北星学園大学 北星学園大学短期大学部/大坊 郁夫 学長
社会福祉学部の学科を再編し、本来の社会福祉を追求
――社会福祉学部の学科再編を予定していますが、その狙いは。
大坊 : 1996年、文学部の社会福祉学科を独立させて社会福祉学部を設置し、社会福祉学コースと心理学コースを発展させて学科にしました。そして、社会福祉の社会的ニーズの高まりに応じて、社会福祉学科を福祉計画学科と福祉臨床学科に分けました。福祉計画学科は公務員など自治体に就職する学生が多く、福祉臨床学科は福祉の現場で働く学生が中心です。
社会福祉全体を広く学ぶことができる学部なのですが、ある時期から介護福祉に多くの関心が持たれるようになりました。いわゆる4Kに相当する厳しい仕事というイメージが世の中に広がったわけです。
しかし、本来の社会福祉学科の学びはもっと広いものです。介護の現場だけではなく、自治体や施設の管理職への就職もたくさんあります。本来の社会福祉学を学びたいという学生のために向けて、2つの学科を統合し、新たに「社会福祉学科」を設置します。この議論は10年以上も前から重ねてきました。
暗いイメージを払拭し、SDGsを前面に打ち出した明るい社会福祉学部にします。福祉という仕事に携わるやりがいや、生きがいを見出せるような学部を目指します。
――伝統的に資格取得が多い学部ですね。
大坊 : 国家資格である社会福祉士の合格者数は19年連続で道内トップ、北海道内の社会福祉士の約半数が本学出身者です。同じく国家資格である精神保健福祉士も2020年度の合格率は道内私大で1位。過去5年の平均合格率も83・9%と全国平均の62・8%を大幅に上回っています。
就職率もフルタイムのみで95%前後と高く、公務員や福祉施設の管理職として活躍する卒業生が多い。特別支援を中心に教員になっている卒業生が多いのも特長です。
――福祉心理学科は心理学科に名称を変更しますね。
大坊 : 福祉学部の中にあるので福祉心理学科という名称でしたが、以前から福祉だけではなく、幅広く心理学が学べる学科となっています。本学は今年創立60周年を迎えますが、10年前に発行した50年誌でも当時の福祉心理学科の学科長が「本科の学びは総合心理学です」と明記しています。
福祉という限られた枠ではなく、分野も科目も幅広く心理学を学べる科目が本学にはあります。心理学実験や統計学も学びます。カリキュラムは国家資格の公認心理師受験資格に対応しています。文学部の心理応用コミュニケーションの〝広い〟学びに対し、心理学科では、〝深い〟心理学を学ぶことができます。「身体的、精神的、社会的に、良好な状態になること」をウェルビーイングと言いますが、ウェルビーイングを実現するために心理学は必要です。
――社会福祉と並ぶもうひとつの伝統の学科が英文ですね。
大坊 : 英文学科ではグローバルスタディーズというコースを拡充します。国際経済や国際文化について深く学ぶことができるコースです。海外留学もコロナの影響があり、大学としてはここ2年はできていませんが、その中でも個々の学生が工夫して留学しているケースも見受けられました。感染が拡大しないことが前提にはなりますが、今期は積極的に留学を推進します。また、並行して海外留学生の受け入れも増やしていきたい。
――教職課程も強化しましたね。
大坊 : これまでの教職部門を発展させ、教職課程センターをつくりました。全学科から教職担当、科目担当の教員が参加し、全学的に教職のカリキュラムや学生の実習に対してより力を入れていきます。例えば道立高校の英語教員で一番多い出身大学は他の大学ではなく本学なのですよ。
――令和の大学教育という命題に関しては。
大坊 : 18歳人口が減り、学びはより総合化、高度化しています。大学はその責務に応えていく必要があります。単純に目先の利益ではなく、持続可能なSDGsを背景にした学びでなければ大学の価値は無くなっていくと実感しています。大学で何を学んだか、高度な知恵、総合力が求められます。
また、今後は社会人向けのリカレント教育が求められてくると考えています。本学でも公開講座、オープンユニバーシティに力を注ぎます。学生もこのオープンユニバーシティをキーステーションに、メイン専攻だけではなく、やりたいことを学んでほしい。より実践的なカリキュラムになるように見直しもしていきます。