【特別インタビュー】VOREAS北海道/池田憲士郎社長「トライさせる環境作りで自主性を向上」

©財界さっぽろ

いけだ・けんしろう/1986年旭川市生まれ。北海道教育大学に進学後、北海学園大学に編入。卒業後、東京の建設メーカーへ就職。2013年に父の経営する旭川の建設会社へ入社。17年、VOREASを設立。

「ヴォレアス北海道」は旭川市を拠点に活動するプロバレーボールチーム。今季、〝4度目の正直〟でV1リーグ昇格を果たした。その先導者が社長・池田憲士郞氏だ。運営会社の人材育成やバレー業界の現状を聞いた。

 営業部門のエースはチームの所属選手

——リーグ昇格おめでとうございます。ようやくV1の切符をつかみ取った感じでしょうか。

池田 : ありがとうございます。2020年の入れ替え戦がコロナで中止になるなど、紆余曲折も経ながら、4回目の挑戦でV1のステージへ上がることができました。

——入れ替え戦は今年4月に開催。試合を見ていた時の心境は。

池田 : 試合の入り方が悪く、ボロボロと点数を取られて1セット目を落としました。ただ、昨年とは違って、V1チームを相手に力負けしていませんでした。やるべきことをやれば勝機があると思っていました。

——チームが昇格できた要因は。

池田 : 戦術的な面では、相手チームを徹底分析することで運営側もサポートしました。20試合くらいのデータをすべて見直し、戦略を立てました。この準備が結果や自信にもつながったと思います。
チームの運営面を見ると、ヴォレアス北海道は今年で6シーズン目になります。設立当初はさまざまな価値観を持った選手がたくさんいて、それを1つのベクトルにまとめるのが大変でした。
しかし、発足から6年がたち、会社のミッション・バリュー・ビジョンがチームに浸透し、進むべき方向性が明確化されました。今季は選手たちが口をそろえて「今までで1番チームワークがいい」と言っていました。選手やコーチ、運営会社の社員が一致団結できたことが大きな要因だと思います。

——社員の育成について、社長として意識されていることはありますか。

池田 : そもそも、私は役職に執着しておらず、「社長」と言われることがあまり好きではありません。また、トップにすべて意思決定を委ねるべきという考え方も持っていません。
もちろん、進むべき方向性は私が決めますが、細かい意思決定などは各部署に責任をもって判断させています。そういった場面で、私の登場機会をいかに少なくするかというのは意識しています。
社員に対しては、あえて細かいマネジメントをしていません。自主的に挑戦して学ぶことが何より一番成長できると思っています。その環境を用意してあげることが私の仕事です。ヴォレアスは試行錯誤しながら常に最適な選択を考えています。その中で、たくさん失敗もしますが、改善するスピード感を大事にしています。

——所属選手の中には社員として、会社業務をこなしている選手もいます。

池田 : 選手には、チーム活動に特化するプロ選手契約や、それにプラスして副業という形で社内に勤務する「株式会社VOREAS社員契約」などを提案しています。
実は、ある選手は会社の営業部門のエースです。彼はもともと選手一本でしたが、社業もやりたいと言ってくれました。チームのためならなんでもやるという覚悟が伝わってきたので、いきなり大きな案件を任せました。もちろん、本当に困ったら相談してねと声はかけていましたが、しっかりとやりきってくれました。精神的にも絶対にきつかったはずです。

挑戦することを当たり前だと思って欲しい

——ご自身も中学からバレーを始め、高校時代には春高バレーで全国3位の成績を残しました。

池田 : 周囲から強豪校と呼ばれていました。一見、厳しい練習をしてきたのではと思われがちですが、普段から4時間を超える練習はなく、夏休みも二部練はありませんでした。いかに効率よく上達するかを重視した指導でしたね。
さらに、先輩たちが技術的なこと教えてくれましたが、監督からの指導はほぼありませんでした。当時は不思議でしたが、今思うと考える力を養わせ、生徒自身に気づかせ学ばせるという指導だったのだと思います。

——バレー界の今についてどう感じていますか。

池田 : いまだに部活では体罰のニュースを耳にします。まだまだ時代は変わっていないんだなと思います。一部の少年団では、4年生は球拾いで、6年生が試合に出るみたいなチームもあると聞きます。年功序列も大事だとは思いますが、そんなことしていたらすぐに子どもは辞めてしまいます。
一方、バスケットボールでは4年生大会があり、試合に出る場が与えられています。スポーツは試合に出たい、活躍したい、勝ちたいと思って自主的にやることが一番の成長につながります。バレー界もそういった環境を作っていかないと、競技者は減る一方だと思います。

——プロスポーツチームが果たすべき役割は。

池田 : トップリーグのチームに資金的な余裕があって、初めてジュニアの方までお金を回すことができます。現状、Vリーグは実業団チームが多い側面があり、そこまで回っていません。それを解消するために〝バレーのプロ化〟は絶対に進めるべきだと思います。
また、ヴォレアスでは、地域の未来のことも考えています。そのためには、子どもたちのことをサポートしていく必要があります。将来、世界で活躍していくためにはどういった道を作ってあげるべきか、常に考えています。
私は教育現場の指導者ではないので、ヴォレアスを通して、貢献していきたいです。チームや選手は何らかのことに常にトライしています。その姿を肌で体感して、挑戦することが当たり前だと思ってくれたらうれしいです。
来季は国内最高峰レベルの試合を北海道で観戦することができます。われわれはスポーツに興味が無い方でもエンタメとして楽しめる会場作りを行っています。動物園に行くような感覚で週末に家族やお友達と足を運んで欲しいです。

こちらもおすすめ

関連キーワード