【独自・無料公開】UHB、STVは出演、NHK、HBC、HTBは拒否 圧勝で再選の鈴木直道知事、テレビ出演「より好み」の〝なぜ〟【財界さっぽろ5月号予告あり】

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再選を決め万歳三唱の鈴木直道知事(中央)

「長引くコロナ、物価高からみなさんの暮らしをしっかり守っていく。エネルギー・デジタル・食という3つのキーワードで相乗効果を発揮し、北海道の価値を押し上げていく。その信任に応えるべく、約束をしっかり果たしながら北海道を前へ進めていく」

 4月9日午後8時の投票終了直後。いわゆる「ゼロ打ち」で当選確実の報を受け、ほどなくして選対事務所に入ってきた鈴木直道知事。後援会長でニトリホールディングス会長の似鳥昭雄氏や支援政党の国会議員らと固い握手を交わし、万歳三唱の後、マイクを握って2期目の抱負を述べた。

 支援者が喜びに包まれていた裏で、道内テレビ局と知事の選対事務所関係者の間にひと悶着があった。

「開票当日の時点で当選は確実だったため、道内テレビ各局が地上波やネット配信で行う生放送番組での単独インタビューを打診した。だが断られた局と、出演した局がある」

 本稿掲載時点で、断られたことがわかっているのはHTB、HBC、NHK。出演したのはUHBとSTVだ。

 このうち〝破格の対応〟だったのがUHB。当選翌日の10日月曜、UHBの夕方ワイド「みんテレ」へ生出演した。メーンキャスターの廣岡俊光アナウンサーらが経済対策について質問。知事も一丁目一番地に掲げている政策だけに「牛乳券やお米券は道民にも実感があると思う」「中小企業支援で賃金が上がらないと実感は得られない」などと語った。

「みんテレ」出演を伝えるUHB公式サイトのニュース記事(UHB公式サイトより、現在は閲覧不可能)

 UHB関係者は「番組関係者と鈴木知事の個人的なつながりや、選対事務所へのアピールが実った」と話す。

 だが生出演を見た他局の関係者は「〝ふわっとした〟話に終始して、知事が答えに窮するようなことも、知事の答えに対する更問い(回答に対する質問)でのツッコミもなかった。選対事務所サイドも、情報番組のアナウンサーからキワドい質問が飛ぶことはない、と高をくくっていたこともあるのでは」と推測する。

 一方、同日同じ時間帯のHTB「イチオシ!!」では、知事が後志管内寿都町で行った街頭演説の映像を使いながら、高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場選定問題を取り上げ「具体的な議論がなかった」と知事選を振り返った

 その上で「(知事に)原発再稼働など政策について考えを聞くためインタビューと番組出演を申し込みましたが、『後日、記者会見でお答えしたい』として、個別政策に関する質問には応じない考えを示しました」と、出演を拒否されたことを明言した。

鈴木知事がインタビューに応じなかった理由を伝えるHTB「イチオシ!!」の報道(同局公式Webサイトより)

 さらにHTBは、北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院教授の佐々田博教氏に取材。

 佐々田氏は「非常に消極的な姿勢であるし、選挙の中で具体的に政策を打ち出してその是非を問うというのが民主主義であったり、選挙の一番大事な意義だと思う。それをちょっと無責任に放棄されたというような気がします」と指摘した。

 HTBは開票当日、YouTubeで配信した速報番組でも鈴木知事の出演拒否を報じていた。この配信に出演していたお笑いジャーナリストのたかまつなな氏が「信じられないですね。愚弄してますね」「個別の政策については答えませんって、こんなひどいこと、聞いたことないですよ、選挙後。こんなの許しちゃダメだと思いますね」と配信内でコメント。ネット上で大きな反響があった。

 HBCもYouTubeで開票速報を配信。中継でのインタビューを申し込んでいたという。だが選対事務所の対応を問題視し、とりやめた。

 配信では知事の代わりに道政記者キャップが出演し、とりやめた経緯をこう説明した

「今朝(4月9日)知事の事務所と交渉をしましたが、事前に質問を投げたところ『政策について込み入った質問は控えて欲しい』と注文がついた。(HBCとして)そんな話は受けられない。それなら止めようとなった」

 配信の司会を務めた堀啓知アナウンサーの「どんな質問をしたのか」との問いには「『核ごみの最終処分場選定の問題で反対の立場を貫いているが、現実問題として増える核ごみはどうしたらいいか?』という質問でした。知事は、寿都町での文献調査の次の段階である概要調査に反対の立場。それならばと質問したら(断られた)。ほかの質問なら受けていただけたと思うんですが、制限がかかるならやめよう、となった」と内幕を語った。

 その上で、選対事務所に対し、核ごみの問題に答えられない理由を質問。すると「今後政策は道議会との議論の中で決まっていくので、中継の中で安易に断定的に言えない」と回答があったことも紹介した。

 当選直後、知事が中継で出演した局もある。それがSTVのYouTube配信で「どさんこワイド179」で長年ニュースを担当する、宮永真幸アナウンサーがインタビュアーとなった。

 だがせっかくの機会にもかかわらず、宮永アナが聞いたのは「当選した今のお気持ちは」「ずいぶん声が枯れていますが、全道回ってやり切った感は」「遊説で聞こえてきた有権者の声は」「物価対策は待ったなしだが具体的な取り組みは」「2期目に向けてやりたいこと」の5つ。このインタビューに先立つマスコミ各社合同インタビューとほぼ内容が同じ上、さながらプロ野球の「ヒーローインタビュー」のような内容に乏しいものだった。

 複数の関係者の話を総合すると、番組に出る、出ないを決めたのは鈴木知事自身だという。

「知事が『自分で話したいわけでもないものを生放送で断定的に話したくない』ということで、核ゴミ問題を質問する局を弾いたようだ。すべてのインタビューを断らず受け、どのインタビューでも必ず五輪招致について問われてすべて答えた秋元克広札幌市長と比べると、差は歴然としている」(道政クラブ記者)

 そんな鈴木知事が「個別政策にも答える」と言っている2期目の就任記者会見は4月13日に開かれる予定だ。再選直後の挨拶で掲げた「エネルギー」そして主要政策である「ゼロカーボン北海道」を進める上で、泊原発の再稼働や核のゴミの問題は避けて通れない。

 残念ながら本誌は道政記者クラブに加盟しておらず、質問する権利がない。加盟社にはぜひ個別・具体的なツッコミを期待したい。

 4月14日金曜に本サイトおよびデジタル版、15日に全道の書店・コンビニエンスストアで雑誌版が発売となる月刊財界さっぽろ2023年5月号では「春の人事“波乱の予感”」と題し、鈴木知事2期目を支える3人の副知事人事を始め、札幌市議会&北海道議会の議長レースなど、気になる人事の裏側を詳報。また旭川・函館・帯広・釧路・北見・小樽の道内6都市にまつわる「基本のキ」から、財界さっぽろならではのディープな情報までを網羅した特集「地方6都市の“トリセツ”」を掲載。転勤族や出張時に活用できる情報が満載なので、どうぞご期待ください。

4/19 17:00追記
HBCから画面キャプチャーの使用についてクレームがあったため削除しました。

5/11 13:30追記
記事内の各局キャプチャー画像について、システム上の問題から当社の著作権表示がなされておりました。表示を修正した上で掲載しております。各局関係者の皆様にお詫びいたします。

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