視覚障害者がみた大雪の札幌

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上から、シンボルタイプ、ロングタイプ、サポートタイプ

 北海道の調査では、2020年3月時点において視覚障害による身体障害者手帳を交付されている人は1万6319人。医療の発達により全盲の人は減っており、全体の8割程度の人はロービジョンだとされる。ロービジョンの人の見え方は視野が欠ける、色がうっすらとわかる程度など、それぞれ異なる。

「私たちはどのような道でも通れるわけではありません。積雪によって横断歩道や交差点を渡る位置が本来の場所からずれていると特に恐怖を感じます。ボコボコした道や極端に狭くなっている道も危険です」
 札幌市視覚障害者福祉協会会長の近藤久江氏は静かに語る。
 近藤氏自身もロービジョン(弱視)の当事者。
 視覚障害者が外出するときには、①ガイドヘルパーによる移動支援を受ける②盲導犬を利用する③白杖を用いて自力で歩行する――の主に3種類の方法がある。
 盲導犬は視覚障害者自身が地図を完璧に把握する必要があるため、現在ではガイドヘルパーを活用する人が多い。ただし利用条件が定められており、経済活動にかかわる外出や通学などの長期にわたる外出には利用できない。職業に就いている視覚障害者はおのずと白杖の利用が必要となってくる。
「鍼灸(しんきゅう)治療院やマッサージ、医療関係など、視覚障害者は他の障害に比べて、就労している人が多いです。タクシーや公共交通機関を利用しながら、経済活動を止めないために皆が頑張っています」(近藤氏)
 雪が積もり、点字ブロックも隠れてしまった歩道は危険が多く、視覚障害者にとって大敵だ。「普段の倍以上の時間をかけて、安全に少しずつ移動するしかありません」(近藤氏)
 白杖には用途に合わせて様々な種類がある。周囲の人に視覚障害者だと認識してもらうためのシンボルタイプ、より遠くの道の様子を探るロングタイプなどだ。しかし、白杖の基本的な役割は道の様子を探ること。きゃしゃなつくりのものも多く、冬道で体重をかけて体を支えるためのものではない。
 そこで冬道では「サポートタイプ」が活躍する。頑丈なつくりで、別売りのアイスピックを装着することも可能だ。しかしサポートタイプの白杖を使っていると、ある変化があるという。
「街中で『大丈夫ですか』と声をかけてもらえることが少なくなります。見た目が高齢者用の杖と似ているので、周囲に視覚障害者だと気付いてもらえないようです」(近藤氏)
 視覚障害者は、周囲の声かけによって信号の変化や危険に気付くことも多い。「健常者の方もこの雪道では自分が歩くことで精いっぱいになっているのだなと感じています。声をかけてくれる人には助けられています」(近藤氏)
 札幌市では、市営地下鉄49駅全てにホームドアが設置されているなど、福祉のケアが手厚い。近藤氏は「札幌は自慢の都市です」と胸を張る。
 2019年には視覚障害者の全国大会が市内で行われたが、地域の視覚障害者からもうらやむ声が上がった。札幌市視覚障害者福祉協会では市に大いに感謝しているという。
 札幌を襲った大雪について近藤氏はこう考えている。
「市の事情もわかりますし、希望通りにはなかなかいかないのでしょう。それでも、大雪の時には除雪の予算執行を前倒ししてもらえたらありがたいですね」

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体を支えやすいサポートタイプの白杖

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