札幌学院大学/河西 邦人 学長
地域貢献活動を通じて令和に生きる課題解決力を育む
――新札幌キャンパスが2年目を迎えました。
河西 : 今年度は江別キャンパスから心理学部と大学院臨床心理学研究科、心理臨床センターが移転しました。特にセンターは、臨床心理士と公認心理師の両資格を持つ教授陣が在籍しています。その専門性を生かし、大学院生、修了生とともに医療や福祉、教育、行政機関など連携して市民の方々への多様な心理支援を行っています。地域社会の教育や文化、福祉の向上に寄与することを目指しています。
――入試状況は。
河西 : 2021年度より、7~8%入学者が増えています。最も入学が多かったのが江別キャンパスにある法学部です。コロナ禍で安定した公務員を希望する学生が増えたためと考えています。
――就職状況は。
河西 : コロナ禍の影響で若干の苦戦がありました。ステイホームで学生同士の交流が減ったことで、就職に向かうためのマインドリセットができず、キャリア支援課など職員による働きかけもしづらかった。
――貴学の令和の教育とは。
河西 : 起業家精神の育成やデータを元にした分析や判断、意思決定ができるようになる教育を推し進め、課題解決力を身につけさせていきます。
特に私が担当する「地域貢献」という科目の中では昨年度からPBL(プロブレム・ベースド・ラーニング、またはプロジェクト・ベースド・ラーニング)を新しい教育として取り入れています。プロジェクトマネジメント理論を学び、実際に地域づくりに生かすものです。
――具体的に教えてください。
河西 : 例えば、昨年は石狩振興局のホームページに本学の学生が取材した地域紹介のコンテンツ記事が掲載されました。これは東京五輪のマラソンが札幌で開催されたことをきっかけに、地域情報を発信して活性化につなげるという内容です。
また、今年7月22日に開かれる
「カルチャーナイト2022」に向けて学生たちが動画製作を行います。再開発で注目を集めている新札幌を紹介する内容で、文化的、社会的な視点を盛り込んでいるのが特徴です。
さらに6月4日には、学生たちが国会議員と意見交換を行いました。学生たちが感じている政治や日本の社会に対する不安を解決できないか、地域貢献の観点から話し合いました。
このほか、今年度は再び石狩振興局と協力し、管内のサイクリングマップを作ります。事前にニューヨークで行われている自転車による街づくりやポロクルによる自転車シェアリング、自転車を使ったマイクロツーリズム、さらには市町村が行っている自転車振興策を学んだうえで7月に学生が地域に行って情報を集め取材をする計画です。
――今後の展開は。
河西 : IOTやデータサイエンスなど技術革新が生まれデジタルトランスフォーメーションが進んでいます。その社会の中で生きていくためのさまざまな知識とそれを実際に使いこなし、社会に出た時にビジネスにも活用できる。そういった能力を修得できる教育を増やしています。
入学したみなさんが、自らの進路について考えて選び、そして自分が望んでいるような仕事につける。そうした能力を持てる学びを提供することが本学の使命です。
特にこれからの日本の将来を担っていく人に向けてEBPM(エビデンス・ベースド・ポリシーメイキング)教育を提供していきます。エビデンスをベースに意思決定を行う考え方でデータサイエンスの初歩的な部分を教えるなどカリキュラムの調整を行なっています。
もちろん従来型の座学や資格を取るような学修も重視します。公務員試験も含めた受験勉強にも力を入れて支援していきます。従来からやっていることを強化しつつ、新しい教育を取り入れていくということです。
――地域連携も進めています。
河西 : 昨年から高校生向けのビジネスプランコンテストを開催しています。もともと大学生向けの起業教育だったものを高校生向けにした内容で、農産物を使った地域おこしや特産品開発のプランを企業経営者、金融機関社員、経営コンサルタントが審査します。
また、高校に出向いて本学と連携している日本政策金融公庫の社員らと出張講義もおこないます。
このほか、高齢化が進む札幌市厚別区の「もみじ台団地」を学生住居として活用するほか、経営学科のゼミでは、新さっぽろ副都心商店会と連携して夏の販促キャンペーンに「キャンパス一日体験」を景品として提供します。学生が当選者をキャンパス内で案内するといった企画も進んでいます。
新札幌キャンパス/札幌市厚別区厚別中央1条5丁目1‐1