかなと思います。

砂川 : 個人としては試合になかなか出られないことが多かったよね。

小野 : ケガで痛みもあって。もちろんその中でもいいパフォーマンスを出せるよう、準備はしていました。

砂川 : ウッチーは?

内村 : チームとしてはJ2優勝できたから、最高だし、それで十分です。個人的にはボールにもう少し触って、いい仕事をできたらと思っていたので、完全に満足はしていません。

稲本 : 僕は6月にケガ(右膝前十字靭帯断裂)をしてしまって、チームの力になれなかった。そこは残念でした。個人としては消化不良。チームは1試合勝つごとに力が上がっているのを、外から見ていてすごく感じていました。全員同じ方向を目指してプレーできていたのかなと思います。

追われる立場が若い選手の重圧に

砂川 : セレッソ大阪戦(2016年4月23日・札幌ドーム)の決勝ゴールが、チームを勢いに乗せた。

稲本 : そう言ってもらえるとありがたいです。

砂川 : その時の奥さん(田中美保さん)の喜びようもすごかった(笑)

稲本 : そうだったみたいですね(笑)。大事な試合で自分がゴールを決めて勝てたというのはよかった。

砂川 : 終盤戦は勝ちが拾えなくて、なかなか厳しい時期が続いたね。

小野 : ただ選手やスタッフの雰囲気は別に変わらなくて、悪くはなかった。

砂川 : ベテランはその時どう支えたの?

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河合 : 自分たちができることって、声を出すとか、戦う姿勢を見せることくらい。練習から「ミスしても仕方ない時はある」と言ってあげるとか。いい雰囲気づくりは心がけました。

砂川 : 2011年のJ2最終節でFC東京に勝って3位でJ1昇格した時とは、状況が違ったよね。あの時は勝った上で他会場の結果次第。でも今回は首位で、一番有利な状況だった。

河合 : 若い選手にとっては〝追われる立場〟というのが難しかったのかも。

小野 : 僕はあんまりプレッシャーを感じていなくて。もちろん、2位以下の追い上げで勝ち点差が詰まってきて、そわそわする展開だったことは確かだけど。恐らく、選手だけじゃなくてコーチやスタッフも同じく切羽詰まってきていたんじゃないかな。選手って、いつもとは違う空気を感じ取ってしまうものだし。

試合に出るのは当たり前ではない

砂川 : 今年はどのチームが強いと感じたの?

河合 : それはリーグ全試合出場の人に聞きましょう。

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内村 : (笑)。松本山雅のように、自陣に引いて守備を固めてくるチームがやりづらかったです。

砂川 : コンサと同じようなスタイルのところということね。

内村 : 引いてくるチームが多くて、やりづらさはありました。

小野 : 清水エスパルスは、そういう意味では違ったね。

砂川 : J1のチームのようなサッカーをして、しかも上手くて強かった。

河合 : J2にはJ2の戦いかたがあると思うけど、それをしないで、あれだけ結果が出せるのはすごい。

小野 : 監督やスタッフは、一生懸命練習から打ち込んでいる姿を見ているもの。若手は試合に出られなくても腐らず、もっと打ち込んでほしい。僕がコンサに来てから、若手のそういった部分での意識はすごく変わったと思います。

砂川 : ひと昔前は出場する機会を〝与えてもらっていた〟感があった。公式戦なのに、若手の育成を考えて起用してしまうことも普通だった。伸二やイナが来て、チームのレベルも上がって、出場することが当たり前じゃない、ということはわかってきていると思う。

小野 : 今年はそれでも、若い選手たちが何かを僕らから盗んでやろう、という意欲は感じた。そういう気持ちをみんなが持ち始めてきたのはいいことだと思う。

個の力、チーム力の上積みが必要

砂川 : 若手でみんなから見て、一番成長した選手って誰だと思う?外から見ている分にはGKのク・ソンユンだけど。

小野 : 俺たちからみてもソンユンじゃないかな。たぶん20点以上は失点を防いでると思う。いるといないとでは大違い。

稲本 : 急にキックが上手くなっててびっくり。

小野 : ゴールキックがサイドラインを割らなくなったよ。

稲本 : 昨シーズンまではキックの指導をよく受けてたけど。

砂川 : 福森(晃斗)もすごかったね。

小野 : フクはフリーキックがすごかった。

稲本 : 福森がいなかったら、ボールがつながらない。

砂川 : では最後に来シーズン、J1に残留そして定着するためのカギはどこに。

河合 : 今のままでは厳しい戦いで、苦戦するのは目に見えています。まずは一人ひとりのスキルアップが大切で、それにはチーム内で競争すること。J1で試合に出るために全員がアピールしていくことが、チーム力を上げるために必要だと思います。

稲本 : スキルアップは当然大切な要素だけど、スキルが上がったとしても、J1のレベルは高い。今年はまさしくチーム力で勝ち上がってきたと思うけど、それをさらに上積みできるかどうか。

河合 : もう全部出たね、大事だと思うことは(笑)

砂川 : 伸二には違う話をしてもらおう。

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小野 : 今年はJ1昇格が目標だったけど、次はJ1に残留するという気持ちだけで臨んでしまったら、心構えの部分で戦う前から負けてしまう。J1に上がったことで、自信は持つべきだと思う。でも過信はしてはいけない。どうやってJ1の選手相手に戦うための力を付けるか。それと、J1にはテレビに出たり日本代表に選ばれたりという選手もたくさんいるけど、引け目を感じるんじゃなくて、自分たちと同じいちサッカー選手なんだという気持ちで戦ってほしい。

砂川 : ではウッチーにトリを務めていただきます。

内村 : ……J1ではたぶん苦戦すると思うんで、みんながスキルアップを……

一同 : (笑)

砂川 : それもう出たよ!

内村 : 次のシーズンまで意外と時間はないし、この何カ月かでそこまで上手くなるわけでもないので。まずは筋トレ頑張ります。

一同 : (笑)

砂川 : イナがガンバ大阪、伸二が浦和レッズ、竜二がレッズや横浜Fマリノスという古巣との戦いも見どころ。J1に定着できるか、ベテランの腕の見せどころだね。

(※以下、選手プロフィールは16年当時)

河合竜二
(かわい・りゅうじ)1978年7月14日、東京都生まれ。183㌢・75㌔。
4歳からサッカーを始め、中・高サッカー部を経て97年に浦和レッズへ加入。その後トライアウトを経て2003年から横浜F・マリノスに所属し主力として活躍する。11年からコンサドーレ札幌へ。背番号4、DF。
稲本潤一
(いなもと・じゅんいち)1979年9月18日、鹿児島県生まれ。身長181㌢、体重77㌔。
高校3年生でJ1ガンバ大阪のトップチームに昇格。2001年にイングランドへわたり、その後トルコ、ドイツ、フランスでプレー。10年からJ1川崎フロンターレを経て15年に加入。背番号17、MF。
内村圭宏
(うちむら・よしひろ)1984年8月24日、大分県生まれ。174㌢・67㌔。
漫画「キャプテン翼」に憧れ、8歳でサッカーを始める。2003年にJ1大分トリニータ(現J3)へ入団。07年からJ2愛媛FCで活躍し、10年からコンサドーレ札幌へ加入。背番号13、FW。

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