拓殖大学北海道短期大学/篠塚 徹 学長
地方短期大学の強みを発揮。少人数・実践教育を貫く
――18歳人口の減少など大学を取り巻く環境が厳しいですね。
篠塚 : 令和に入り、日本はますます少子高齢化に直面していますが、この構造上の問題を大きな壁と捉えて歩みを緩めれば思考停止に陥ります。この厳しい環境を奇貨として、より多面的により楽しく大学教育を展開していきます。
また、所得格差が広がり、教育を受ける機会が均等ではないのも事実ですが、だからこそ地方の短期大学という本学の優位性を発揮できると考えています。
――4年間は難しくても2年間の学費ならという家庭も多い。
篠塚 : 本学では大学教育に適した教養系の基礎科目を適切に配置しています。2年間で完結する科目体系であり、卒業後に社会で十分に活躍できます。住まいを含め物価も安く、大学生活も快適です。入学後に学生の発意で4年間学びたいという場合には学科を問わず、編入の道があり、その思いをサポートする体制が整っています。
――コロナ禍で経済的に困窮する学生が増えました。
篠塚 : 深川市は生活費の補助を行い、その一方で学生は公園の整備など公益作業で汗を流しました。何もせずに補助を受けるよりも得られることは多かったと思います。
――広大なキャンパスも地方大学ならではです。
篠塚 : 肥沃でフラットな16万平方㍍のキャンパスで伸び伸びと大学生活を送ることができます。都会のマンモス大学にはないメリットです。実験・実習農場は黒土で、道内でも有数の農業適地です。校舎と農場が隣接しており、座学と実習を円滑に繋ぐことができるからこそ実践的な教育ができます。
ただし、実践教育だけではありません、基礎教育も重視していますので、幅広い人間性を身につけた実践者となります。ここが同じ2年間でも専門学校との大きな違いでしょう。
――少人数教育も強みですね。
篠塚 : IT化が進み、合理性が追求される令和の時代だからこそ、手づくりで、ぬくもりが感じられる少人数教育なのです。
学科編成も少人数の利点を生かしています。農学ビジネス学科と保育学科の2学科体制とし、農学ビジネス学科には環境農学コースと地域振興ビジネスコースを置いています。
「農業」「経済」「幼児教育」が開学以来変わらぬ本学の3本柱です。それぞれが独立するのではなく、各学科・コース間の有機的連携を図るなど、カリキュラム上の工夫を加えています。
環境農学コースも地域振興ビジネスコースも6次産業化を視野に入れた地域振興を共通の目標とし、保育学科には実習農場で実際に農産物を育て、食育の大切さを学ぶ科目があります。
2017年に完成した農産加工実習室は、食品加工施設としての営業許可を取得しています。環境農学コースの学生が収穫・加工した農産物や加工食品を、地域振興ビジネスコースの学生が流通経路に乗せて販売するケースが増えています。
――まさに実践教育ですね。
篠塚 : 実践教育により学生が本来有している潜在能力を引き出すことができます。例え入学時の偏差値が低かったとしても、卒業時にはその能力を開花させ、自信を持って新たな進路に向かって進んでいます。
――実践教育には深川市も全面的に協力していますね。
篠塚 : 市役所、商工会議所から農協や地域の一般市民に至るまで地域と濃密な関係を築いています。これも令和時代における地方の大学の在り方の一つでしょう。
農業セミナー・保育セミナーの開催、農場公開デーの開催、地域振興ビジネスにおける地域プロジェクト・地域特別演習の履修、保育学科における保育現場での子ども向けミュージカル実演など、地域と直接関わりのある行事や演習を行い、教育の場を公開するとともにキャンパスの外にも教育の場を広げています。
また、地域の多様な行事において学生たちは単に参加するのではなく、企画段階からスタッフとして参画しています。学生たちが積極的に街に出ていく一方で、地域住民もまた本学に来てくれる。学びあう相互作用があります。
――拓大ミュージカル公演は地域住民も楽しみにしていますね。
篠塚 : 本学全体の行事であり、全人教育の場です。ミュージカルを成功させるためにキャストの3倍の支援スタッフがいます。フィナーレでは全ての学生がステージに上がる。これは感動します。大事なのはプロセスです。ミュージカルでの感動体験は、その後の人生においてさまざまな場面で援用できます。
――就職も順調ですね。
篠塚 : 就職希望者の就職率は毎年、100%かそれに近い実績を残しています。本学の実践教育が企業から評価されているからでしょう。また、拓殖大学や国公立などの4年制大学へ着実に編入しているのも卒業生が評価されている証左だととらえています。